Hollywood Fantasy Orchestra Bundle レビュー 美しく説得力のあるサウンド
Eastwest Hollywood Fantasy Orchestra Bundleは、西洋ファンタジーに向く民族楽器&オーケストラ総合音源です。
- ユニゾンで収録された美しく説得力のあるサウンドが魅力。
- コード入力で自動演奏してくれるOrchestratorも収録。
- Eastwestの他社製品と同じ場所で収録し、親和性が高い。
サウンドを聴きながら、Hollywood Fantasy Orchestra Bundleに迫っていきましょう。
>Hollywood Fantasy Orchestra Bundleの金額を確認
サウンドを聞いてみよう。
Hollywood Fantasy Orchestra Bundleのみで、小曲を作ってみました。
一つ一つの楽器の説得力がとてもあるので、序盤のように音数が少なくとも十分雰囲気が出るのが良いですね。
また、後半は音を厚くしていますが、音を厚くするためのLow Strings(6チェロ・4バス)などの重厚感溢れる音も数多く含まれます。
歌は、Phrasesプリセットを使用しています。オーディオ化して、Melodyneで一部音程を変化させて、コード進行に沿わせています。やはり声が入ると説得力が全く変わりますね!
収録内容
バンドル一覧
Hollywood Fantasy Orchestra bundleは、下記の6つの製品が収録されています。
- Hollywood Fantasy Strings
- Hollywood Fantasy Brass
- Hollywood Fantasy Winds
- Hollywood Fantasy Percussion
- Hollywood Fantasy Voices
- Hollywood Fantasy Orchestrator
収録楽器を説明してきます。
収録楽器一覧
「▶ 収録楽器一覧」ボタンを押すことで、一言紹介をご覧いただけます。
Hollywood Fantasy Strings
- 収録楽器一覧
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楽器名 説明 構成 ハガンダー
フィドル・ノルウェーの二重弦の弦楽器
・バイオリンより音域は狭い
・単独で演奏するだけでムードむんむん3ユニゾン リュート ・12弦ギターに似ているが音色が柔らか
・ギターで言う所の5&6弦はオクターブ配置
・1~4弦はユニゾン配置3ユニゾン ビオラ・ダ
・ガンバ・チェロに似ているが、少し音域が狭い。
・HOOE(*)収録のチェロより色っぽく、
高域が立って聞こえる。3ユニゾン マウント
ダルシマー・ラップトップギターのように横向きに置き、
ピックや爪で演奏する。
(普通のダルシマーは弦を叩いて演奏。)3ユニゾン ハーディ
ガーディ・車輪を手でぐるぐる回して、弦を擦って演奏。
そういった機械的なノイズも含まれる。
・持続音の弦が用意されているので、
打ち込みの時に持続音を用意すると良い。2種類 ロー
ストリングス・オクターブ違いで収録されている。 6チェロ
4バスハイ
ストリングス・オクターブ違いで収録されている。 8バイオリン
4ビオラ*HOOE=Hollywood Orchestra Opus Edition
私はメイン楽器がアコギなので、リュート・ダルシマーのような撥弦楽器に惹かれますが、どちらもかなり良いですね。
擦弦楽器も全て、単独でも味が出るような素晴らしい音色です。
Fantasyシリーズの中でも、特にStringsはクオリティが高く使い所があると感じますね。
Hollywood Fantasy Brass
- 収録楽器一覧
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楽器名 説明 構成 ワグナー
チューバ・ホルンとトロンボーンを合わせた印象
・ホルン奏者が持ち変えて演奏することが多い
・柔らかな音から勇壮な音まで出せる。3ユニゾン フリューゲ
ルホルン・トランペットより柔らかい音。
・HOOEのトランペットより、
高い音域が出ない。3ユニゾン アルペン
ホルン・アルプス地方で羊を呼び集めるのに使用。
・穴やバルブがないため、息を調整し演奏。
自然倍音列の12音しか出せない。
・自然倍音列=ドドソドミソシ♭ドレミファ#ソ
ってことだと思います。
・柔らかい音色。3ユニゾン ローブラス ・HOOEのLow Brassより、立ち上がりが早い。
・濃密な音色に聞こえ、かなり使いやすい印象。3トロンボーン
2チンバッソ
1チューバ
特にローブラスが良いと感じました。
私的には、通常の金管楽器との使い分けで悩みそうな所もあります。今後、研究が必要ですね。
Hollywood Fantasy Winds
- 収録楽器一覧
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楽器名 説明 構成 アイリッシュ
ホイッスル・ケルト音楽の定番
・ステレオ感のあるサウンドハイ2
ロー2ルネサンス
フルート・画像だけ見るとただのリコーダーに見える。
が、木製らしい?
