VST音源 レビュー

Heavyocity ASCEND: Modern Grandレビュー 3レイヤーの創造的なピアノ音源

rainysongame
Heavyocity ASCEND: Modern Grandレビュー 3レイヤーの創造的なピアノ音源
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Heavyocity ASCEND: Modern Grandは、パッド・アルペジオ・テクスチャなどのクリエイティブなサウンドが出せるピアノ音源です。

  • レイヤー創造的なサウンドが出せるピアノ音源
  • 自動的にフレーズを作り出せるエコー機能が逸品
  • 普通のピアノとしても使えるが、少しウェット

サウンドを聴きながら、Ascendに迫っていきましょう。

>Ascendの金額を確認する

Heavyocity

Ascendのサウンドを聞いてみよう。

アルペジオ・パッドのサウンド

まずは、3トラックにAscendを使ったサンプル曲です。

  1. ピアノ単音弾き
  2. パッド
  3. アルペジオ(自動生成)
Ascendのトラック

マスター段ではEQ・コンプ等をかけていますが、リバーブはAscendの内部で使えるものを使いました。

質感がウェットで、ちょっと奥まって聞こえるかと思います。Ascendの音質としては、どのプリセットを選んでも、全体的にこのような仕上がりです。

3レイヤーのクリエイティブなサウンド

Ascendの特徴は、3レイヤーで音を作ることです。

次の画像は、サンプル曲で使ったパッドのプリセット画像です。

Ascendの3レイヤー

SUSTAINED(伸ばす系)のBrush・EBow・Twineの3種類をレイヤーしており、画面左側にあるAUTOMATE機能で音量バランスが自動的に変わる設定になっています。

収録されているサウンドは、4種類✕4カテゴリー=16個で、これらをレイヤーして音作りするわけですね。

アルペジオ・エコー機能

従来の普通のアルペジオ機能のほか、自動生成のエコー機能が入っています。

まず、アルペジオ機能を見てみましょう。

打ち込み自体はシンプルで、Emコードをただ打ち込んでいるだけです。

Ascendの打ち込み例

アルペジオ機能を使うと、次のようなサウンドになります。

AscendのARPEGGIATE機能

アルペジオのHOLDがかかっている所は、音楽用語で言う所のタイになるため、音を伸ばすことになります。真ん中のグラフはベロシティ。FXで、ステレオディレイがかかっているので、広がりのあるサウンドになっていますね。

サウンドのレイヤーは、ppp Mix(ピアニッシッシモ)=とても弱く弾いたピアノの音がメインで、Brush(ブラシ)やMuted(ミュートしながら弾いている)の音が若干混ざっています。ガサガサした音がブラシの音ですね。

それでは次に、アルペジオ機能を切って、エコー機能だけで試してみます。

AscendのECHOES機能

アルペジオと全く違う挙動になっていますよね。エコー機能は2つの挙動があります。

  • REPLICATE:MIDIディレイとして動作します。
  • GENERATE:演奏したコードに基づいてノートを再生します。

上記画像は、REPLICATEモードです。設定により、4th/5thの音がMIDIディレイとして返ることになります。つまり、コードEmを弾くと……

コードEmの構成音4th5th
EAB
GCD
BEF#

コードで考えれば、Em7(9,11,♭13)の構成音で、アルペジオが自動演奏されることになります。Key=EmのⅠm:Emのテンション♭13はアボイドノートのため、不穏な響きを生むことになります。今回のサンプル曲が、少し不穏で不思議な空気感になっているのは、テンション♭13:Emから見た時のC(ド)の音の影響が大きいですね。

このように、エコー機能を使う場合は、構成音を慎重に考える必要があるかもしれません。(逆に、不穏な楽曲を作りたい場合は、手軽に作れると思います。)

ちなみに、MIDIディレイの構成音は、下記画像のように変更可能です。

AscendのMIDIディレイ構成音

CASCADEボタンがオンだと、繰り返されるたびに、オクターブ上のノートが返ります。

それでは、アルペジオ機能・エコー機能を同時に使ってみます。

手動で打ち込むならかなり大変そうな、複雑なフレーズになっていますよね。

これはAscendでなければ、中々作れないサウンドだと思います。

プラックのサウンド

ここではポップス的な例を見てみます。

ドラム・ベース・Ascendの3トラックのサンプル楽曲です。

Ascendのモジュレーション

プラック(はじく系)のサウンドとして使っています。

上記画像を見ると、▽の上部中央に小さな丸が見えますよね。これは、各MIDIノートが発音される毎のフェーダー位置を表します。そもそも、大きな◎(フェーダー)の位置が左上のMutedという所にあるにも関わらず、なぜフェーダー位置が変化するかと言うと、3レイヤーの音量バランスに対して、モジュレーションをかけているからです。

RANDOMでは、SCATTERで音の出だしのフェーダー位置のランダム化、DRIFTで音の出だし以降のフェーダー位置のランダム化ができます。

画面下側のMODULATEタブでは、左からLFO・MIDI CC制御・KEYBOARDと3種類のモジュレーションができます。今回はKEYBOARDのベロシティの値の高さに応じて、X軸でプラス方向に、Y軸でマイナス方向に動くような設定になっているのです。

