Wave Alchemy Triaz レビュー 最強の3レイヤー電子ドラム音源
Wave Alchemy Triazは、各音色3レイヤーできる電子ドラム総合音源です。
同じカテゴリのプラグインには、XLN Audio XO・NI Battery4などがあります。XOがお目当てのサンプルを探すのが得意だとすれば、Triazはお目当ての音を作り出すのが得意な音源です。
元々Kontakt版が発売されていましたが、2024年2月Native版が発売となり、再リリースされました。
- 膨大な15000の高音質なサウンド・ジャンルごとに分かれた700のプリセット
- プラグイン内でできるEDITが幅広い。モジュレーションも可能。
- Kontaktだと手間がかかったマルチアウトも1クリックで対応
サウンドを聴きながら、Triazに迫っていきましょう。
Triazのサウンドと概要
プリセットから聞いてみる。
Triazのプリセット選択は、ジャンルごとにタグ付けされています。
ジャンルごとのプリセット選択は、物凄く便利です。(UVI DrumDesignerで散々感じてきた所。)
ジャンルに適したプリセットを試すことで、作り慣れていないジャンルでも特有の傾向をすぐに掴めます。 研究の足がかりにもなりますし、音色作りの時間を最小限に制作に向かえるのです。
(逆にジャンル分けされていない音源では、適したプリセットを探し出す所からスタートするので、かなり時間がかかりますよね。)
さぁ!
Triazのプリセットから、ジャンル違いで、幾つか音を聞いてみましょう。
Techno
リミッターやコンプなど、外部エフェクトは一切使っていません。
Technoジャンルからのプリセットは、わりとアタックが丸く押さえられている印象です。テクノはビートの繰り返しも多く、一曲が長かったりもするので、アタックが強いと聴き疲れする要因ともなります。
ジャンル特有の音が、Mix-Redeyされた状態で収録されているわけですね。
Triazの大きな特徴は、一つの音を3つのサウンドでレイヤーしていることです。
各音色は、かなり細かな調整が可能です。
Slopノブは、ランダム要素を加えられ、機械的な打ち込みの中に揺らぎを生むことができます。
Pop
Popカテゴリのプリセットは、アタックが立っているプリセットも多いです。
迫力のあるサウンドですよね。
↑上記画像では、CHANNEL FX画面を表示しています。3つの音色がまとまって、CHANNEL FXにルーティングされ、EQ・COMP・SHAPERの調整ができます。
EQはXYパッドで、ハイ&ローシェルフと中域の調整を一度にするおもしろい仕様です。
SHAPERでは、アタック・サスティンをいじるだけでなく、OTT(ワンノブ型マルチバンドコンプ)・ステレオ感を調整するWidthのほか、歪み系エフェクトが備わっています。
Hip Hop
SEND FXは、Reverb2系統・Delay1系統です。
REVERB Bは、IRリバーブです。クリエイティブなリバーブも多く収録され、音作りの幅がとても広いです。
Smoothノブは、ダッキングのような機能で、値を増やすとリバーブのアタック感が減ります。
センドは、MIXER画面から行います。
リバーブはA・Bどちらか1系統選ぶ形ですね。
MIXER画面には、鍵盤マークがあります。鍵盤マークが点灯しているトラックは音程が割り当てられ、音程演奏が可能です。
KickやHihatに音程を付けるのも、一瞬!
ほんと隙がない。
Cinematic
プリセットは、電子ドラム系だけでなく、パーカションやシネマティックサウンドも含まれています。
↑上記画像は、MASTER FX画面を表示しています。
マルチチャンネルでルーティングしない限りは、すべての音色がMASTER FXに送られます。マスターFXでは、EQ・COMP・MAXIMIZERの調整ができます。
EQは、4バンドで、MID・SIDEも個々に調整可能。潔いバンド数なのに、痒い所に手が届く絶妙なバランスだと思います。
MAXIMIZERでは、歪み感やノイズ付与、OTT(マルチバンドコンプ)・クリッパーのほか、メーター上にある紫色のThresholdを下げると、その分潰れてオートで音量が上がる仕組みです。
個々の音色に対してもかなりのEDITができ、チャンネルFX・マスターFXも練り込まれているため、Triazの中でも相当の所まで追い込めるのは分かって頂けたと思います。
オリジナルキットを聞いてみる。
Triazの真価は、上記までで説明したEDIT機能に留まりません。
ランダム機能が各所に設けられており、新しいキットを作るのもとても簡単で刺激的です。
次のキットは、Random機能をもとにして作りました。
0から作っても、わりと簡単に良い感じのキットを作ることができました。
リズムパターンもSEQUENCER機能で作りました。
各ノートのタイミングをずらす、Humanaizeのスライダーで機械的になりすぎないようにもできます。
ノートごとのキックのピッチも調整していますが、これもSEQUENCER機能内のタブから行えます。
SEQUENCE内のタブでは、下記のような調整が可能です。
- REPEAT:リピート回数を増やす。
- CHANCE:確率でノートオンにする。
- START:ノートの発音のタイミングを調整する。
- PITCH:音程調整する。
- MOTION:変調する。 *後述します。
Triazだけで、音色調整だけでなく、リズムパターンも完結できますね。
当たり前のようにエクスポート機能もあります。
*2024/2/22現在1.0Verでは、エクスポート後のMIDIのCCの読み取りにバグがあるように思います。ピッチ変更などのCC入力のタイミングが、ノートジャストだと効果が入りません。手動で手前に微調節すればOKでした。今後のバージョンアップに期待です。
機能補足
ご紹介しきれなかった機能をご紹介します。
サンプル検索
サンプル検索も簡単です。
素材ごとにカテゴリ・タグ付けがされています。
