その8.キーの探し方

前の記事までで、ダイアトニックコードを使った進行のほとんどを説明してきました。
今までの内容を元に、いよいよメロディーにコードを付けたい所ですが、実はコード付けにはキーの把握が必要です。

メロディーのキーを探すのは、最初はかなり難しいと感じるかもしれません。
でも大丈夫。
このページでは、
とっておきに簡単な
キーの探し方を
お伝えいたします。
とっておきに簡単な
キーの探し方を
お伝えいたします。
前置き
キーは全部で何個ある?
キー・ダイアトニックコードの記事で説明したように、キーには、メジャーキー・マイナーキーがあり、それぞれ12個、計24種類のキーがあります。

メロディーのキーを、全部で24種類ある内から一つ選ぶのが、本記事の目的となります。
24種類もあるというと、途方もないように思えますが、ここでも活躍するのが五度圏表です。
ぜひ印刷の上、手元において読み進めて下さい。
キーを選ぶ際、五度圏表を使えば、そのキーのダイアトニックコードを7つすぐ把握できると前回までの記事でお伝えしてきました。

このように、扇形の真ん中がキーの要であるという前提は、本ページを理解する上でとても大事です。
また、平行調という言葉を覚えていますか?
スケールで使われている音が同じキー同士の関係のことです。
また、平行調という言葉を覚えていますか?
スケールで使われている音が同じキー同士の関係のことです。
- Key=Cの平行調は、その下にあるKey=Am
- Key=C#mの平行調は、その上にあるKey=E
ということが、五度圏表を見ることでひと目で分かります。
調号を見れば、キーは2つまで絞られる。
ところで。
五度圏表の周りに、調号が配置されているのが分かりますか?

調号というのは、楽譜の左端に付ける#・♭の記号です。
例えば、下の楽譜上では、2つ付いている#が調号です。
五度圏表と照らし合わせてみましょう。

楽譜であれば、調号を見れば、平行調の2つまではキーを絞ることができますね。
実際の所、現代ポップスにおいては、平行調をKey=C ↔ Amと行き交うようにしてコードを付ける場合も多いです。平行調同士は、同じダイアトニックコードを使えるので、平行調のどちらかであるかを確定するだけでも十分とも言えますね。
キーを探す2つの方法
さぁ、前置きはここまで。
ここから、キーの探し方を2つお伝えします。
- 終わった感じのする音(主音)から判断する方法
- 半音階から割り出す方法
音楽に慣れている方が、感覚的に行っているのは①の方法です。
感覚が養われていなければ、迷いが出る方もいるかもしれません。
音楽に慣れている方が、感覚的に行っているのは①の方法です。
感覚が養われていなければ、迷いが出る方もいるかもしれません。
②の方法は、誰でも行うことが可能です。
①終わった感じのする音(主音)から判断する方法
主音を見つける。
主音とは、スケールのはじめの音です。
Key=Cで、Cメジャースケール(CDEFGAB)であれば、C(ド)が主音です。
主音は、メロディーの最後に使うと、終わった感じが出るのが特徴です。
次のメロディーの場合は、どうでしょうか?
このメロディーを聞いた後に、もう一音追加して終わった感じを強めるなら、何の音を足しますか?
私なら次のように追加します。
つまり、このメロディーの主音は、A(ラ)ですね。
主音を導く方法としては、
- 声に出して歌って導き出す。
- MIDIキーボードで弾いて導き出す。
といった、感覚的な方法で導き出すことになります。
(ちなみに、私自身も歌って導き出します。)
といった、感覚的な方法で導き出すことになります。(ちなみに、私自身も歌って導き出します。)
主音を導き出すのが難しい方・自信がない方は、②半音階から導き出す方法を使った方が確実です。
キーを判別する。
主音が分かれば、キーは2つまで確定できます。
主音が頭についたメジャーキー・マイナーキーのどちらかです。
つまり、主音がA(ラ)の場合なら、Key=A・同主調のKey=Amのどちらか。

単純に、メロディーの感じが明るければKey=A、悲しく暗い感じならKey=Amとして判断して良いです。
視覚的に判断するなら、同主調同士のスケールの中で、違う音を抜き出し、ピアノロール上で確認します。
下記、紫色の音名をチェックします。

この場合は、F・C・Gに#が付いているかどうかをチェックします。
今回は、Key=Amと確定できました。
②半音階から割り出す方法
こちらは目で見ることで、誰でも行うことができる方法です。
この方法の仕組み
スケールを思い出してみましょう。
Key=CのCメジャースケールは次のとおりです。

