UVI Falcon3レビュー 計り知れない深さを持つシンセ・サンプラー
UVI Falconは、フランス・パリのプラグインメーカーUVIの核となるシンセサイザー・サンプラーです。
- 上質で品のあるサウンドで、プリセットが使える音ばかり。
- エフェクト100種類超。モジュレーター・アルペジエイター多数
- どこまでもエディット可能な懐の深さ
サウンドを聴きながら、Falconに迫っていきましょう。
Falconのサウンドを確認しよう。
Falocon Factoryプリセット
Falconに最初から付いてくるプリセットは、1500を超える数が収録されています。
1500という数は、万を超えるプリセット数を誇るOmnisphere2などに比べると、そこまで多いわけではありません。
ですが、特に電子音楽を作りたい場合は使いやすい音が揃っているのが特徴です。
電子音楽系サンプル曲
ドラムトラックも含め、5トラック全てがFalconです。
サウンドは雑味がなくスッキリとした印象で、上品さも感じます。
Arpのトラックでは、プリセットに後から私自身でアルペジエイターを立ち上げました。
ノートごとにLRパンが入れ替わるNOTE PAN機能も追加しています。
多数のイベントプラグラム(アルペジエイターやユーティリティなど)が入っているため、自由自在に音をEDITできるのがFalconの強みです。
アコースティックなシンセサウンドも
バージョンを重ねるにつれて、新しいサウンドも増えてきています。
バージョン2.8では、2チャンネルのサンプル再生をミックスする最新のエンジンTEXTUREが追加されました。
このエンジンを使った、アコースティックな雰囲気のプリセットも追加となりました。
このカテゴリのみを使って、3トラックのサンプル曲を作りました。
シンセではあるのですが、アコースティック的な要素も感じます。
太く、やはり上品な印象を感じませんか?
最新のトレンドを押さえたサウンドが追加されていくのは、プラグインを持っている身としてはとても嬉しい所です。
今後の成長にも期待できますね。
Falconの操作
Falconは、他のシンセサイザーとは発想が異なるため、最初は戸惑うことも多いかもしれません。
ここでは、最低限知っておいた方が良いことを書いておきます。
画面の見方
プリセットを立ち上げると、簡単にサウンド変化が楽しめるマクロノブが付いた画面が出てきます。
サウンドを深くエディットする場合は、画面上部のEDITタブに移動します。
EDIT画面では、画面の下から上に信号が流れます。
オシレーター>キーグループ>レイヤー>プログラムという順番で、信号が流れていきます。
キーグループには、オシレーターを複数立ち上げることができます。
キーグループ・レイヤー・プログラム、それぞれにエフェクトを立ち上げることができ、EDIT画面上で確認することができます。
エフェクトを一覧で見たい場合は、EFFECTS画面に移動します。
これがFalconの基本です。
モジュレーションの操作
シンセサイザーと言えば、モジュレーション(変調)です。
Falconのモジュレーターは画面下部にまとまっており、変調されている目印であるピンク色のノブをクリックすると、画面下部に浮き出てきます。
画面左側はツリー表示にしておくと、迷子になることが減るでしょう。
自分でモジュレーションをかけたい場合は、モジュレーションをかけたいノブ上で、右クリックをします。
Falconのエフェクト・スクリプト
Falconは100種類を超えるエフェクトが収録されています。
リバーブ・ディレイなどの空間系はもちろん、フィルターだけでも20種類。
ディストーション・コンプレッサー、ユーティリティなど、考え得る大抵のエフェクトは収録されているでしょう。(気になる方は、UVI Falcon公式ページを確認しましょう。)
また、EVENTSタブからは、シーケンサー・アルペジエイターの他、エフェクトタブとはまた別のエフェクトを立ち上げることもできます。
中でも、シーケンサー・アルペジエイターは、様々なものが用意されており、他のシンセサイザーでは見ないものも多数含まれます。
知っておくと便利なこと
0から音を立ち上げる。
普通のシンセサイザーと違って、立ち上げても、すぐには音が出ません。
次の図のようにして、キーグループにシンセ・サンプラーを立ち上げます。
キーグループを立ち上げた後、タブを左クリック長押しで、エンジンを選びます。
これで、好きなエンジンの音が出るようになります。
EDMなどでは定番のWavetableもしっかりありますので、ソリッドな冷たいデジタルなサウンドも作ることが可能です。
ベロシティに音量を追従させたい場合
プリセットによっては、ベロシティで音量が変化しないサウンドもあります。
ベロシティに反応させたい場合には、下図を参考に。
キーグループが複数ある場合は、その全てをチェックして、変更しましょう。
Falcon私見
Omnisphere2も使いこなすのに一生かかるシンセサイザーと言われますが、Falconも負けず劣らず一生かかっても使いこなせるかどうかと思えるほどの可能性を秘めています。
エンジンの豊富さ、多数のモジュレーター、100種類を超えるエフェクト、複数種類のスクリプト(アルペジエーター・MIDIシーケンサーなど)が収録されており、組み合わせることで文字通り無限の可能性が深く広がっているのです。
出音が良いので、シンセサイザー初心者も、シンセサイザーを極めたい方も、どちらも満足できる製品であると私は思います。
Falconのここがちょっと
モジュレーションの不自由さ
前述したモジュレーターの階層の不自由さは、稀に「うっ」となることはあります。
プログラムやレイヤーに対して、ノートトリガーでモジュレーションをかけることができないという謎の縛りが、無くなることを求む……。
プリセットにタグ検索がない
また、プリセットがツリー表示のみなのは、不便な所です。タグ付けがされていないので、音の雰囲気などで検索することができません。OmnisphereやANA2などに比べると、むず痒く思えることもあります。
ただ、Omnisphereの場合は「どうやって使うんだ、この音?」と感じるプリセットも大量に含まれている反面、Falconは厳選したプリセットが入っているので、音選びの大変さはさほど変わらないようにも思います。
CPU負荷
Falconは、際限なくエフェクトやオシレーターを立ち上げられるので、立ち上げる程にCPU負荷は高まります。
今回のサンプル曲の中では、CPU負荷が20%を超えるプリセットも。
●PCスペック
- OS:Windows10 64bit
- CPU:AMD Ryzen 9 3900X [3.8GHz/12Core]
- メモリ:64GB
- DAW:Studio One6
- サンプリングレート・解像度:48kHz・32bit float
- バッファーサイズ:1024samples
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Discrete4
CPU負荷については、プリセットやライブラリによって本当にまちまちです。
他のUVI製品のVintage Valutのような実機シンセから音を録音して組み立てているロンプラー系ライブラリは、CPU負荷がさほど上がらない印象です。(5%ほどのプリセットが多い。)
一方、FalconエキスパンションのOrganic Keysなどでは、私の環境でも40%ほどと負担が高くなるプリセットも多いです。
まとめ
以上が、UVI Falconのレビューです。
品を感じる上質なサウンド。際限のないカスタマイズが可能。一生かけて付き合える懐の深いシンセサイザーです。
他のUVI製品の母艦にもなるので、私は立ち上げない日はないくらい使っているプラグインですね。