その3.キー・ダイアトニックコード

chord-a-melody

前までの記事で、コードを見て、既存のコード進行のほとんどを打ち込めるようになったはずです。

しかし、

  • それぞれのコードがどういう意味を持って並んでいるかが分からない。
  • 自分でコード進行を組み立てることはできない。

という段階ではないでしょうか。

作曲家<br>わたなべ
作曲家
わたなべ

それもそのはず。
コード進行は、キーという世界の中で秩序だって並んでいるからです。

この記事では、

  1. キー
  2. スケール:キーの中の住人たち
  3. ダイアトニックコード:住人たちで作ったグループ

について学びます。

キー・スケール

キーの持つ2つの意味

キーは作曲したり演奏したりする上でとても重要なもので、2つの意味を持っています。

  1. 主役の音を表す
  2. 主役の音から始まる、音の連なり(スケール)を示す

①主役の音とは

童謡「カエルのうた」を楽譜にしてみましょう。

この譜面の「カエルのうた」のキーはCで、Key=C(Cメジャーキー)と表現します。

Key=Cの世界では、C(ド)が主役です。

終盤「ガッガッガー」の最後は、C(ド)で終わっています。主役であるC(ド)で終わると安心感がありますよね。

そう。
主役の音で曲を終えると、安心感が生まれるのです。

一方、最後の音をC(ド)ではなくF(ファ)で終えてみましょう。

最後の2小節のみ
作曲家<br>わたなべ
作曲家
わたなべ

思わずズッコケそうです!

違う音で終えようとしても、曲が終わった感じを演出できません。 狙って、曲がまだ続くようなイメージを出すこともありますが、この例ではうまく機能していませんね。

このように、主役の音はメロディーに安定感を与え、曲において重要な役割を担います。

②主役の音から始まる、音の連なり(スケール)

キーは、主役の音を表す他に、キーの世界の住人たちも示します。

その住人たちの音の連なりのことをスケール(音階)と言います。

このイラストのように、Key=Cであれば、C(ド)を主役とした7音の住人がおり、このC D E F G A B」という並び方を、スケールといいます。

メジャーキー・マイナーキー

キーは、大きく分けて2種類あります。

  • メジャーキー明るく楽しいキー
  • マイナーキー暗く悲しいキー

メジャーキー・マイナーキーはそれぞれ、何種類あるのでしょうか?

メジャー・マイナーキー、それぞれに12個ずつ、計24種類のキーがあります。

膨大ですね!!

メジャースケールとマイナースケール

それでは、次にスケールを見ていきます。

メジャーキーにはメジャースケールが、マイナーキーにはマイナースケールがあります。

メジャースケール

Key=Cで、C(ド)を基準にしたスケール(Cメジャースケール)は、次の図のとおりです。

Key=Cの場合、Cメジャースケールは、「CDEFGABC(ドレミファソラシド)」ですね。

この並び順、全全全全全メジャースケールの並び方です。

Key=Eの時はどうなるでしょうか。

E(ミ)から、全全全全全と音を探していくと、EメジャースケールはE・F#・G#・A・B・C#・D#Eになります。

どのメジャーキーでも、メジャースケールはこの順番で音が並びます。

ナチュラルマイナースケール

今度は、マイナースケールです。

作曲家<br>わたなべ
作曲家
わたなべ

実は、マイナーキーには、3つのスケールがあります。

ですが、現段階では難しい話になるので、ここでは代表的なナチュラルマイナースケールをご紹介します。

Key=Cm(Cマイナーキー)で使える、Cナチュラルマイナースケールは、次のとおり。

ナチュラルマイナースケールは「全全全全」の順で並んでいます。

どのマイナーキーでも、ナチュラルマイナースケールは、この順で音が並びます。

スケールの打ち込み方

【見本】Gメジャースケール

Key=G:Gメジャースケールを打ち込んでみましょう!

メジャースケールの並び方は、全全全全全でしたね。主役の音:G(ソ)から、順に打ち込みます。

【練習問題】スケールの打ち込み

作曲家<br>わたなべ
作曲家
わたなべ

同じように、違うキーも打ち込んでみましょう!

  • メジャースケール全全全全全
  • ナチュラルマイナースケール全全全全
Q
【Key=F】Fメジャースケールを打ち込んでみよう。
Q
【Key=F#m】F#ナチュラルマイナースケールを打ち込んでみよう。

メジャースケール・マイナースケールの関係

さて。
ここでは、メジャースケール・マイナースケールの関係を深めていきます!