全全半全全全半の順番で並んでいます。
つまり、Key=Cにおいては、「E・F」と「B・C」と、2つの半音階があるということですね。
この仕組みを利用して、キーを確定するのです。
実際にどのように探すか、見てみましょう。
「E・F」と「B・C」、半音続く音の内、高い方の音をそれぞれ抜き出すと「F・C」です。
「F・C」が隣り合っている場所を、五度圏表から探します。
見つけたら、中央から見て右側にあるのが、そのキーということになります。

この場合は、右側にCがあるので、Key=Cか、その平行調であるKey=Amが答えです。
この記事でご紹介する方法は、以上の考えが元になっています。
半音階の数え方
コードを付けたいメロディーをピアノロール上で見て、半音階があるかどうかを確認します。
下の画像で言えば、2組あります。
「G#・G」と「D#・D」の2組ですね。
こうして、半音階を数えた後は、半音階の組み合わせの個数で場合分けをして、キーを割り出します。
半音階が2組の場合
半音階が2組の場合です。
半音階の内、上に重なった音をそれぞれ抜き出します。
この時、黒鍵は、♭目線で考えます。
つまり、D#ならE♭(ミ♭)と、G#ならA♭(ラ♭)と考えます。
そして、五度圏表の青い線の外側にある円から、隣り合ったE♭・A♭を探します。

見つけたら、その2つのコードの内、五度圏表の円の中心から見て右隣にある音 or その平行調がキーです。

つまりこの場合は、Key=E♭か、平行調のKey=Cmが答えということですね。
どちらなのかを確かめるなら、メロディーが終わった後に、コードE♭・コードCmをそれぞれ打ち込んで聴き比べます。よりしっくりくるのが、その曲のキーです。
コードE♭の方が、より終わった感じがしませんか?
よって、このメロディーはKey=E♭とみなしてよいです。
半音階が1組の場合
半音階が1組の場合、上に重なった音を抜き出します。
この場合、半音階の組み合わせは「D・C#」なので、着目するのはD(レ)です。
この段階で、キーは4つに絞られました。
この場合は、Key=D・Bm・A・F#m の内のどれかですね。
メロディーの終わりにコードを入力して聴き比べ、より終わった感じのするコードを選びます。
ここでは、まず除外できるのが、コードAだと思います。
そして、コードDも、メロディーに比べて明るい感じがして、チグハグに思えるのではないでしょうか。
迷うのは、多分、F#m・Bmです。どちらも違和感はないとは思いますが、そういった時は終わった感じがより強い方を選びます。
私なら、Key=Bmと判断します。
コードF#mは、メロディーの伴奏として、そのまま続きそうな印象があるからです。
半音階が0組の場合
半音階がない場合、2つ連続で空いている音の内、下の音をそれぞれ抜き出します。
この場合は、B♭(シ♭)・E♭(ミ♭)ですね。
ここでも、五度圏表の外側から、隣り合ったB♭・E♭を探します。
見つけたら、その2つの音の右隣のキー、あるいはその平行調がキーと判別できます。

今回の場合は、Key=F、あるいは平行調のKey=Dmが答えです。
より自然なKey=Dmとみなしてよいでしょう。
半音階から割り出すキーフローチャート
今までの説明をフローチャートにしました。
半音階が3個以上ある場合は、例外となります。

続く項目で、改めて解説しますね。
何事も例外がある。
半音階がない!使ってない音も多い!スッカスカな場合
次のようなメロディーの場合は、どうでしょうか?
使っている音が4音しかなく、半音階もありません。
中々に判断が困りますね。
こういった場合は、次のような手段があります。
- メロディーの続きを作って、キーの判断材料を増やす。
- 半音階からではなく、①主音からキーを導く方法を使う。
今回は、メロディーの続きを作った上で、判断してみましょう。
この場合は、Key=G・Em・D・Bmまで絞ることが出来ました。
メロディーの最後にコードを当てて確かめると、Key=Dであることが分かります。
適当に作ったメロディーは、キーの判別のために作ったメロディーなので、判断後に削除して構いません。
一時的にスケール外の音が入っている場合
一時的にスケール外の音が入っているメロディーや、クロマチックスケールという半音階のメロディーが使われている場合もあります。
こういった場合は、そういった部分を一旦考慮に入れずに、それ以外の場所を利用して、半音階の数を判断します。
下の画像のように、半音が3音以上並んでいる場合は怪しいと思っていいでしょう。
一時的なスケール外・クロマチックな音階を省くと、「E・F」「B・C」と、半音階は2組ありました。
2組ある時は、半音階の内、上に重なった音をそれぞれ抜き出すんでしたね。今回は「F・C」ですね。五度圏表で探すと、円中央から見てCが右隣にあるので、Key=C(あるいは、平行調のAm)が答えです。
最後のメロディーに合わせてコードCを置くと終わった感じがしますので、このメロディーはKey=Cと断定してOKです。
マイナーキーの場合
マイナーキーは、半音階から判断するのが難しい場合があります。
なぜなら、3つのスケールがあり、その3つスケールやダイアトニックコードを切り替えながら、楽曲が作られているからです。

