DTMプラグインアフィリエイトに思うこと。
DTM界隈に限りませんが、アフィリエイターを忌避する言葉を、見かけることがあります。
- 商品の欠点を述べず、売上に繋げるための過剰な表現の提灯記事ばかり書いている。
- 海外公式サイトの文言を和訳して、ただコピペしているだけの記事が乱立している。
- 無償提供製品でレビューしていることを隠している。
私自身も上記のような状況・行為は、嫌です。
本記事では、DTMプラグインのアフィリエイターとしての立場から、私自身がどういう思いで記事制作に取り組んでいるかを、述べておきたいと思います。
アフィリエイターは、何故嫌われる?
アフィリエイトとは、成功報酬型広告のことを言います。ブログ・SNSなどで、商品を紹介し、そのアフィリエイトリンクを辿って読者に購入してもらった内の数%が、アフィリエイター(アフィリエイトリンクを貼った人)に報酬として入ってくる仕組みです。
アフィリエイターは、メーカーと直接か、販売代理店とアフィリエイト契約を結びます。DTMプラグインの場合は、販売代理店と契約する方がほとんどだと思われます。
アフィリエイターは、アフィリエイトプログラムを実施している企業の製品の販売促進を担う営業マンと言えるでしょう。
その反面、販売促進を狙うが故に、過剰な文言を並べ立てたり、製品の短所をあえて隠して紹介するアフィリエイターも中にはいるように思います。
その結果、アフィリエイターが忌避される、という状況にあるのではないでしょうか。
アフィリエイターの問題について
売上のためだけの過剰な提灯記事
提灯記事とは、「この商品は素晴らしい!」「この商品は画期的だ!」などと、売上を上げるために、製品をおだてている記事(動画を含む)を言います。
ググるという言葉が死語になりつつあるのは、インターネット上が提灯記事に溢れ、本当に良い製品がググっても分からなくなってきていることもあるように思います。
そのため、私自身が記事を書く記事に関しては、
- 良い製品でも、短所や競合製品に触れる。
- 良い部分は、具体例(私の場合はサウンド例)を挙げて紹介する。
- そもそも「う~ん」と思う製品は取り上げない。
ということを、心がけています。
特に、いまいちだと思う製品を取り上げないのは物凄く大事なことです。
なぜなら、一記事にかかる時間は短くても3時間、長いと10時間ほどです。こんなに時間をかけて、好きになれない製品を紹介する記事を書くのは不毛です。正直に書いたら、全く売れないような短所を挙げ連ねた製品の記事を書くのは、一銭の得にもなりません。
私は、嘘を付きたくないのです。
コピペ記事の乱立
コピペ記事は、私も嫌いです。
海外公式サイトを自動和訳するだけで分かることを、コピペして記事にしているサイトです。Googleが上位に表示するのも問題ですが、クリックして公式サイトの和訳だけだと単純にがっかりするんですよね。
時間を取って記事を読んで下さる方に、それ相応の気付きや情報、もっと言えば(少しおこがましいですが、)学びを与えられるような記事を書きたいと私は考えます。
そのために、
- マニュアルを読み込み、ノブ・パラメーターを実践的にどう活用するかを示す。
- 実際に試して見た感想を、私自身の言葉で語る。
ということを意識しています。
ただ、記事自体は公式ページから和訳コピペしているセール情報サイトにも、速報性に優れ、情報が網羅しやすい。という価値を提供するサイトもあります。「気付かなかったセールに気付けた。」「海外のYoutube動画をまとめてくれていてありがたい。」など、人によっては価値があるサイトもあるのです。
私自身、毎日DTM関連のメルマガが20通前後届きますが、それでも見過ごしているものがありますので、そうしたサイトに助けられた場合は、意図的に情報サイトのアフィリエイトリンクを踏んで買い物をすることもあります。
「速報性・情報を網羅しやすい」という価値に目をつむって、コピペであることだけで批判するのはいかがなものか。とは思います。
無償提供製品でレビューしていることを隠している。
アフィリエイターとして活動し、ある程度の実績を出すと、NFR(無償提供製品)の申し出を受ける機会があります。(当サイトの場合は、記事掲載料を頂くわけではなく、あくまで無償で製品を頂戴し、報酬はあくまでアフィリエイトから頂く形です。他のサイトは分かりません。)
私自身どう取り扱えば良いか分からなかった時期もあり、提供頂いたことを明示していない期間もありました。代理店の担当者に相談し、現在は明記するようにしてます。
実際の所、アフィリエイターが無料提供製品の申し出を受けると決めた製品については、提供頂いた後、良い製品であれ、そんなに刺さらなかった製品であれ、必ず記事を書く必要がでてきます。また、提供頂いた製品ですから、「悪いことは書きにくい」という心理が働くことは事実としてあります。(先にも述べたように、時間をかけて書くから、売れなくなるような悪いことは書きたくない……と思ってしまう側面もあります。)
しかし、無償提供頂いた製品であることを明示していない状態では、読者は「あ、悪いことを書いていないから、良い製品なんだな。」と無意識に思ってしまうかもしれません。
もし、無償提供された製品であることを明示していれば、多少甘口な記事内容であっても、読者は「あー無償提供されてるから、悪いこと書けないのかもな。」と予想が立つでしょう。