外部サンプルの取り込み(ドラッグ&ドロップ)
外部からの素材も取り込めます。
例えば、XOで良い素材を選び、そのままTriazに入れ込むこともできます。
素材を探しやすいXOと、EDITしやすいTriazをかけ合わせる良い方法だと思います。
ピッチ&フィルターのモジュレーション
各音色へのピッチ・フィルターの変調を簡単に行えます。
Envelopeで増減幅を設定し、その横にあるAttack・Decayで時間操作するわけですね。
Motion
ノブ上で右クリックすると、Assign Motionが開きます。
これで、例えばMotion SEQ3を選択してみましょう。
この3をクリックすると、SEAQUENCERのMOTIONタブが開きます。
この時、Motion SEQ3に登録したため、上から3番目に登録されます。
MOTION番号・トラック番号が現れるので、画面遷移の際、混乱しやすいです。一度動作を確認しておきましょう。
MOTION画面内では、ノートごとに対して、設定したノブの値を変化させられます。例えば、あるノートにだけリバーブ・ディレイをかけたり、ノートごとにPANを変更したりできるわけです。
マルチアウト
Triazはマルチアウトも可能です。
Multi Out Enabledに設定し、Mapping&Routingを開きます。
その後、MANAGEからRoute to Consecutive Outputsを選択肢ます。
上記のように設定すると、それぞれの音色がCHANNEL FX後に、そのままDAWにルーティングされます。要するに、MASTER FXを通らなくなります。
もちろん、全体的にMASTER FXに通して、特定のトラックだけ別にルーティングすることも可能なので、必要に応じて行いましょう。
Triazの特徴(他製品との比較含む)
各トラック3レイヤーのすごさ
電子ドラム系の製品としては、XLN Audio XO・NI Battery4がありますが、どちらも1サンプルを手軽にEDITする製品となっています。
Triazは、3レイヤーで手軽に音作りが可能です。
キックを例にとると、
- アタック感の強いキック
- ボディ感の強いキック
- 質感を付与するフォーリー
など、必要な役割に応じたサンプルを用意することで、簡単に今までにない音作りができるということです。
各音色は、Triaz内のフィルターや時間操作で簡単に棲み分けできます。
従来であれば、DAW上の複数のトラックで行う必要があったレイヤーが、Triaz内で完結できるのです。しかも1度に12音色も!
これは革命的なことではないでしょうか。
ジャンルごとに分かれたプリセット
ジャンルごとにプリセットが分かれた電子ドラム系音源としては、UVI DrumDesignerがあります。
Drum Designerの場合は、4レイヤーまで行われて、音色が作り込まれています。が、Triazのように、XYパッドでの操作はできず、音量を数値のみでいじる形です。
また、外部からのサンプルを取り込むには、Falconの深くまで潜る必要があり、手軽とは言い難いですね。(Triazより細かくジャンル分けされているのは好感触です。)
Triazしかり、Drum Designerしかり、ジャンル特有の音色やリズムパターンが即戦力で手に入るのは、本当に楽です。
他社製品で言えば、BATTERY4は、リズムパターンもないですから、プリセットを聞いて0からどのジャンルに適した音なのかを探る必要があります。これでは、正直手が伸びません。
XOは、あえてジャンルが分からないような名付け・作りになっているので、その出会いが楽しい場合もあるとは思います。Triazでは、Random機能でも新たな出会いを楽しめるので、隙がありません。
ノブの多さ・画面遷移について
唯一、Triazに苦言を呈するとすれば、画面遷移の煩雑さです。
タブが多く、目的のつまみがどこにあるかを把握するまでは、混乱必至でしょう。
逆に、少し慣れてくると手が早くなり、逆に感心する場面も多いと思います。
執念を感じるほど、練り込まれていると感じました。
Studio One用 Pitch Names 配布
以下より、Studio One用のピッチリストをダウンロードできます。
- Studio Oneで、上記ピッチリストを使う方法
-
上記ファイルをダウンロード後、解凍(展開)します。
その後、Studio Oneをインストールしているフォルダに移動し、
StudioOne\Presets\User Presets\Pitch Names
に放り込みます。
Studio Oneを起動して、右にあるブラウズから、「プリセットの索引を再作成」をします。
「ピアノロール→ドラムマップ→ピッチリスト」からCinePerc – OrchePercを選択します。
CPU負荷
使われているエフェクトによるようで、10~20%の場合が多いようです。
そこそこのCPU負荷ですが、立ち上がりや画面遷移は早いです。
●PCスペック
- OS:Windows10 64bit
- CPU:AMD Ryzen 9 3900X [3.8GHz/12Core]
- メモリ:96GB
- DAW:Studio One6.5
- サンプリングレート・解像度:48kHz・32bit float
- バッファーサイズ:1024samples
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Discrete4
まとめ
Wave Alchemy Triazのレビューは以上です。
電子系リズム音源としては隙がなく、触っていても物凄く楽しい素晴らしい製品だと思います。
元々Kontakt版の時から気になっていた製品ではありましたが、Kontaktはルーティングが面倒くさかったり、画面の大きさに制限があったりと、リズム音源としては手を伸ばしにくかったのです。しかし、Native版ではためらう理由もなく、デモを試し、瞬時に購入を決めました。
いや、本当に良いですよ!