その6.カデンツ:コード進行の続きを作ろう。

chord-a-melody

前の記事では、代理コードを学びました。
代理コードは、機能が同じコード同士を入れ替えられるんでしたね!

本記事では、もう一歩踏み込み、コード進行の流れの力学であるカデンツを学びます。

カデンツを知れば、

  • 0からコード進行を作れる。
  • 次に続くコード進行を考えやすくなる。
  • コード進行の分析の手段が増える。

などのメリットがありますよ!

作曲家<br>わたなべ
作曲家
わたなべ

この記事を最後まで読めば、なぜ今までカデンツを知らなかったんだっ!?と驚愕すること間違いなしです!

カデンツとは?

コード機能の基本的な流れの型カデンツと言い、3種類あります。

作曲家<br>わたなべ
作曲家
わたなべ

「これが分かったから何なんだ???」

……という疑問も湧きそうですね! 実は、私もそう思っていた一人です。

実際に、カデンツをコード進行の分析に使ってみて、効用を肌で感じてみましょう!

コード進行をカデンツで分析してみよう。

次のコード進行は、8小節のコード進行です。

Q
打ち込み内容はこちら。

それでは、カデンツで分析してみます。

下記の画像に従って、先程の進行を分析してみます。

すると、このように分析できました。

この8小節の中に、3つのカデンツと、4つ目のカデンツが途中まで進行していることが分かります。

続く進行を作るとすれば、カデンツ1の流れ(TDTを汲み取り、T(トニック)のコードから始めれば自然になります。

カデンツのルール

同じコード機能を続けてよい。

ところで、先程の進行において、1・2小節目T(トニック)は連続しています。

このように、同じ機能のコードが連続してもOKです。

もっと言い換えると、メロディーに合う限りは、同じ機能のコードを差し込んでも良いということにもなります。(本ページではメロディーなしで解説しているので、今はそこは考慮しなくてOK。)

それでは、同じ機能のコードを差し込んでみます。

Q
打ち込み内容はこちら

このように、同じ機能のコードを追加しても、違和感はほとんど感じません。

コードを分割するほどに、忙しい印象となりますし、細かくコード変化すれば良い曲になるというわけではありませんので、あくまで例としてご覧ください。

参考

唯一、カデンツ3(TSDTについては、補足しておきます。

カデンツ3(T→SD→T)の後ろの「SDTは、Ⅳ:F→Ⅰ:Cという流れが推奨されており、他の流れは推奨されていません。つまり、

  • Dm → C
  • F → Am

のような流れは、昔ながらの音楽理論(和声学など)においては推奨されていないということです。

クラシカルな曲を意図して作ろうというのではない限り、ポップスにおいては問題なく使える場合が多いので、よっぽど変に感じない限りは使ってOKです。

コード進行の始めのコード

コード進行が始めやすい5つのコード

よくよく見ると、カデンツは、どれもT(トニック)から始めるものばかりです。

だから、コード進行は、T(トニック)からしか始められないのか?と、疑問が湧きそうな所です。

作曲家<br>わたなべ
作曲家
わたなべ

答えからいうと、ポップスにおいては、T(トニック)のほか、SD(サブドミナント)から始まるコード進行も非常に多く使われています。

もっと言うと、

ポップスのメジャーキーの楽曲において、
Aメロやサビのコード進行は、
以下の5つのコードから始めるのが普通です。

もっと言うと、ポップスのメジャーキーの楽曲において、Aメロやサビのコード進行は、以下の5つのコードから始めるのが普通です。

Q
【どうして?】Ⅲm・Ⅴ・Ⅶm(♭5)から進行を始めにくい理由
作曲家<br>わたなべ
作曲家
わたなべ

ここでは2つの理由をご紹介します。

①隣のキーであると誤認しやくすなるため

Key=CにおけるⅤ・Ⅲmは、G・Emですね。

しかし、GやEmからコードが始まると、Key=G&Emと感じやすくなります。

②いきなりクライマックス感があるため

ドミナントのGやBm(♭5)からコード進行が始まると、ドミナントトニックに向かいたくなるという特性から、2小節目はトニックに向かうのが自然です。すると、2小節目ですぐにコード進行が解決し、出落ち感が生まれてしまいます。