・音色はリコーダーより優雅で温かみを感じる。2ユニゾン イリアン
パイプス・バグパイプの一種。
・口ではなく、ふいごを肘で挟んで演奏する。
・膝と手で挟んで低音を演奏するなど、
演奏上の見た目もかなり面白い。
・ぜひYoutubeでの演奏を見て欲しい所。3ユニゾン オカリナ ・言わずと知れたオカリナ
・柔らかい音色が特徴4ユニゾン
こちらはブラスよりも、わりと使い所が多いラインナップだと感じます。
というのは、通常のオーケストラの木管楽器って、個性の塊じゃないですか。オーボエ・クラリネット・バスーン、どれも一聴すれば分かるサウンドです。
反対に、アイリッシュホイッスル・ルネサンスフルート・オカリナは、個性が強い音色ではありません。丸く温かな音色ですから、どこにでも使える可能性を秘めていると思います。
Hollywood Fantasy Percussion
- 収録楽器一覧
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楽器名 説明 バウロン
(3ユニゾン)・手のひらサイズのケルトの太鼓
・パンパンとアタック感があるグランカッサ
(3ユニゾン)・オーケストラの大太鼓
・ドドンと迫力がある。大太鼓
(3ユニゾン)・和太鼓を3つ重ねたもの。少しくぐもってます。
・アタック感を求めるなら、Taiko Creatorの方がおすすめ。巨大な長胴太鼓 ・大きな長胴太鼓
・ユニゾンしている↑の大太鼓よりも、
こちらの方が迫力があります。チェンチェン ・ガムランの小さなシンバル
・チェンチェンチェン!って感じに鳴る。クロタル ・音程がある小さなシンバル
・グロッケンの音を柔らかくしたような音。
・HOOEにも入ってますが、ユニゾンのおかげか
サウンドクオリティが高くなっています。シンバル&ゴング
アンサンブル・HOOEのシンバル類よりも、はっきり
くっきり収録されている感じがします。ヤギひづめシェイカー ・ヤギのひづめの削りかすを使ったシェイカー
・シャカシャカと乾いた音がする。クラケブ(KRAKEB) ・金属製のカスタネット
・チェンチェンと音が似ているが、
こちらの方が空洞があり、音が軽い。メタルシェーカー ・金属の筒に入ったシェイカー。
・物凄く音が軽い。
・邪魔になりにくく使いやすそう。NAGARA RUB FX ・インドの太鼓を擦って音を出している。
・ホラーっぽい響きNAGARA&ASHIKO ・インドの太鼓ナガラ&アシコ
・ナガラは大きく低い音。
・アシコは小さく、ナガラより高めな音。
・皮感があり、素晴らしい響きだと思います。オーケストラベル
アンサンブル・のど自慢のキンコンカンの鐘
・HOOEでもOrchestral Chimesという名前で収録。
・アンサンブルということもあるのか
明らかにこちらの方が音が良いです。音域も広く。オーケストラメタラジー ・大きな鉄板を、色々な方法で鳴らしている。
・金属的な表現をしたい時に良さそう。スネアアンサンブル ・スネアのアンサンブル(大規模編成)。
・存在感のあるサウンドです。
・HOOEではComboKit内にソロで収録されてました。タム ・タム
・HOOEでは、収録されておらず。
Hollywood Orchestra Opus Editionを補完するような内容です。良い!