だから、無償提供された製品であることは、明示する必要があると、私は思っています。(法律によってではなく、倫理的に。)
以上はブログを想定した考えですが、SNSなどで何度も商品を紹介する場合、その都度無償提供された製品であると一生書き続けなければいけないか。というのは、判断が難しい所かと思います。例えば、投稿と同時にその製品を取り上げたブログ・動画などのリンクを張り、そのリンク先で無償提供された旨を書く。というのも、スマートなやり方かもしれません。(*正直、今は誰も正解が分からない状況だと思います。)
まとめます。
私が無償提供製品の記事を書く場合は、
- 無償提供された製品の記事であることを明示する。
- 良いところ、感動したところも冷静に伝える。
- 短所や改善点・競合製品についても明示する。
- おすすめできるターゲットを明示する。
ということを心がけるようにしています。
特に、「書きにくいことも書く」ことが大事だと思っています。
例えば、Techivation全製品レビュー記事内のT-Imagerでは、バグと解決策について触れています。
Big Fish Audio/Smack2は、音質が最高峰のボディパーカッション音源ですが、テンポが変化する中ではノイズが発生するということも記載しました。(メーカーによると、Kontaktの仕様ということでしたが……。)
こんなことを書かないほうが、一時的な売上を得られる可能性が高いでしょうが、私が読者であれば、デメリットや様々な選択肢を知った上で、自分で選択したいですから。
また、こうした指摘をメーカーが受け止めて改善することも願っています。
【*追記 2023/9/2】
アフィリエイト広告を含む記事やSNS投稿においては、分かりやすい位置に【広告】の表示をするように、「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」で示されました。(具体的な貼り方については、こちらのPDFを参照のこと。)
煽り文句がエスカレートしていく。
アフィリエイターの問題3つ目。煽り文句のエスカレートです。
例えば、「セール期間中の今買わないと、絶対に損です!」というような煽り文句を書き連ねる行為のことを言っています。
実際の所、あらゆる人が絶対に買った方が良い製品というのは、基本的にはあり得ないと思います。
また、アフィリエイターというのは、リンクを辿って、買ってもらってなんぼ。という偏った考えになりがちだということは、読者も、アフィリエイター自身も、頭に入れる必要があるかと思います。
新しいプラグインを買うように言葉巧みに導けば、本来必要ない方が購入して後悔する事態が生まれます。結果として、その方はそれ以降アフィリエイター経由で購入することは少なくなるでしょう。そのアフィリエイター自身の首を締めるだけでなく、アフィリエイター全体(もっと言えば、DTM界隈自体)が忌避されることにも繋がります。
だからこそ、アフィリエイターは下記を守る必要があると思います。
- 「今買わないのは損である」といった、切迫したリスクを感じさせる言葉を使わない。
- 本当に感動した商品でも、褒める言葉こそ慎重に選ぶ。
漫画ドラゴンボールにおいて、終盤に行くにつれ戦闘力がインフレしていったのは、物語上仕方ないことだったとは思うのですが、プラグインエフェクトでも新しいプラグインを褒め称えていくと、きりがないのですよね。
だからこそ、プラグインをレビューするのであれば、どういう特徴があるかを、事実として冷静に伝える姿勢が必要かと思っています。(自戒を込めて。)
レビューをするメリット
レビュー記事を書くメリットは、私自身は2つあります。
- レビュー記事を書くことで、成長できる。
- プラグインを買う購入資金を捻出できる。
レビュー記事を書くことで成長できる。
「人に教えると、自分の学びになる。」と、良く言いますよね。
レビュー記事を書くためには、その製品を勉強する必要があります。
そのため、「よく知りたい&分かりたいプラグイン」こそ、レビュー記事を書きながら、より深く学んでいる側面があります。
私自身は、専門学校で学んだり、エンジニアとしてスタジオで働いた経験があるわけではありません。あくまでフリーの作編曲家として10数年食べてきたため、知識が偏っていることは自認しています。
そのため、レビューするプラグインは特に、マニュアルを読み込むようにしています。
しかしながら、書いている当初は間違いだと気付かずに書いていたが、後から間違いに気付くということもないわけではありません。 読者の方々には申し訳ありませんが、その場合は追記や修正をしながら、できるだけ誤りが少なくなるように努めています。
プラグインを買う購入資金にできる。
アフィリエイトで頂く報酬はほとんど、プラグインや機材の購入で使っています。
新たに音源・エフェクトを買うことで、またプラグインレビュー記事を書く材料にもなりますし、私自身の制作物のクオリティも高めることが出来ます。
レビュー記事を書くことで、
- 読者には、プラグインの情報やTipsを提供する。
- メーカー&代理店には、販売促進の手助けができる。
- 私自身は、成長でき、音楽制作の環境を整えられる。
というメリットがあると考えています。
健全に製品を紹介する限りは、アフィリエイターが非難される理由はないと考えます。
アフィリエイターの事情
海外代理店と国内代理店