同主調

主役の音が同じ、メジャースケール・マイナースケールを聴き比べてみましょう。

Cメジャースケール
Cナチュラルマイナースケール

同じC(ド)から始まっていても、連なり方が変わると、明るく感じたり、悲しく感じたりすることが分かりますね。

Key=C・Key=Cmのように、主役の音が同じメジャーキー・マイナーキーの関係を同主調(どうしゅちょう)と言います。

平行調

今度は、Key=CのCメジャースケールと、Key=AmのAナチュラルマイナースケールを比べます。

Cメジャースケール
Aナチュラルマイナースケール

「お?」と思った方もいるかもしれません。

Cメジャースケール・Aナチュラルマイナースケールは、使われている音の種類が同じです。

Key=C・Key=Amのように、スケールで使われている音が同じキー同士の関係を平行調(へいこうちょう)といいます。

作曲家<br>わたなべ
作曲家
わたなべ

使われている音は同じでも、始まりの音が変わると、印象が変わって聞こえるのですね!

DAWでのキー設定・スケール探し

DAWには、キー・スケール設定をすることで、入力を補助してくれる機能があります。

作曲家<br>わたなべ
作曲家
わたなべ

ここでは、Studio Oneにおけるキー・スケールの設定の仕方を紹介します。

他のDAWを使用している方は、別途調べてみてくださいね。

Q
Studio Oneでのキー設定の仕方

また、曲全体のキーを変える場合は、画面下からも行うことができます。

Q
Studio Oneでのスケールの表示方法

まず、ピアノロール画面を開きます。(ショートカットキー「F2」)

例えば、Key=Gの時は、Gメジャースケールを選択します。

私は相対的な表示より、黒鍵を黒鍵のまま捉えたほうが分かりやすいので、あまり使わない機能ですが、慣れていない方は積極的に使うとよいでしょう。

ダイアトニックコードとは

それでは、最後にダイアトニックコードについて学びます。

ダイアトニックコードは、キーに合うコードのことです。

スケールの音を一つ飛ばしでグループ分けすると、7つのコードが生まれます。

参考

ダイアトニックコードは、広義の意味だと「スケールの七音を使って作るコード」を指します。その場合は、コードC・Amのようなコードのほか、Csus2(ド・レ・ソ)・Csus4(ド・ファ・ソ)などもダイアトニックコードと見なします。

以下の説明は、狭義の意味の「スケールを三度ずつ積んで(一つ飛ばしで)作る三和音」と捉えます。

ダイアトニックコードの作り方

スケールを並べて、一つ飛ばしに音を3つ重ねたら、ダイアトニックコードが出来上がります。例えばKey=Cの場合は、次のようになります。

これをDAW上でもやってみましょう。

スケール音を把握した上で、一つ飛ばしにコードを作っていきます。

これで、7つのダイアトニックコードを、打ち込むことができましたね。

参考

↑の音源を聞いて、もしかしたら気持ちが悪いと感じた方もいると思います。

それもそのはず、禁則と言われる連続五度が短時間で複数回出てきているからです。今はあまり気にせず、ダイアトニックコードの導き方を学びましょう。

マイナーキーのダイアトニックコード

マイナーキーのダイアトニックコードも作り方は同じです。

こちらもDAWに打ち込むと、下記のようになります。

ダイアトニックセブンスコード

スケールを一つ飛ばしに4つ重ねたコードダイアトニックセブンスコードと言います。

こちらもDAWで打ち込むと次のようになります。

他のキーのダイアトニックコードを打ち込もう。

作曲家<br>わたなべ
作曲家
わたなべ

Key=Cの場合は、白鍵をただ重ねればいいので楽でしたね。

他のキーならどうやって導き出しましょうか?

【見本】Key=Dのダイアトニックコード

例として、Key=Dのダイアトニックコードを導き出します。

●DAWでダイアトニックコードを導き出す順序
  1. スケールを把握するために、主音からノートを重ねる。
    • メジャーキー全全全全全
    • マイナーキー全全全全
  2. コピーして、その上にもう1段スケールを重ねる。
  3. スケールを打ち込む。
  4. 一つ飛ばしに重ねていく。
①主音から「全全半全全全半」の順にノートを重ねる。

主音とは、キーの主役の音のことです。つまり、Key=Dなら、D(レ)が主音です。

メジャーキーなので、D(レ)から初めて、全全全全全と重ねます。

②コピーして、その上にもう1段スケールを重ねる。

E(ミ)より高い音を選択して、もう1段重ねてコピーします。

作曲家<br>わたなべ
作曲家
わたなべ

下の画像で言えば、E2~D3までを選択するよ。

これで、Dメジャースケールを、2オクターブ分打ち込めたことになりますね。

③スケールを打ち込む。

左に重ねたノートを見本にしながら、Dメジャースケールを打ち込んでみます。

作曲家<br>わたなべ
作曲家
わたなべ

同じ高さの音を、横にずらして打ち込めばOK!