まとめ

変化をつけるために、Bメロでは、わざとⅢm・Ⅴ・Ⅶm(♭5)からコード進行を始める時もありますので、傾向としてⅢm・Ⅴ・Ⅶm(♭5)からはコード進行を始めにくいと覚えておきましょう。

SD(サブドミナント)から始まる進行

SD(サブドミナント)から始まる進行は、サブドミナントが使われているカデンツ2or3の、最初のT(トニック)を省略していると考えればOKです。

D(ドミナント)から始まる進行

一方、Bメロでは、D(ドミナント)から始まる進行を見かけることがあります。

これもカデンツがあれば、わりと簡単に理解できます。

Bメロ始めのドミナント:コードGは、Aメロ最後から続くカデンツ1の流れの中で始まっているのです。

こう考えれば、Bメロがドミナントから始まる意味も分かりますね。

カデンツ以外の進行はどう解釈する? 例)T→D→SD→T

3つのカデンツにない進行はどう考えましょうか。

例えば、カデンツにはないD(ドミナント)SD(サブドミナント)の流れを含む進行はどうでしょうか?(昔は禁則とされていました。)

これをカデンツで考える場合は、次のように考えましょう。

カデンツ4と見なす理論もあるようですが、本サイトにおいては、このように解析することにします。

Q
【コラム】G→Fは、なぜ禁則とされていた?

なぜ、そもそもG→Fの流れが、和声学などで禁則とされてきたかというと、固い響きになる連続五度が含まれやすいからです。

下記は、パターン1が連続五度あり。パターン2は避けたパターンです。

これを聞くと、パターン1より、パターン2の方が開放的で自然な響きに聞こえるはずです。

しかし、パターン1を不自然と感じない人も多いでしょうし、ポップスの範囲では十分使えると思います。

それでも、もしも不自然に感じる場合は、

  • 素直にD→SDの流れをやめて、カデンツ1~3を使う。
  • ボイシングを変えて、連続五度を回避する。

などの、対策が必要になる場合があります。

カデンツで、コード進行の続きを考えよう。

カデンツを使うと、コード進行の続きを考えるのが、とっても簡単になります。

実際にやってみましょう!

コード進行の続きを4小節作る。

次の進行の続きを作ってみます。

4小節目は、T(トニック)で終わっていますね。
どのカデンツも、T(トニック)から始まりますから、続く進行はどのカデンツでも構いません。

4小節目は、T(トニック)で終わっていますね。どのカデンツも、T(トニック)から始まりますから、続く進行はどのカデンツでも構いません。

言ってしまえば、このままカデンツ3に繋げるようにして、1~4小節目と同じ進行を繰り返しても良いのです。

このように、リピートできるコード進行を、循環コード(循環コード進行)と言います。

ポップスにおいては、シンプルな循環コードで作られている曲はとても多いです。

ですが、ここは例として、5小節目以降は違うカデンツを使ってみます。

同じコード機能は続けても大丈夫でしたね。
なので、5小節目にもT(トニック)を入れて、カデンツ2を続けてみます。

同じコード機能は続けても大丈夫でしたね。なので、5小節目にもT(トニック)を入れて、カデンツ2を続けてみます。

コード機能も入れ込むと、次のようになりました。

そして、Key=Cのダイアトニックコードを入れ込んでいきます。

例としてご覧ください。

このように、カデンツを考慮すると、コード進行の続きを簡単に作ることができるのです!

さぁ、次は練習問題です。

作曲家<br>わたなべ
作曲家
わたなべ

問題に向かう前に、MIDIファイルをダウンロードして、DAWに貼り付けてみましょう!