特に、クロタル・オーケストラベルは、アンサンブルで収録されていることもあるのか、うっとりするような音色をしています。
Hollywood Fantasy Voices
- 収録楽器一覧
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楽器名 説明 Sustain ・4種類(Ah・Ee・Oh・Oo)
それぞれに、ビブラートありなしがある。Legato ・2種類(Ah・Oh)を収録。 Elvish Words ・指輪物語内の架空のエルフ語から収録 Phrases ・キーごとのフレーズを収録
・CC1を使うことで、最初から鳴らしたり、
途中から鳴らしたりすることができる。Choir ・普通のコーラス音源 KeySwitch ・上記の内容をキースイッチで
切り替えながら演奏可能。
面白いと思ったのは、Phrasesですね。CC1を使って、同じフレーズを途中から鳴らすことができるので、工夫次第で色々なフレーズを奏でられます。
声が入るだけで楽曲の説得力が全く変わるので、積極的に使いたいところ。
Hollywood Fantasy Orchestrator
Hollywood Orchestra Opus Editionでも好評だった機能、Orchestratorの別バージョンです。(詳しくは、HOOEの記事で。)
右手でコード・左手でModホイールで音量を操作するだけで、すぐに楽曲が演奏される仕様です。
試しに、Amコード一発で次のとおりです。
迫力十分ですよね。
このパッチで言えば、ダルシマーのトレモロや、ビオラダガンバのスピッカートが良い味を出しており、本当に勉強になります。パーカッションも良いですね。
このように、各楽器の有効的な使い方を示してくれるのもOrchestratorの魅力です。
Voicesの声が入っているパッチもあり、説得力のあるサウンドが楽しめます。
Hollywood Fantasy Orchestra Bundle 私見
UVI World Suite2や、bestservice Ethno Complete Bundleなどの、他の民族楽器総合音源は、それぞれ300種類以上の楽器が入っています。
上記製品と比較すると、Hollywood Fantasy Orchestra Bundleの楽器数はかなり少ないと言ってもいいでしょう。
それでも、私が本製品を購入して感じたメリットは、3つあります。
- 他社の総合音源製品に比較し、丁寧に収録されている。
- Hollywood Ochestara Opus Editionとの親和性が高く、補完する構成である。
- 西洋風のアニメ・ゲーム音楽などの劇伴に向く。
他社の総合音源製品に比較して、丁寧に収録されている。
UVI World Suite2・bestservice Ethno Complete Bundleも、たくさんの楽器を収録しており、世界中の楽器を一度に手に入れられるという意味では素晴らしい製品ですが、一つ一つの楽器の表現への欲求が高い場合、「ムムム……」となることもあります。
リュートを使って、音質比較をしてみましょう。各音源のリバーブを切って試します。
各音源全く違う音質であることが分かると思います。
UVI World Suite2
World Suite 2の場合、中東エリアのリュートで2種類収録されており、その内のTunisian Luteの音です。
西洋のリュートとは少し、音質が違うでしょうか。UVIらしく太く近いサウンドです。
Tunisian Luteの場合は、ラウンドロビン・ベロシティレイヤーが使われておらず、連続して同じ音を打ち込むと、機械的に聞こえてしまう原因となります。キースイッチは2つで、Sustain・Tremoroが収録されています。
bestservice Ethno Complete Bundle
UVI World Suite2より、柔らかい音で収録されていますね。
Ethnoの場合、ベロシティレイヤー自体はないものの、ラウンドロビンが3種類入っており、Luteに関しては、World Suiteよりイキイキと聞こえます。
キースイッチは、Sustain・TrillほかLick(ギターで言う所のハンマリング)が4種類、計6つ収録されています。
>Ethno World 6 Completeの金額を確認する
Hollywood Fantasy Orchestra Bundle
Hollywood Fantasy Orchestra Bundleは、3ユニゾンのステレオ感のあるサウンドになっており、一聴するだけで説得力が違うのが分かると思います。
空気感も感じますね。これはマイクを複数重ねられることもあると思います。(今回はMain・Closeを混ぜたデフォルト状態です。)
このようにHollywood Fantasy Orchestra Bundleは、収録楽器数自体は少ないものの、一つひとつの楽器がかなり丁寧にサウンド処理されています。キースイッチも多く、表情を付けやすいでしょう。
●Luteのキースイッチ
今回の音源は、Perf Sus RRを使いました。
- Sus RRx4:バラツキのあるサスティンサウンド
- Dbl Hits RR:2回ヒット音のある奏法
- Perf Sus RR:整ったサスティンサウンド
- Tremoro:トレモロ
- HummerOn PullOff:弦を弾いてから押さえる・離す。