④一つ飛ばしに重ねていく。

そして、左端に並んだノートを見ながら、一つ飛ばしに打ち込んでみましょう。

すると、次のようになります。

これで、Key=Dのダイアトニックコードが導けました。

4つ重ねると、ダイアトニックセブンスコードです。

これで、Key=Dのダイアトニックコード・ダイアトニックセブンスコードが打ち込めましたね。

マイナーキーの場合も、全全全全の順に重ねてから、同じように重ねていきます。

【練習問題】他のキーのダイアトニックコードを打ち込もう。

それでは、他のキーのダイアトニックコードを導き出してみましょう。

Q
Key=Eのダイアトニックコードを7つ打ち込んでみましょう。
Q
Key=Fmのダイアトニックセブンスコードを7つ打ち込んでみましょう。
●スケールの並び方
  • メジャースケール全全全全全
  • ナチュラルマイナースケール全全全全

スケール・ダイアトニックコードを簡単に把握する方法

さて。
キー・スケール・ダイアトニックコードと種類が沢山あり、話も複雑になってきました。

でも、大丈夫です!
五度圏表があれば、
一目で見つけられます。

作曲家<br>わたなべ
作曲家
わたなべ

でも、大丈夫です!
五度圏表があれば、一目で見つけられます。

五度圏表のダウンロード

五度圏表の使い方

五度圏表を使って、選んだキーのダイアトニックコード・スケールを把握してみます。

①キーを選ぶ

五度圏表の水色の線の外側はメジャーコード、水色と桃色の線の間にはマイナーコードが記載されています。

この中から、好きなキーを選びます。

②ダイアトニックコード:キーの周りにあるコードを囲む

選んだキーの周りにあるコードを、扇型に囲みます。

メジャーキーでもマイナキーでも、囲み方は同じです。

ここで囲まれたコードが、選んだキーの7つのダイアトニックコードです。

③ダイアトニックセブンスコードを把握する

シート中段には、ローマ数字が描かれたディグリーネーム対応表と書かれた表があります。

これに則って、7を付けてみると、次のようになります。

簡単に把握することができますよね。

ちなみに、ディグリーネームとは、度数表記と呼ばれるものです。ローマ数字の「I~Ⅶ」で、コードを表します。例えばKey=Cなら、コードCをⅠとして考えます。

ディグリーネーム
  •  :コードC
  • Ⅱm:コードDm
  • Ⅲm:コードEm
  •  :コードF
  •  :コードG
  • Ⅵm:コードAm
  • Ⅶm(♭5):コードBm(♭5)

「Ⅰ Ⅱ Ⅲ……」と、数が増えるごとに、「C D E……」とコードのルートも上がっているのが分かりますね。

④スケール:ディグリーネーム順に並べる

ディグリーネームの順番に、コードのルートを並べると、そのキーのスケールが出来上がります。

これで、キーから、スケールとダイアトニックコード(ダイアトニックセブンスコード)を簡単に導くことができるようになりました。

五度圏表を使ってダイアトニックコードを探す

【お手本】Key=Dのスケール・ダイアトニックセブンスコード

Key=Dのスケール・ダイアトニックセブンスコードを探してみましょう。

まずは、五度圏表からDを探します。

見つけたら、扇形で囲みます。

上記の7つのコードが、Key=Dのダイアトニックコードです。

これを、下記のディグリーネーム対応表に則ってセブンスを付けていきます。

以下が、Key=Dのダイアトニックセブンスコードです。

また、Dから順番にスケールを並べると、

D・E・F#・G・A・B・C#が、Dメジャースケールです。

【練習問題】Key=Bのスケール・ダイアトニックコードは?

それでは、Key=B

  • ダイアトニックコード
  • ダイアトニックセブンスコード
  • Bメジャースケール

を、導き出してみましょう!

Q
解答

まず、ダイアトニックコードがこちら。

そして、ダイアトニックセブンスコードはこちら。

スケールは次の通り。

B♭メジャースケール:B・C・D・E・F・G・A

●参考資料

まとめ

以上が、キー・スケール・ダイアトニックコードの解説です。

作曲家<br>わたなべ
作曲家
わたなべ

五度圏表って、すごいんです!
簡単にダイアトニックコードを見つけられますね!

五度圏表って、すごいんです! 簡単にダイアトニックコードを見つけられますね!

印刷して手元に置いておくと便利ですよ。

それでは次は、ダイアトニックコードの役割を学びましょう!

コード進行の自然な流れが理解できるようになりますよ。

次の記事はこちら
その4.コード機能
その4.コード機能
🏡作曲ひろばOnlineで学ぼう! 仲間と交流しよう!
  • 🎵 Discordでつながる 作曲学習コミュニティ! 
  • 📝 今日の学びをシェアして、仲間と成長!
  • 🔍️ 音楽トークや気軽な雑談も! 自作曲も発表OK!
  • 🤝 一緒にあたたかなコミュニティを作りませんか?
プロフィール
渡部絢也
渡部絢也
作編曲家・シンガーソングライター
「地方にいながら、音楽でご飯を食べる」で早15年。東北秋田で田舎生活しながら、音楽にいそしむ。ミュージカル等の舞台音楽、CM音楽・ファミリー向け楽曲を手掛ける。

歌詞が伝わる歌を作るのが得意。

・音楽制作依頼(舞台音楽・CM楽曲等)
・ブログ運営(音楽理論&プラグイン解説)
・教材販売
・ファミリー向けの作品づくり
記事URLをコピーしました