その4.コード機能

前回の記事で、キー・スケール・ダイアトニックコードを学びました。
「Key=Cの時のダイアトニックコードは?」という問いがあっても、五度圏表を使って、すぐに7つのダイアトニックコードを導き出せるようになったはずです。


この記事では、ダイアトニックコードが持つ役割を学びます。
音楽用語で言う所のコード機能です!
本記事の目標は、既存のコード進行のコード機能を読み解けるようになることです!
コードの役割(コード機能)を知ろう。
コード機能とは?
ダイアトニックコードたちはそれぞれ、3つの役割があります。
- トニック(T):主役
- ドミナント(D):主役のことが好き
- サブドミナント(SD):脇役

物語に例えると、主役「トニック」がいて、主役のことが好きな「ドミナント」、そして脇役「サブドミナント」の3つの役割があります。
これらの役割のことを、音楽用語でコード機能といいます。
コード機能は、五度圏表の場所で覚えよう。
コード機能は、五度圏表をその都度見て、確認すればOKです。

キーが変わっても、この配置は変わりません。
ですが、実は、マイナーキーの場合は配置が変わります。
そのため、今後はしばらくメジャーキーに絞って解説します。
ですが、実は、マイナーキーの場合は配置が変わります。そのため、今後はしばらくメジャーキーに絞って解説します。
ディグリーネーム(度数表記)だと、次のようになります。

- ディグリーネームとは?
-
ディグリーネームは、度数表記と呼ばれるものです。ローマ数字の「I~Ⅶ」でコードを表します。例えばKey=Cなら、コードCをⅠとして考えます。
- Ⅰ :コードC
- Ⅱm:コードDm
- Ⅲm:コードEm
- Ⅳ :コードF
- Ⅴ :コードG
- Ⅵm:コードAm
- Ⅶm(♭5):コードBm(♭5)
コード機能で一番大事、ドミナント。
色々と情報が出てきて困惑している頃かもしれません。
ここで、この記事で、一番大事なポイントをお知らせします。
それは、
ドミナントVは、
トニックⅠのことが大好き
だと言うことです。
つまり、こういうこと。

Key=Cで言い換えると、ドミナントGは、トニックCが大好き。
つまり、コードGの後には、特にコードCに向かいたくなります。
Key=Cで言い換えると、ドミナントGは、トニックCが大好き。
つまり、コードGの後には、特にコードCに向かいたくなります。

そして、コードGをコードG7にすると、コードCへの大好き度がますます増すのです!
こうした、五度圏表で見た時に、左向きに進みたくなる動きをドミナントモーションや強進行と呼びます。
既存の進行のコード機能を読み解こう。
さっそく実践です!
次のコード進行の、ダイアトニックコードそれぞれのコード機能を考えてみましょう。

ダイアトニックコードの役割の画像を見ながら、コード機能を探してみます。

すると、次のようになります。

コードGからコードCに進むと、終わった感じや安心感を感じませんか?
他のコードも見てみましょう。
前半Am→Emは、主役のトニック(T)が続き、安定感がありますね。
飽きそうなタイミングで、脇役であるサブドミナントのコードFが来て、ドミナントのコードGにバトンタッチします。
そして、最後は、ドミナントからトニックであるコードCに進んでいる……という流れです。
こうしてコード機能で捉えると、コード進行をストーリーのように見立てて捉えられます。
【練習問題】コード機能を読み解こう。
ここではキーを変えて、コード機能を読み解いてみます。
問題1:Key=D
Key=Dのコード進行です。

下記の図を見ながら、各コードの機能を読み解きましょう。

実際にDAWに打ち込んでみることもおすすめします。
それでは答えです。

この進行は、サブドミナントⅡmのコードEmからスタートし、ドミナントⅤのコードAに繋がります。
上の画像を見ると、カギカッコでつながっていますね。実は、Ⅱm→Ⅴ(→Ⅰ)という流れは、とても相性が良くトゥーファイブ(トゥーファイブワン)と呼ばれ、かなり頻繁に使われます。
トゥーファイブワンを五度圏表で見ると、次のようになります。

しかし、今回の進行の場合は、ⅠのコードDではなく、コードBm(Ⅵm)に進んでいます。

ディグリーネームで考えると、Ⅱm→Ⅴ→Ⅵmという流れですね。
ⅤからⅠに向かうと期待した所を外すⅤ→Ⅵmの流れは、偽終止(ぎしゅうし)と呼ばれます。
今回の進行の場合は、Bmの部分でとても切なく感じますよね。
この切なさが、偽終止の効果です。
そしてその後、コードBmから、Ⅰ:コードDへ行き心が落ち着き、次に繋がるコードへの一呼吸を感じる展開となっています。
さぁ、今までの解説を心に入れた上で、もう一度コード進行を聞いてみましょう。

コード機能を知らないで聞いていた時と、受け取り方が変わったのではないでしょうか?
問題2:Key=B♭
次は、ダイアトニックセブンスコードを含む進行を解析してみます。
ダイアトニックセブンスコードになっても、コードの機能は変わりません。

さぁ。
次の進行のコード機能を導き出してみましょう。

それでは答えです。
- 問題2の答え:Key=B♭
-
この進行も、トゥーファイブがありましたね。
コード機能の補足
今後コード進行を作ったり、メロディーにコードを付ける上で、前もって知っておくべき点を補足します。
トニックⅢmは、特殊なコード
トニックのⅢm(Key=CにおけるEm)は、特殊なコードで、ドミナント的な特徴も持ち合わせています。

