Heavyocity PUNISH レビュー:音を際立たせるプラグイン
Heavyocity PUNISHは、5種類が内包されたマルチエフェクターです。
- コンプレッサー:音量差を整える
- サチュレーション:歪み成分を加える
- トランジェントシェイパー:アタック音・サスティン音の音量を調整
- イコライザー:低音域・高音域の帯域調整
- リミッター:レベルがオーバーしないようにする
私のPUNISHの主な使い道としては、ドラム・シンセの音を際立たせることです。
その際には、プリセットを選択して、真ん中のツマミで微調整という、ごくごくシンプルな使い方をします。効果は絶大で、簡単に迫力のある音を作ることが出来ます。
本記事では、PUNISHの特徴を、音を交えてご紹介していきます。
画面の見方
画面真ん中のオレンジ色のPUNISHノブのアニメが目を引きますよね。
このPUNISHノブ。右側に回すほど、音が際立つ効果が強くなります。
おもしろいのは、このパニッシュノブ自体が、何かの効果を与えるものではない所。このPUNISHノブは、一つのノブで複数のエフェクトに作用するマクロコントロールして作用します。
下の画像の赤い●の部分に黒い線がありますよね。
この黒い線が、実際にかかっているエフェクトの値を表します。
PUNISHノブと、この黒い線が連動し、各エフェクトの効きが変わります。
この画像でいくと、
- コンプ・サチュレーションの効きが良くなる。
- アタックが増し、リリースが減る。
- 低音域を足す。
これらが同時に起こることにより、迫力のある音になるわけです。
では、実際にどのような音の変化があるのか聴いていきましょう。
ドラムに使う場合
PUNISHは、立ち上げてPUNISHノブを右に回すだけで、ガンガンGainが上がります。
そのため、音量が大きくなった=良い音になった。と、勘違いしやすいです。
ここではドラムバスの素の音とPUNISHを立ち上げた音のラウドネス(音圧)が、大体同じになるようにした音源を聞き比べてみます。
モニタースピーカー・ヘッドホンで聞かないと分かりづらいと思いますが、特にスネアやハイハットが前に出て、音が立っているのが確認できると思います。
ドラムバスに送る前の段階のスネア・ハイハット・オーバーヘッドに調整を加えるのも一つですが、バスでかけることで、狙った効果を時短で表現できます。また、グルー効果(素材の一体感を増す効果)も得られますね。
シンセに使う場合
シンセサウンドも抜けが出て、より格好良く聞こえるようになります。
こちらも、ラウドネスを揃えてみました。分かりにくいかもしれませんが、短く交互に聞くと素の音が少し物足りない感覚が分かると思います。
PUNISH音源を聞いた後に素の音を聞くと、若干ぼやけて、遠くにあるように聞こえますよね。
PUNISH音源の方は、高音域の解像度が上がって活き活きとしているのが分かると思います。
プリセットは「Subtle Enhancement(微妙な強化)」というプリセットを使いました。
かけた直後は、コンプのリダクションが-6dBとかかりすぎで、逆に音が薄くなりました。スレッショルド値を上げて、リダクションを-3dB程度に抑えただけで、この音源のように存在感のある音に変化しています。
このように、コンプ・サチュレーション等の基本操作を分かった上で使うと、かなりの時短になります。
プリセットはどんな種類があるか?
