Evertone Expander レビュー 音の押し出し感が変わる理由と使い方を解説

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Evertone Expanderは、日本産プラグインとして鳴り物入りで登場したアップワードエキスパンダープラグインです。
- 「アップワードエキスパンダー」は、Thresholdより大きな音をさらに大きくする効果。
- アタックの値を変えることで、ボディ感を強調し、より重量を感じられるようなサウンドに変化可能。
EvertoneのHPでは、「F=ma物理エンジン搭載」という文言が目を引きますが、本記事では、実用上どういう意味を持つのかを噛み砕いて説明します。
また、Evertone Expanderは、単なるアップワードエキスパンダーではなく、
「トランジェントとボディの配分を直感的に、しかも手軽に再設計できる」点に大きな価値があると考えています。
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基本概念
エクスパンダーとは?
そもそも、エクスパンダーとは何でしょうか?
そして、エクスパンダーと対で語られるコンプレッサーとは、何でしょうか?
加えて「アップ or ダウンワード」という用語が付きますと、途端に分かりにくくなる部分です。まずそこを整理しましょう!
コンプレッサーは、「スレッショルドに音を近づけるもの」。
エキスパンダーは、「スレッショルドから音を遠ざける(広げる)もの」。
と、考えましょう。

その上で、ダウンワード・アップワードは、音量の増減の方向を表すわけですね。
- ダウンワードコンプレッサー:Thresholdより大きな音を、小さくする。
- アップワードコンプレッサー:Thresholdより小さな音を、大きくする。
- ダウンワードエキスパンダー:Thresholdより小さな音を、小さくする。
- アップワードエキスパンダー:Thresholdより大きな音を、大きくする。
例えば、Studio One(Fender Pro)の中に入っているExpanderを開くと、ダウンワードエクスパンダーが立ち上がります。小さい音を小さくする効果で、ゲートと呼ばれることもあります。
一方、Evertone Expanderは、完全にアップワードエキスパンダーです。
つまり、一口にエクスパンダーと言っても、ダウンワードかアップワードかは、大きな違いですし、文脈によって全く違うものを指すことには注意が必要です。
アップワードエキスパンダーの使い道
アップワードエキスパンダーは、大きな音をより大きくするエフェクトなのですが、そこには時間制御も関わります。
Attack Time・Release Timeを早めにすれば、アタックの強調ができます。
一方、Attack Time・Release Timeを遅くすれば、アタック以降の強調も可能です。

そして、Evertone Expanderの場合は、メーカーの解説YouTubeや設定値を見る限り、後者の利用を前提に語られているように見えます。つまり、アタックそのものというより、ボディ感を盛る方向で使うことを前提に作られているようです。
その盛り方が、「DAW上のBPMを参考にしたSyncタイム・F=ma物理エンジン」という2つの核によって、自然に迫力が出るのが特徴となっています。
実際に、何が起こるか?
自動設定のための2つのボタン
Evertone Expanderでは、自動設定のための2つの大事なボタンがあります。

- INT AUTO:Threshold・Wet Trimの自動設定。
- ASSIST:Attack Time・Hold Time・Release Timeの自動設定。
- 2つのモードが隠されています。
- NORMAL:BPMを基準に、Attack 1/64・Hold 1/16・Release 1/8
- ADVANCED:Normalの更に半分の長さに。
- 2つのモードが隠されています。
サウンドの変化を聞く。
この2つの自動設定を使って、音がどう変わるかをまずは聞いて頂きます。ASSISTでは、よりタイトな設定となるADVANCEDを利用しました。

前述の通り、アタックではなく、ボディ感に着目すると分かりやすいはずです。キックの押し出し感が増しています。
トランジェントとボディの再配分ツール
さて、ここで注目してもらいたいのは、WET TRIMが-3.1dBになっていることです。