構成音を見ると、ドミナントⅤと構成音が似ているからです。
そして、トニックⅠM7の構成音の中には、Emがそのまま含まれてもいます。

Ⅲmは、トニックの主役感はそこまでないものの、ドミナントのようにⅠに向かいたい!という感じも希薄なのです。また、曲の最後に置いても、終わった感じを演出できません。
本サイトにおいては、Ⅲmをトニックと位置づけて解説していきます。
ⅢmよりⅠ/Ⅲの方がよく使われる。
そして、ここからが重要なのですが、
Ⅲmよりも
Ⅰ/Ⅲの方が使われる頻度が高い
です。
/(スラッシュ記号)は、最低音を指定するオンコード(分数コード)というコードでしたね。
Ⅰ/Ⅲというのは、Key=Cで考えるとC/E(シーオンイー)。
E(ミ)を最低音においたコードCです。
元々コードCの構成音は、C・E・G(ド・ミ・ソ)なので、C/Eは構成音の順番を入れ替えた転回形コードとも言われます。
コード機能もⅢmと同じくトニックです。
五度圏表で考えると、こんなイメージ。

次のコード進行を聴き比べてみましょう。


聴き比べてみると、コードEmは固く悲しい響きで、コードC/Eは柔らかく明るい響きに聞こえたと思います。
最低音はE(ミ)にしたいけど、響きは悲しくしたくないという場合には、C/Eを選択するとよいでしょう。
C/Eのピアノロール上での打ち込みも見てみます。
最低音を見ると、C→E→F→Gと、C(ド)から上行(音が高い方向に移動)しているのが分かると思います。定番のコード進行です。
Ⅶm(♭5)も特殊なコード
Ⅶm(♭5)は、他のダイアトニックコードに比べて、使われることが圧倒的に少ないです。
Key=Cで言えば、Bm(♭5):ビーマイナーフラットファイブ です。

機能としてはドミナントなのですが、Ⅴに比べるとⅠに向かう力がちょっと弱いです。それでも、ⅠやⅥmに向かうのは自然です。

Bm(♭5)→Cで、解決した感じ(終わった感じ)がしますよね。
Ⅵmに解決させた場合も見てみましょう。

トニックⅥmであるAmにも、解決した感じを出せますね。
Bm(♭5)は、ドミナントⅤ7:コードG7の、ルートを抜いた形とも言えます。その場合は、G7(omit1)とも考えられますね。(omitは、省略という意味。)

そう考えると、ドミナントGのように、トニック(特にⅠに向かいたい)という役割は、自然な流れと言えるでしょう。
Ⅶm(♭5)より使われるⅤ/Ⅶ
またポップスにおいては、最低音がⅦの時は、Ⅶm(♭5)よりもよく使われるコードがあります。
それは、ドミナントⅤの転回形であるV/Ⅶです。
Key=Cで言えば、G/B(ジーオンビー)。
それは、ドミナントⅤの転回形であるV/Ⅶです。Key=Cで言えば、G/B(ジーオンビー)。
五度圏表で見ると、↓こんな感じのイメージです。

G/Bを使った進行も見てみましょう。

このように、CとAmを繋いで、最低音がⅠ→Ⅶ→Ⅵの動きの時にG/Bを使うことが非常に多いです。
なぜ、Ⅶm(♭5)ではなく、Ⅴ/Ⅶを使うのかと言うと、Ⅶm(♭5)だと不穏な響きが出過ぎるからです。

Bm(♭5)の方が、ドラマチックな流れに感じると思いますが、ポップスの場合には鼻につく場合も多いのです。

Bm(♭5)は、トライトーン(全音3つ分離れた音程:減五度音程)という緊張感を感じる響きが含まれています。
具体的には、B(シ)・F(ファ)の和音です。
G7の中にも含まれており、安定を求めて、コードCに進む力がより強くなるのです。Bm(♭5)の場合は、緊張感が強く出すぎて、ポップスに馴染まない場合が多くあります。
【練習問題】転回形を含んだ進行のコード機能
それでは、転回形オンコード(Ⅰ/Ⅲ・Ⅴ/Ⅵ)を含む進行のコード機能を導き出してみましょう。
ダイアトニックコードと転回形オンコードのまとめ
練習問題に行く前に、本ページで出てきたダイアトニックコードと、よく出てくる転回形をまとめます。

機能 | 役割 | ディグリー | Key=Cなら |
---|---|---|---|
トニック | 主役。 安定感の演出。 | ・Ⅰ ・Ⅵm ・Ⅲm ・Ⅰ/Ⅲ | ・C ・Am ・Em ・C/E |
ドミナント | 主役(特にⅠ)に、 進みたくなる。 | ・Ⅴ ・Ⅶm(♭5) ・Ⅴ/Ⅶ | ・G ・Bm(♭5) ・G/B |
サブドミナント | 脇役。 トニック・ドミナント、 共に相性が良い。 | ・Ⅳ ・Ⅱm | ・F ・Dm |
それでは、これらのまとめを元に、コード機能を導き出してみましょう。
実際に、打ち込んでみることもおすすめします。
【練習問題1】Key=Aの進行
次の進行のコード機能を導き出して、分析してみましょう。


実際に打ち込んでみたデータや留意点は、下記の答えからご覧頂けます。
【練習問題2】Key=F ダイアトニックセブンスコードを含む進行


【練習問題3】Key=C 細かくコードが変わる進行


まとめ
以上が、コード機能についての解説です。

これで、ダイアトニックコードのみの進行であれば、コード機能を導けるようになったはずです。
しかし、コード付けをするためには、様々なバリエーションのコード進行を作れるようになる必要があります。
そのためにも、次の記事では、代理コードについて学びましょう!





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