プリセットは、下記の8種類に分かれています。私的に使いやすいのは、ドラム・シンセです。
- イントロダクション(コンプ・サチュレーションなど、各項目だけがONになっているプリセット)
- ベース
- ドラム
- FX
- ギター
- キーボード&シンセ
- マスタリング
- ボーカル
特に、マスタリングのプリセットは、マスタリングに使うには音の変化が激しく、意図しない音になることもあるので、私は使いません。
基本的には、どんな楽器にでも使えますが、ヌケの良い音にする or 激しく歪ませる の2択のプラグインだと考えています。
激しく歪ませるというのは、例えば次のような使い方です。
エフェクトの種類と特徴
コンプレッサー
コンプレッサーは、下記3種類が含まれています。(下記、マニュアルをDeepLにて翻訳)
- Console:スムーズなクラスAスタイルのバス用コンプレッサー
- Modern:クラシックな “Knee “を持つ、アグレッシブでファットなサウンド
- Classic:温かみのあるヴィンテージFETリミッティングアンプ
ですが、プリセットから選んで微調整という使い方であれば、あまり切り替えて使うことはないですね。
ちなみに外部からのサイドチェイン・サイドチェインハイパスフィルターに対応しています。MIXもついているので、パラレルコンプとしても使えます。
サチュレーション
サチュレーションも3種類。
- Vintage:古い放送フォーマットスタイルのマイクプリ
- Modern:モダンなブティック・プリアンプで、肉厚でがっしりしたシャープなハーモニック・サチュレーション
- Tube:温かみのあるフルボディでファットなチューブ・サチュレーション
こちらも、プリセットから選択して微調整であれば、切り替えて使うことはあまりないのですが、おもしろい機能もついているのでご紹介。
まず、このサチュレーションは、立ち上げるだけでEQ特性が変化します。
緩やかに100Hzくらいから下がっているのが分かりますよね。これは、サチュレーションをONにするだけで、低音域のボリュームが下がることを意味します。
低音が物足りなくなったという時には、HPF(ハイパスフィルター)とLo Makeup(ローメイクアップ)が便利です。
- HPF:サチュレーターに入力される信号に影響を与えるハイパスフィルターの周波数をコントロールします。低周波は飽和せずにこのエフェクトを通過します。
- Lo Makeup:飽和していない低周波のレベルをコントロールします。なお、HPF コントロールが最小値に設定されている場合、このコントロールはサウンドに影響を与えません。
HPFで選択したサチュレーションがかからない部分を、Lo Makeupで持ち上げることができます。例えば、先程のシンセサウンドのLoMakeupを足してみましょう。
太く温かな帯域を強化できていますよね。サチュレーターをかけて逆に低音部が痩せたと感じたときには、HPF・LoMakeupの微調整も効果的です。
ちなみに、Driveを上げていくと次のようにEQ特性が変化していきます。
Driveを上げていくと、高音域が強調されるわけですね。あまりにも、シュワシュワ言うのが気になる場合は、LPF(ローパスフィルター)のツマミを使います。
- LPF:ローパスフィルターのカットオフ周波数をコントロールします。このフィルターは、サチュレーターによってもたらされるハーシュネスをトーンダウンするために使用できます。
トランジェントシェイパー
Hold値で、アタックを10~100msの間で選択して、強めたり弱めたりできます。
マスタリングのプリセットで、こいつがかかっているものを選択した場合、予期しない音を作り出す犯人の場合が多いので、注意です。
イコライザー
ハイシェルフ・ローシェルフの2バンドEQです。帯域を選んで、増すか減らすか選ぶだけ。
めちゃくちゃシンプルですね。上げれば迫力(と音量)が増します。
リミッター
本質的にはコンプレッサーと一緒ですが、役割はレベルを越えないようにするもの。
Softノブを変化させると、次のように変わります。
Softノブが30%だと、ハードニーかつレシオも高い状態です。
Softノブを上げていくにつれ、ソフトニーでレシオが低くなる。という挙動です。
その他(インプット・アウトプット・ミックス)
このセクションはかなり使います。
- In:PUNISH エフェクト(Mix ノブを含む)に入る前の信号のレベルをコントロールする。
- Mix:入力信号(ドライ)と処理された信号(ウェット)の間のドライ/ウェットミックスをコントロールします。
- Out:プラグインから出力される信号の最終的な出力レベルをコントロールする。
Inで、信号レベルを適切にするのは、とても大事。
また、「音が元気なのは良いけど元気過ぎる。」なんて場合は、Punishノブではなく、Mixで原音とブレンドできるのも、使い勝手が良いポイントです。
まとめ
Punishの使い勝手と、エフェクトの細かな効きを解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
この記事を見ている方は、Punishを買うかどうか迷っている方だと思います。
マスタリングツールとして導入を考えている方は、他の選択肢もあるかと思いますが、各トラックの音をさり気なく抜ける音にする。という使い方では、かなりの時短となりますので購入して問題ありません。
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