そう。
トランジェント部分は小さくなり、ボディは増しているわけですね。
でも、実際には「もう少しトランジェントを残しつつ、ボディの押し出しは増したい。」なんて場合もあります。
そう!
手軽に配分を変えたいわけです。
そこで便利なのが使うのが、「LINKボタン・RANGEノブ」です。
LINKボタンをOnにした状態で、RANGEノブを調整すると、自動的にWet Trimの値も変化するのです。

先程の②の音源と比べると、③では、アタックとトランジェントの配分が変わっているのが確認できます。
②は、若干トランジェントが埋没して、丸い印象なのが分かるはずです。
つまり、何が言いたいか。
Wet Trimがマイナスの値になると、トランジェントの音量自体は下がります。ただし同時に、ボディ成分が持ち上がっているため、結果としてトランジェントは相対的に目立たなくなります。
そして、「トランジェントとボディのバランスを変更することで、より表現したいサウンドに変化する可能性があること」です。
これが手軽にできるのが、Evertone Expanderの大きな魅力の一つだと感じました。
F=ma物理エンジンで音はどう変わるか?
Evertone ProjectのHPを見ると、しきりに「F=ma物理エンジン」という用語が出てきます。しかし、具体的な中身については説明されていないように見受けられ、どの変数が何に関わるか、その核心部分を読み解くことは、私には困難でした。
とはいえ、本プラグイン内では、F=ma物理エンジンのOn・Off・強さの切替が出来ますので、実際にどのような変化が起こるかに着目するのが合理的でしょう。
Physics Mode
物理エンジンは、以下の4モードの切り替えが可能です。
- Standard
- F=ma Light
- F=ma Medium
- F=ma Heavy
今回は、各種タイムやレシオ等の設定は、固定したまま聴き比べます。
変化が顕著になりやすいように、Wet Trimは-6.7dB、Rangeも9dB越えと、分かりやすくしています。(トランジェントは小さめとなり、ボディが強調される設定。)

まずは、①Standardからです。

一定に野太くなるイメージでしょうか。
次は、②F=ma Lightです。

ゲインの増加量が、微妙に変化しているのが分かります。
この傾向が、Medium・Heavyでは、より強くなっていきます。


④では、音ごとにゲイン量の差が激しくなっていますね。
つまり、F=ma物理エンジンを使うと?
これらの結果から何が分かるかと言うと、物理エンジンモードの時は、インプットされた音の聴感上の勢いに応じて、ゲイン増加量が変化するということです。
また、「Light→Mideum→Heavy」と進むにつれ、その傾向が強まります。
Inputの信号レベル自体は、メーター上はそこまで大きな音量の変化がないように見えます。↓のグラフの黄色い部分の高さはほとんど変わっていませんよね。

①Standardでは、信号レベルに則って動くため、ゲイン増加量は一定というわけです。
が、実際の所bypassの音を聞くと、キックの質感は1打ごとに、かなり変化しており、その質感に則って、F=maモードではゲイン量が増減しています。
「F=ma物理エンジンモード」では、聴感上の強さをそのままゲイン量に換算するようなイメージがありますね。
その他の機能

