Knocktonalレビュー キック・スネアに音程感を付ける新感覚エフェクト
Knocktonalは、グラミー賞受賞の音楽プロデューサーであるDJ Swivelが手掛けたエフェクトです。
トーナル(音程感)をノックするプラグイン。と聞くと、レゾナンスを処理するSoothe2・SmoothOperator・Resoなどと同様のプラグインと思ってしまうところですが、同系統のプラグインではありません。
簡単に説明すると、キックやスネアに音程感を付与するエフェクトです。
そうすることで、
- キック・スネアに音程感を出して、曲に一体感を与える
- キック・スネアを音程楽器のようにして使う
ことが出来ます。
その過程で、元から音程感のあるキックやスネアの音程感を無くすことも可能です。
実際の音を交えながら、Knocktonalの実用性をご説明します。
Knocktonalで曲に一体感を出そう。
今回は、8小節のダンス系トラックで検証します。
Knocktonalの有無で、どのような違いがあるか聞いてみましょう。
キックとスネアに注目して聞いてみて下さい。
②の方が、馴染みが良いのが分かりますか? ②のキックは音程感と重量感が出ています。また、スネアの音程感も曲に合っています。
①のキック・スネアは、曲のキーとマッチしていないので、②に比べると馴染みが悪いのですね。
キックの設定は、次のようになっています。
私がしたことは2つ。
- キックの基音がGだったので、Gとその倍音を削って音程感をなくす。
- 楽曲のKey=Dmに合うように、Dとその倍音を持ち上げる。
元々ある音程感を削って白紙にし、その後音程感を付与する。という流れです。
スネアも同じです。
基音がGだったのでGを削って白紙状態にして、Key=Dmの主音であるDの完全五度であるAを持ち上げました。
スネアの音程感を変えて検証してみましょう。
結構印象が変わりますね。
③は、スネアのチューニングをキーの主音に合わせたもので、すごく腑に落ちる感じがします。居心地が良い感じ。
一方②は、高揚感というか緊迫感というか、アガる感じの印象を受けませんか?
このように、キックやスネアの音程感を調整するだけで、与えたい印象を変えることができます。
キーに合うキック・スネアを探さなくても、これからはKnocktonalで自由自在にキックとスネアのチューニングできる。 これは画期的! 超手軽!
Knocktonalの使い方
画面中央のブースト・カットのグラフは、それぞれ一つしか設定できません。
ノードに続く波のような部分が倍音です。
この倍音部分をノブで操作することで、音質を変化させることができます。
以下は、操作感が独特な部分をかいつまんでご紹介します。
Qは、ディケイとも関係する
Qを高くするとグラフの波がどんどん尖っていき、音程感が増していくのですが、それに伴ってディケイ(音の長さ)も伸びていきます。
次の音源は、オートメーションでQを1→100とだんだん増やしてみたものです。
だんだんと音程のある808のキックのようになっていますよね。
これがKnocktonalのとても特徴的な部分です。どんな素材でも808風味にできる。
反面、音程をはっきりさせたいけど、ディケイを伸ばしたくない時はちょっと不便に感じました。
また、カットするQ(画面上部の赤いQ)もディケイに関係しますので、808風を作る場合は、どちらのQも調整しましょう。
MIDI操作
Knocktonalで音程を奏でる場合、MIDIでトリガーできます。
- MIDI Input1:ブーストの音程
- MIDI Input2:カットの音程
試しに、Knocktonalで音程を付けてみました。
ちなみに、Knocktonalで音程調整する際に、低音が物足りなくなる時があります。(音程が上がると特に。)
今回はWavesfactory Spectreを使うことで、低音感を補強しています。
Spectreは、EQよりも抜ける感じのブーストが手早く出来るので、物凄く重宝しています。
Bands・Brend
Bandsは、選んだノードの第何倍音まで出すかを決めるパラメーター。
Brendでは、選んだノートの奇数倍音・偶数倍音の強さを調整できます。
倍音によって、音の個性や明暗が変わってきます。
次の音源は、オートメーションでブレンドを変えた音源です。
キャラクターが変わりますよね。ここも音作りの楽しいポイント。
Knocktonalのここが惜しい!
基音を自分で判断する必要がある。
基音をカットして白紙状態に戻す作業は、自分の耳で判断する必要があります。
これはすぐにできる人、できない人で別れそうですね。
私は基音を「耳を頼りに聞き取って、口で歌って、鍵盤で確かめる」という何ともアナログなことをして確かめています。
であれば、Sonic Academy Kick2のようなプラグインを使って、最初から音程ありで打ち込む方が楽!という方もいそうかな。
ただ、Knocktonalが優れていてるのは、好きなキック・スネア素材に音程を付けられることなので、普段サンプルを使っている方にとっては、大変便利だと思います。
CPU負荷
プラグイン内にバイパススイッチがなく、DAW側でバイパス切り替えをすると、一瞬だけガクつきます。
それ以外の動作は、とても軽いです。
レイテンシーがないのは、特に嬉しいですね。
●PCスペック
- OS:Windows10 64bit
- CPU:AMD Ryzen 9 3900X [3.8GHz/12Core]
- メモリ:64GB
- DAW:Studio One5.4
- サンプリングレート・解像度:48kHz・32bit float
- バッファーサイズ:512samples
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Discrete4
まとめ
以上が、Knocktonalのレビューです。
特にクラブ系ミュージックに合うプラグインですが、生ドラムのキック・スネアでも効果があるとのこと。
ミックスを一段階上に引き上げたい方は、導入を検討してみてはいかがでしょうか?