現状(2023年8月現在)、DTMプラグインのアフィリエイターは、海外代理店を取り扱っている方が多いです。
これは、2点理由があります。
- ほとんどの国内代理店はアフィリエイターを表立って募集していない。
- 国内代理店は、海外代理店に比べて報酬率が低い。
ということです。
ほとんどの国内代理店は、アフィリエイターを表立って募集することはせず、業界有名人やインフルエンサーとコラボして記事やメルマガ・動画を作り、販売促進している場合がほとんどではないかと思います。
その手法自体は、非難することではありません。(むしろトッププロの考えを学べる貴重な場所だと思います。が、あまり非難めいたことは言えないでしょうし、代理店は書かないでしょうから、本音が分かりづらいとは思います。)
話を戻しますが、国内代理店の門戸が開かれていない故に、個人のアフィリエイターたちは、門戸が開かれた海外代理店に集うことになります。
このような状況で何が問題かというと、日本&海外代理店で同じ製品をそれぞれ販売している場合、アフィリエイターたちはこぞって海外代理店を紹介し、国内代理店を紹介できない(しない。)という事態が起こります。
海外代理店で買う方が増えれば増えるほど、日本円がどんどんと海外へ流れていくという事態が発生するわけですね。正確に言えば、国内代理店に残るお金と、海外代理店に登録しているアフィリエイターにバックされる報酬との差額分が海外に流れるわけです。
その差額がどれくらいかは、私には分かりません。
しかし、海外代理店の販売額が増えれば増えるほど、国内代理店で購入したい日本人DTMerが、日本語マニュアルや手厚いサポートを受けにくくなる可能性は大いに考えられます。(*一方、海外代理店が日本向けにサービスを拡充しようとしている動きがあることも、申し付け加えておきます。)
問題定義だけして答えを出さないのは申し訳ありませんが、国内代理店・海外代理店どちらで買うかは、DTMer一人ひとりの主義によるものです。(実際の所、「その時安い方で買う。」という方が大半だと思いますし、おまけ・ポイントを含めて私も総合的に考えてその都度選んでいます。)
国内代理店に望むこと
以上のような状況がある中で、アフィリエイターと国内代理店は、ある意味敵対関係……というと言い過ぎですが、反目している部分がないわけではないように思います。(一部の、私を含む既に国内代理店と契約している方々を除いては。ということですが。)
あくまで、私の推測ですが、
- 国内代理店からすると、「アフィリエイターは海外代理店ばかり紹介する方々」
- アフィリエイターからは、「国内代理店は紹介する機会すらくれない。」
というように、お互いに不満を抱えていても、おかしくはないのではないかと。(というか、私はかつて国内代理店にそう思っていました。)
国内代理店が表立ってアフィリエイトの門戸を開いてくれたら……ということは、私は常々思っています。
なぜなら、ネット上に上質なレビューが増えれば、私自身がそれを読み、必要な情報を得て成長できるメリットがあるからです。地方で作編曲家として活動する私としては、ネット上の上質なレビューは、極めてありがたいものです。
しかし、記事・動画の制作時間に見合うだけの報酬がなければ、そうした上質なレビューは増えていかないのではないかと思うのです。
海外代理店が取り扱ってなくても、国内代理店が取り扱っている製品もたくさんありますが、そういった製品のレビューを国内代理店外のサイトで見つけにくいのは、国内代理店が表立ってアフィリエイトプラグラムの門戸を開いていないからだと思います。自社の取り扱い製品をよく紹介するのは当たり前ですから、私は第三者の紹介も合わせて見たいのです。これは、私だけが思う特別な欲求だとは思いません。
また、国内代理店がアフィリエイトの門戸を開くことで、アフィリエイター経由で海外代理店に流れる売上を、多少なりとも緩和することができるのではないでしょうか。
報酬率と、レビューをするバカの話
報酬率の話です。国内代理店のアフィリエイト利率は、海外代理店に比較すると低いです。
低い利率については、国内代理店が日本語和訳をしたり、サポートしたりする必要経費が必要であるからでしょうか。ユーザーに安い金額で提供するために、アフィリエイターに払う報酬率が下がる。というのは、仕方ない、とは思います。
しかし報酬率が低いということは、もし仮に国内代理店が門戸を開いたとしても、アフィリエイターたちが国内代理店の取扱商品を、海外代理店の取扱商品と同じようなモチベーションで記事・動画を作成し続けることができるかは、今のところ分かりません。
これは例え話ですが、報酬率が10%だとします。
「10,000円のプラグインを購入しレビューをして、リンク経由で買って頂いたら、1,000円の報酬を受け取れる」ということです。つまり、10個売ると元が取れますね。
一方、報酬率が2%なら、一個販売して200円です。50個売れたらようやく元が取れるわけですが、実際の所そんなに売れることは、絶対にないとは言いませんが、ほとんどないと言っても良いのではないかと思います。
前者・後者で、アフィリエイターのやる気が変わってもおかしくないのは、目に見えています。
プラグインは、基本的に一製品の単価が高いので、レビューするだけ赤字……。というかそもそも稼ぐためには、一つ一つプラグインを購入し、一記事一記事に時間をかけてレビューをするなんて、バカのやることです!!