- FORCE:小さければ繊細に。大きければよりダイナミックに。
- DAMPING:Releaseカーブが変化します。
値を上げると、減衰が速くなる。 - TILT:ATTACK・HOLD・RELEASEを、一気に一律操作。
- SAFETY:クリップさせない。不自然なゲイン変化を防止。
*基本、触らなくていいと思われる。 - INPUT:入力信号の増減。
- MIX:Wet Trimで調整した信号と、ドライ信号を混ぜる。
- OUTPUT:MIX後の信号のレベル調整。
詳しいことは、WEBマニュアルにて。
Evertone Expander 私見
Evertone Expander は、本記事の内容を理解してからが本番のプラグインという印象です。
正直、最初は変化の違いすらよく分からない人も多いかもしれません。でも、聞き所やノブの効果を理解できると、かけないと物足りないという方も多くなるプラグインでしょう。
特に、F=maモードの質感が分かってくると、弾力性のあるエクスパンダーという印象で、好感触となってくるはずです。
ただ、プラグインのGUIや実装の完成度を見ると、もう少しブラッシュアップできそうな所もありそうです。
- ノブやボタンの解説のためのツールチップが欲しい。
- マニュアルにすぐ飛べるように、WEBページへのリンクがプラグイン内に欲しい。
- あまり使わないボタンは、階層を深くしたほうが、初心者は困らない気がする。(例えば、Force・Dampingなど。描写関係のボタンも多いので、混乱しました。)
- GUIも、もう少し整理できそうな気が。AutoGainの位置も、Wet Trimの横にあると、操作に迷わなそうです。
- Outputの右下にあるランプの意味が分からないので、マニュアルに記載が欲しいです。クリップのインジゲーターはノブ周りにあるし……。
……と、つらつら書いてしまいましたが、これらは操作上大きな問題があるわけではありません。
実際の所、生き生きとした音を作れることの方が重要で、その価値が分かっている方がいれば、ぜひ試してもらいたい所です。
日本発プラグインとして、世界に羽ばたくことを祈っております。
兄弟プラグインCompressor&Metro
兄弟プラグインのEvertone Compressor・Metroにも、少し触れておきましょう。

Evertone Expanderが、F=maモードの質感が肝だとすれば、Evertone Compressorも右に同じく独特の質感が好印象です。
Syncモードの数値を他のコンプに移植しても、同じような音にはならないです。内部のコンプレッサーのゲインリダクションの仕方が、やはり独特なのでしょう。まだ検証不十分ではありますが、十分個性を感じる音でした。
Metroはユーティリティプラグインです。

BPMに応じた各音価を、ms表示してくれ、クリックするとコピーできます。そのまま、他のエフェクトに貼付けできるわけですね。便利!
ただ、定価で12,000円ほどと考えると、ちょっと高い気がしますね。
Evertone Bundleでは、Expander・Compressor分の金額でMetroが付いてくるので、購入するのであれば、バンドルがおすすめです。
CPU負荷
どれも、かなり軽いです。

●PCスペック
- OS:Windows11 64bit
- CPU:AMD Ryzen 9 3900X [3.8GHz/12Core]
- メモリ:96GB
- DAW:Studio One7.2
- サンプリングレート・解像度:48kHz・32bit float
- バッファーサイズ:1024samples
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Discrete4
まとめ
以上が、Evertone Expanderのレビューでした。
私的には、Wet Trim・Rangeの調整で、トランジェントとボディの配分調整ができることに気付いてから、目がウロコ状態でした。
F=maモードの切替も有意義でしたね。エレクトロ系のキックでも、ベロシティに変化がある場合は、その勢いに応じてゲイン量の変化が確認できました。F=ma Heavyにすると、跳ねるようなニュアンスが付与され、非常に驚いた次第です。(ちなみに、Standardモードにすると、面白みのないサウンドに。)
- エレクトロ系キック聴き比べ
-
Bypass Standard F=ma Heavy 重要なポイントに、より重量感が付与されるイメージですね。
「F=ma物理エンジン」というワードが強すぎて、ある意味「色もの?」「難しそう。」など、敬遠される方もいるかもしれませんが、ボディ感・押し出し感を調整できるツールとしては、かなり期待できるプラグインだと思います。
また、このプラグインは、1つの音をトランジェントとボディとして聴き分ける感覚を自然と身につけさせてくれます。こうした「音の構造を理解する耳」は、ミックス全体の精度を一段引き上げてくれるはずです。
また、本記事内では、各種タイム設定のアシスト機能を使った状態で検証していますが、これらを変化させていくことで、ノリの変化を思い通りにできる可能性も秘めています。
個人的には、このように「使うことで成長につながるプラグイン」は非常に価値が高く思います。ぜひお試しを。
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