このように3レイヤーをモジュレーションすることで音に深みを出しているのがAscendの特徴の一つと言えます。

ピアノとしての質感について

Ascendに興味のある方としては、クリエイティブな音作りより、ピアノ単独でどんな音が鳴るのか。という所もあると思います。

他のピアノ音源とも比較しながら聞いてみましょう。(*私はピアニストではありません。下記はMIDIキーボード&マウスによる打ち込みです。また、Ravenscroft275のレビュー用に作ったものなので、ベロシティはRavenscroft275に最適化されています。)

Ravenscroft 275のピアノソロ画像
①Ravenscroft 275(Closed・RoomのMix)
②Keyscape(C7 – Natural)
③Hammer Smith Pro(Mid・ClosedのMix)
④Ascend(Full – Mix)

①Ravenscroft275は、バランスが良く、程よい空気感と色気のあるサウンドが特徴です。(レビュー記事はこちらから。)若干芯がぼけて聞こえるので、クリアな音が欲しい場合は、③Hammer Smith Proの方が良いかもしれません。私の現在の主力ピアノ音源です。

②Keyscapeは、Spectrasonicsらしい重量感のある低音域が特徴に思います。若干マイクが近すぎて、ヘッドホンだと耳の横ですぐに鳴っているような感じに聞こえます。

③Hammer Smith Proは、Soniccoutureのとても評判の良いピアノ音源です。クリアで透明感のあるサウンドです。マイクバランスを変えられるのが良いですね。今回はFarマイクは足していません。

>Hammer Smith Proの金額を確認

こうして聴き比べると、④Ascendは、ちょっと音が引っ込んで聞こえる感じが分かると思います。↑の音源は、Full – Mixであり、Closed Micだけであれば、もう少しデッドではあるのですが、Closedだけだと私的には少し色気が足りない感じもします。あと、他の音源に比べると、高域のサーというノイズが気になる所。(俗に言うSN比が悪いというやつ。)

これだけ書くと、ズタボロに言うような感じにも聞こえるかもしれませんが、映像や舞台などのBGMであれば、やはり④Ascendは候補に上がると思います。綺麗すぎないので、実際に生で鳴っている感じがするのと、音が前に出過ぎず少し引っ込むため、背景として聞かせることができるからです。

そういう意味でも、Ascendがシネマティックなピアノ音源と言われるのは、分かる気がします。逆にポップス向けのピアノ音源をお求めであれば、Ascendでなくても良いように思います。

Ascendは、若干奥まったピアノの音や、クリエイティブなサウンドが欲しい方におすすめです。

使用上の注意点

Convolveリバーブの使い方

Convolveリバーブを散々調整した後に、「あれ?反応してなくない?」という方が多いのではないかと思われます。

Convolveリバーブへは、画面上部からセンドで送る必要があります。

AscendのConvセンド

これにより初めて使えるようになりますので、注意しましょう。

レイヤー毎にセンドできるので、テクスチャ系だけ送って、ふんわりパッド音を作ることも可能です。

ppp Mixの特定の鍵盤ノイズとその対策

私が実際に、制作上でノイズに悩まされたので、注意喚起と解決策を載せておきます。

ppp Mixの中にD4キーの頭に、プチッとしたノイズがのっています。

D4キーのノイズ

解決策は、画面上部のppp Mixの調整ノブで、ATTKを104%に設定します。

AscendのpppMixはアタックを104%にすると良い。
アタック104%で消えたD4キーのノイズ

サンプルが途中から始まっているために発生しているノイズなようなので、少し遅らせることで、ノイズが消えて違和感のないサウンドになります。

CPU負荷

内部エフェクトをどれだけ使うかで、CPU負荷が変わってきます。

AscendのCPU負荷
3トラック使っているサンプル曲の場合

17%は、重たい部類です。

実際の制作でも、フリーズしながら進めることもありました。負荷は覚悟しましょう。

●PCスペック

  • OS:Windows10 64bit
  • CPU:AMD Ryzen 9 3900X [3.8GHz/12Core] 
  • メモリ:96GB
  • DAW:Studio One6.5
  • サンプリングレート・解像度:48kHz・32bit float
  • バッファーサイズ:1024samples
  • オーディオインターフェース:Antelope Audio Discrete4

まとめ

以上が、Heavyocity ASCEND: Modern Grandのレビューです。

前述の通り、ポップスよりは、どちらかというと映像・舞台などの音楽に向いている音源だと、私は認識しています。

その分、3レイヤー・アルペジオ・エコー機能などで、聞いたことのないようなサウンドを手軽に作れ、ハマった時の効果は抜群です。

Ascendでなければ出せない唯一無二のサウンドが出せますので、クリエイティブなサウンドが欲しい場合は、おすすめできる音源です。

エフェクト類等は、本記事では解説していませんが、特にConvリバーブは面白い効きのものがありますので、ぜひお試し下さい。

>Ascendの金額を確認する

Heavyocity

こんな作品、作ってます。

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プロフィール
渡部絢也
渡部絢也
子ども向け音楽の作曲家・歌うたい
こどもの日常に、うたを。
秋田の山あいで暮らす二児の父。

子どもが笑って歌い、
親子の毎日がちょっと変わる──

そんな歌をつくります。

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