そう。
私はバカなのです……。
「稼ぐ」ことを目標にすると、コピペサイトを運営するしかなくなってしまいます。実際に購入して試さなくても、サイトが作れますから。(デモってレビューという形もあるかとは思いますが。)
上記で申し上げた通り、記事を書いてより深くプラグインを知るため、自分の成長のためという目的があるからこそ記事を書いてこられたと思います。その結果売上があがり、自費で購入したプラグインの補填が多少なりとも出来ている。という状況です。
「国内代理店が表立ってアフィリエイターを募る。」「低い利率でも、上質なレビューをするアフィリエイターが増える。」という2つの課題が解決されれば、貴重な情報がより多くの方に行き渡るように思いますが、残念ながら道は中々厳しそうです。
アフィリエイトに思うこと
読者の場合の振る舞いについて
私自身は「この記事が参考になった。買おう!」という場合は、その記事・動画を書いたアフィリエイターのリンクを辿って購入するようにしています。
なぜなら、その商品自体の情報&Tipsを教えてくれたことに恩を返す一手段だからです。そういった記事や動画作成に時間がかかるのも知っていますので。
皆そうすべきだ。とまで言うつもりはありません。あくまで、私は上記のような考えだというだけの話です。
頑なにアフィリンクを踏まない。という方がいるのも知っています。
ですが、仮にためになったと思える情報があるのであれば、私は恩を返したいたちです。もちろん、コピペサイトで時間を失っただけで、何も見返りがないような場合は、踏みません。
つまり、読者自身が「リンクを踏む&踏まない」を選択することが大事なのではないかと考えています。
アフィリエイトプログラムのないメーカーもある。
アフィリエイトプログラムを使っておらず、優良なプラグインを排出するメーカーとして、私が真っ先に思い浮かべるのはTone Projectsです。(*知らないだけで、やってるかもしれないけど。)
マスタリングコンプレッサーUnisumが有名なメーカーで、私も先日バンドルを導入しました。
実際の所、Tone Projectsを含む、アフィリエイトプログラムを使っていないメーカーの製品をレビューする時間を作るのは難しいです。見返りがないから……ということもありますが、レビューできていない他の(アフィリエイトプログラムのある)プラグインが山程あるからです。
私がUnisumをレビューするなら10時間以上かかるのが目に見えてますもん……。
そういう意味でも、見返りなくUnisumなどのプラグインをレビューしているようなサイト・レビュアーの方々には、心から敬意を払っています。本当にありがたいです。
まとめ
大変な長文記事となってしまいました。
私がこの記事を書くにあたっての最初の動機は、「アフィリエイターを無条件で目の敵にされるのは何故だろう?」という疑問からでした。
しかし順を追って考えると、私自身もアフィリエイターを嫌に思っている部分があると自覚しました。嫌だったからこそ、自分のサイトでは、そういった嫌な部分を改善した記事を書こうとしてきたのだと。
もちろん完璧ではないでしょうし、きっと今後考えが改まる部分もあると思います。
また、私の経験&知識不足で、うまく紹介しきれていない記事(あるいは中には間違っている記事)もあるとは思いますが、読んでくださった方に自らの知見を届けお役に立てるよう、信念を持って記事を書いています。
お気付きのことがあれば、是非お知らせ下さい。
引き続き当サイトをよろしくお願いいたします。