Q
▶DAWにデータを貼り付ける方法
  1. ダウンロードする。
  2. zipファイルを展開する。
  3. DAWに読み込む。

①ダウンロードする。

デスクトップにダウンロードするのが、一番分かりやすいと思います。

②zipファイルを展開する。

ファイルを右クリックして、「すべて展開……」を選択します。

展開され、中のファイルを操作できるようになります。

③DAWに読み込む。

Studio Oneの場合

DAWのピアノトラックに、ドラッグ&ドロップすればOKです!

ファイル名に記載しているテンポに変更しましょう!

Dominoの場合

まず、ファイルを開きます。

その後、テンポを変更します。

この後、元のトラックに戻って、練習問題を進めていきましょう!

【練習問題1】Key=Cのコード進行の続きを作りましょう。

切ないコード進行になっていますね。

あなたならどんな続きを作りますか?

Q
解答例

1~4小節のコード進行の流れを、5~8小節にも組み込みたいと思い、1~4小節と同じカデンツ2→カデンツ1の流れを使ってみました。

最後は、ドミナントを続けることで、次のセクションへの期待をもたせる演出となっています。

当然ですが、続くセクションのコード進行は、T(トニック)から始めると自然で、SD(サブドミナント)から始めると淡々とした印象の流れになるでしょう。

ボイシングの工夫も見てみましょう。

最低音の動きは、上行してから下行する流れを使ってみました。
最低音がバタバタと動かず、安定感のある流れで聞かせることができました。

【練習問題2】Key=Fのコード進行の続きを作る。

次の進行の続きを作りましょう。

Q
解答例

次のようにしてみました。

5小節目Ⅲm:Am7は、トニック・ドミナント、どちらの特徴も持ってるので、4・5小節全体をD(ドミナント)と見立てて、6小節目のT(トニック):Dm7に向かっていると捉えることもできます。

この独特なⅢmを5小節目に持ってくることで、少し変わった雰囲気が得られているのです。

ボイシングも見てみましょう!

打ち込み上の工夫は、前半のトップノートの動きでしょうか。印象的な上行が格好良いですよね。

答えは一つではありません。
カデンツ上で破綻なく、かつ格好良くなればそれが正解です。

カデンツで、0から進行を作ろう。

それでは最後に、カデンツを使って、0からコード進行を組み立ててみましょう。

例:カデンツを3つ組み合わせた、8小節の進行。

まず、カデンツを適当に並べます。

例として、カデンツ2→カデンツ3→カデンツ1としてみましょうか。

8小節の枠の中に、適当にカデンツを並べてみます。

これができれば、自動的にコード機能を割り当てられます。

カデンツ一覧を見ながら、割り当てていくと……

今度は、五度圏表を見ながら、コードを割り当てます。

例えば、次のような感じ。

このようにすれば、確実に破綻のない進行を作れるわけですね。

練習問題:カデンツを3つ組み合わせて、Key=Cの進行を作る。

例と同じ問題ですが、ぜひチャレンジしてみてください。

当然ですが、答えは無限にあります!

慣れたらキーも変えて、試してみてください。

まとめ

以上が、カデンツの解説です。

カデンツを使うと、コード進行の続きを作ったり、0からコード進行を作るのがとても楽になります。しかも、破綻のない、とても自然な流れの進行に勝手になってしまうのです。

その反面、D(ドミナント)SD(サブドミナント)などの以前までは禁則とされていたような流れは、意識的に組み込まない限り、作ることができません。

作曲家<br>わたなべ
作曲家
わたなべ

そこで次の記事では、コード進行を作るまた違った発想を学びます!

次の記事はこちら
その7.最低音の動きからコード進行を作ろう。
その7.最低音の動きからコード進行を作ろう。
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プロフィール
渡部絢也
渡部絢也
作編曲家・シンガーソングライター
「地方にいながら、音楽でご飯を食べる」で早15年。東北秋田で田舎生活しながら、音楽にいそしむ。ミュージカル等の舞台音楽、CM音楽・ファミリー向け楽曲を手掛ける。

歌詞が伝わる歌を作るのが得意。

・音楽制作依頼(舞台音楽・CM楽曲等)
・ブログ運営(音楽理論&プラグイン解説)
・教材販売
・ファミリー向けの作品づくり
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