歌の基本の腹式呼吸|全体呼吸も試してみよう!
歌を歌うときの呼吸法と言えば、腹式呼吸。でも……
- そもそも、自分が腹式呼出来ているのか分からない。
- 腹式呼吸をしたら、逆に歌いづらい。
- 正直、胸で呼吸した方がうまく歌える気がする。
なんて、悩む方も多いと思います。
歌は基本的に腹式呼吸を使いますが、ロングトーンや休符の少ない楽曲の場合は、全体呼吸を使えると便利です。
この記事では、胸式呼吸と腹式呼吸の長所を合わせ持った「全体呼吸」をご紹介します。
呼吸を3種類に分けて考える。
私は呼吸を3つに分類して考えています。 胸式呼吸、腹式呼吸、全体呼吸です。
胸式呼吸とは
胸だけが動くのが、胸式呼吸です。
「大きく息を吸ってみてください」と言われて吸うと、胸式呼吸になる方も多いと思います。また、歌を本格的にやり始めた方のほとんどは胸式呼吸ではないでしょうか。
✓ 胸式呼吸で歌うと……
歌い出しが楽ですが、息の容量が少ないためロングトーンには向きません。
少ない息をやりくりするために、細くフラフラとした声が出る原因でもあります。
腹式呼吸とは
椅子に座って、鼻から息を吸うと、普通はお腹が膨らむと思います。お腹だけが膨らむのが腹式呼吸です。
✓ 腹式呼吸で歌うと……
胸式呼吸よりも息の容量が多いため、長いフレーズやロングトーンを歌うのが楽になります。
しかし、瞬発力を持って息を吐くには訓練が必要なので、慣れていないと歌い出しが不安定になりがちです。
全体呼吸とは
全体呼吸すると、胸もお腹もどちらも膨らみます。 胸式と腹式を合わせた、肺全体で息を吸っている状態です。
✓ 全体呼吸で歌うと……
胸式呼吸の瞬発力と、腹式呼吸の持続力を合わせ持つため、歌い出しに瞬発力が生まれ、ロングトーンも安定します。
ただし、肺容量100%に吸い込むと、歌い出しで音程や声量が暴発する場合があるので、要所要所で使うと便利です。
具体的には、
- 歌い出しにパワフルさが欲しい場合
- 特に長いロングトーン
- 休符が少なく、息が足りなくなる箇所
などで、全体呼吸を使えば良いのです。
3つの呼吸法のまとめ
種類 | 息を吸ったときに…… | 特徴 |
---|---|---|
胸式呼吸 | 胸だけが膨らむ。 | ・瞬発力がある ・持続力に欠ける |
腹式呼吸 | お腹だけが膨らむ。 | ・持続力が高い ・瞬発力を出すには練習が必要 |
全体呼吸 | 胸もお腹もどちらも膨らむ。 | ・瞬発力も持続力も高い ・歌い出だしには注意 |
呼吸の誤った考えを正そう。
腹式呼吸の誤解
腹式呼吸でお腹が動くのはなぜでしょうか?
肺がお腹にあるから?
ってそんなわけないですよね。
腹式呼吸で息を吸ったときにお腹が膨らむのは、肺が広がることで、横隔膜が下がるからです。横隔膜が下がると、内蔵が動き、それに伴いお腹が動きます。
そもそも肺はどれくらいの大きさなのか?
そもそも肺は、あなたが思っているよりも大きいのです。
上記のように、肺が大きいと知った上で、改めて呼吸をしてみて下さい。先程より、深く呼吸ができるようになっていませんか?
人間の意識の力はすごいですよね!
意識するだけで、深く息を吸えるのが分かるはずです。
呼吸法による容量の違い
全体呼吸を使うと、肺の容量を80~100%使って呼吸できます。
私の体感ですが、胸式呼吸は10~20%くらいしか肺を活用していません。
腹式呼吸は、50~80%くらいのイメージです。
歌う時は余力を持った腹式呼吸をメインとし、「ここぞ!」という時に全体呼吸を使うと、息が足りない時に補うことができます。
全体呼吸の練習法
全体呼吸の仕方
- 上記の肺の大きさの画像を見てイメージします。
- 息を限界まで、ゆっくり吐き切ります。(身体を丸めたりして、縮こませても良い)
- 身体の肺の大きさをイメージしながら、息をゆっくり吸います。
- 最初はお腹が膨らみ、最終的に胸まで膨らませます。膨らむ箇所を観察しましょう。
- 限界まで吸いきったら、胸を開き、もっと吸ってみます。
- 2から繰り返す。
ポイントは、慣れるまでできるだけゆっくり②~⑤を行うことです。急いで吸おうとすると、胸式呼吸になりがちです。
また、⑤の「胸を開く」もポイントです。もう吸えないと思ってから胸を開くと、もう少し吸えることに気付くと思います。体勢で呼吸量は変わるのです。
慣れてきたら、鼻と口両方で一気に息を吸い、素早く全体呼吸をする練習もしてみましょう。
瞑想に全体呼吸を取り入れ練習の機会にする
私は一時期毎朝5分ほど瞑想の時間をとるようにしていました。集中力・意志力のアップに繋がるとされているのと、全体呼吸の練習を兼ねているためです。
私の場合、瞑想の時は1回吸ってから吐くまでが40秒前後になります。
最初は短いかもしれませんが、続けていく内に、どんどん一呼吸が長くなっていきますよ。
お風呂に入ったら、全体呼吸の練習をするなど、実生活の中で取り入れることで、より全体呼吸をコントロールできるようになります。
1~2ヶ月毎日やるだけで、呼吸を操る感覚が身につくはずです。
全体呼吸をより深く知るためには
私が全体呼吸という言葉を初めて耳にしたのは、 「ねこ背は治る!」(小池義孝著)という本です。
タイトルからは姿勢に特化した内容に思えます。ですが、まるまる一章を使って呼吸について詳しく解説しており、まさに目からウロコの内容です。ボーカリストを目指す方には、ぜひ読んでください。
歌の基本の腹式呼吸
最後に、歌唱の際のメインとなる腹式呼吸を学んで終わります。
腹式呼吸をする場合は、お腹の辺りに肺があることをイメージしてみると、楽に腹式呼吸ができるでしょう。
下記の図であれば、肺の下側だけに空気を送り込むイメージでも良いです。
片手で背中を、もう片手でみぞおちに手を当てた姿勢は、肩が上がらないため強制的に腹式呼吸となります。どうしても胸式呼吸になってしまう方は、歌の練習の際にこの姿勢をとってみるのも良いでしょう。
まとめ
肺は意外と大きい!
その認識をした上で、腹式呼吸・全体呼吸を使って、歌唱に挑んでみて下さい!
重ねてになりますが、全体呼吸が気になる方は 「ねこ背は治る!」(小池義孝著) を読むこともおすすめします。