- Aナチュラルマイナー:A B C D E F G
- Aハーモニックマイナー:A B C D E F G#
- Aメロディックマイナー:A B C D E F# G#
ナチュラルマイナースケールだけのメロディーなら、今までの方法が使えます。
しかし、そうでない場合は、次の画像のように半音階がたくさん現れることになります。
結論から言うと、このメロディーは、Key=Amです。
これを現段階で判断するのは、かなり難しいでしょう。(下巻で、マイナーキーのメロディーにコードを付ける方法もお届けしますので、話はそれからです。)
結局のところ、①主音からキーを判断する方法を使って、Key=Amを導き出すのが、この場合は一番早いということになります。
そもそもキーがない音楽体系の場合
特殊なスケールを使った音楽や、モードという音楽体系で作られたメロディーもあります。
次のメロディーを見てみましょう。半音階を2つ見つけ出せます。
Dドリアンモードは、主音がD(レ)かつ、Key=C・Amのダイアトニックコードでコード付けしやすい状態で、モード音楽として体系化されています。
モード音楽では、キーという概念がありませんので、キーを見つけるという設問自体がおかしいことになります。
それでも、Key=C・Amのダイアトニックコードが使いやすいことは事実です。
ここでは、使う音の種類はメジャースケール・マイナースケールと同じなのに、主音が違う場合があるということを覚えておきましょう。

このサイトでは、モード音楽についてのコード付けは解説しません。気になる方は、モードの解説書を活用しましょう。
このサイトでは、調性音楽(主音を中心として、Ⅴ→Ⅰといった和声的解決を重視する音楽)を学びます!
【問題集】キーを特定しよう!
それでは、本記事の総括として、キーを見つける問題にチャレンジしましょう。
問題1
次のメロディーのキーは何でしょう?
問題2
次のメロディーのキーは何でしょう?
問題3
次のメロディーのキーは何でしょう?
問題4:転調を含む問題
最後の問題です。
転調を含むメロディーのキーを確定してみましょう。
転調とは、曲の途中でキーが変わることを言います。
- どこで転調したか?
- 前半・後半でキーはそれぞれ何か?
を考えてみましょう!

半音階の音に変化があれば、転調したということですね!
DAW上での工夫
キーを探すソフトウェアがある。
既存のソフトウェアに頼って、キーを探す方法もあります。
例えば、
- PluginBoutique:Scaler3(MIDIからキーを判断)
- Waves:Key Detector(オーディオファイルからキーを判断)
などの外部プラグインを購入してキーを探す方法です。
しかし、本ページで紹介した方法を使えば無料ですし、キー探しは曲作りをするたびに行いますから、慣れたほうが早いと私は思います。
トランスポーズ機能を使って、分かりやすいキーにする。
慣れないキーで作業すると、最初の内は非常に時間がかかります。
そんな時に便利なのが、DAW上で、各トラックに使えるトランスポーズ機能です。
上の画像では、トランスポーズを+3に設定しています。
そのため、実際に打ち込んだ音より、半音3つ分高い音が出るので、Key=C(白鍵のみ)として打ち込むと、実際にはKey=E♭になります。
- 分かりやすいキーで打ち込める。
- 後からの移調(曲全体のキーを変えるの)が簡単。
デメリットがないわけではありません。
- 打ち込んだ音と実際に鳴る音が変わり、各楽器の音域を考慮するのが難しくなる。
- いつまでも得意なキー以外のキーに慣れない。
トランスポーズ機能を使うことで、「ベースの打ち込みがとても高い音域になってしまった……。」などのアレンジ上の問題が出ることがあります。
私もトランスポーズ機能を使う場合、±半音3つ分くらいまでに留めることが多いです。
まとめ
以上が、メロディーのキーの探し方でした。
ピアノロール上で、半音階の数を探せば、キーはかなり絞られます。

本ページをブックマークに入れて、キー探しの際には、ぜひまたご利用下さい。
次の記事からは、いよいよメロディーにコードを付けていきます!
と、その前に、上巻で学べることを確認してみましょう!





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