- Live 1 Vel Dbl:ベロシティが強いとダブル奏法になる。
- Live2 Sus Trem:トレモロのはじめにサスティン音をレイヤー
- Live3 Dbl Trem:トレモロのはじめにダブル音をレイヤー
- HummerOn PullOff Dbl:普通のハンマリング・プルオフだと、短三度以上離れると音が鳴らないが、このプリセットだと和音で鳴らせる。
Hollywood Orchestraシリーズは、RRx4ならラウンドロビン4回など、名前に独自の短縮法が使われているため、最初の内は混乱するかと思います。
プリセット選択画面に説明が書いてある場合も多いので、参考にしましょう。
Windowsであれば、Caputure2Textという画像OCRソフトで文章をコピーして、DeepLで翻訳するのが楽です。
Eastwest Hollywood Ochestaraとの親和性が高い。
Eastwest同社のHollywood Ochestara Opus Edition(以下、HOOE)は、ハリウッド映画で流れるような迫力のあるサウンドが得意な音源です。
その別バージョンである本作:Hollywood Fantasy Orchestra Bundleは、HOOEと同じスタジオで収録されており、余計なMIX作業も必要なくサウンドがまとまるように作られています。
メイン音源がHOOEの方にとっては、非常に魅力的でしょう。
HOOEには含まれていなかったコーラスが含まれているのも大きいですし、パーカッション類の追加も嬉しいところです。
ハイストリングス・ローストリングス・ローブラスなどは、普通のオーケストラ楽曲でも、時短の役に立ちそうです。
西洋風のアニメ・ゲーム音楽などの劇伴に向く。
Hollywood Fantasy Orchestra Bundleの大きな特徴として、西洋ファンタジー音楽向けの楽器を収録しているということです。
他の民族楽器総合音源は、西洋ファンタジーに向く楽器を探し、一通り立ち上げるだけでも一苦労です。音色探しの手間が少ないのは大きなメリットでしょう。
また、自動演奏機能のOrchestratorも素晴らしく、簡単にアイデア出しが可能ですし、楽曲の一部分を任せてもOKですね。(私も提出する制作物で使うことがあります。)
製品比較まとめ
まとめます。
Hollywood Fantasy Orchestra Bundleの大きな特徴の一つは、ユニゾンされた音が多く収録されていることです。
反面、例えばソロのリュートを使いたい時には、そもそも音が収録されていません。逆に言えば、ステレオ感のあるサウンドは唯一無二です。一つの楽器を演奏するだけでとにかく物凄い説得力を覚える音にしあがっています。
またキースイッチによる表現力に優れ、Studio Oneの場合は、立ち上げただけでサウンドバリエーションレーンに自動的にキースイッチが表示される機能も見逃せません。(ほんと楽。)
収録楽器数が少ない分、丁寧に処理されたサウンドですから、Hollywood Fantasy Orchestra Bundleに含まれている収録楽器を使いたい方には、とても魅力的な製品でしょう。
使用上の注意点
【注意1】リバーブが超重要
EastWest AcademyというYoutube公式動画シリーズの中でも語られていますが、オーケストラ音源はリバーブが超重要です。(このシリーズは、相当勉強になりおすすめ。)
リバーブを使わないと、わりとしょぼい音源に感じてしまうのですが、リバーブを使うと一気に壮大で素晴らしい音質になります。
外部リバーブを使う場合は、Opus内のリバーブをオフにするのを忘れないようにしましょう。(リバーブ直列二重がけは、濁りの原因となることがあるため。)
【注意2】キースイッチ楽器は、単独のOpusで立ちあげる。
Opusは、複数の楽器を一度にたくさん立ち上げられます。
が、CPU分散の観点から、1楽器1Opusで立ち上げるのをおすすめします。
特に、キースイッチをたくさん含むパッチは、CPU負荷の問題が出てくる場合があるので、守った方が懸命です。
【注意3】勉強は必要
民族楽器音源の宿命ですが、新しい楽器を使う場合は、勉強が必要不可欠です。
購入したからといって、すぐに自由に西洋ファンタジー音楽が書けるようになるわけではありません。Orchestratorのおかげで楽できる部分はありますけどね。
今は、Youtubeで楽器名を検索するだけで実際の演奏動画が見られます。動画を一度見るだけで、インスピレーションの湧き方が変わると思います。
Orchestratorを使っての研究も良いですね。
CPU負荷
1楽器1Opusを守れば、わりと軽快に使えると思います。
●PCスペック
- OS:Windows10 64bit
- CPU:AMD Ryzen 9 3900X [3.8GHz/12Core]
- メモリ:96GB
- DAW:Studio One6.5
- サンプリングレート・解像度:48kHz・32bit float
- バッファーサイズ:1024samples
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Discrete4
まとめ
以上が、Hollywood Fantasy Orchestra Bundleのレビューです。
とにかくユニゾンで収録された美しいサウンドの説得力が全てです。
収録された楽器の中で使いたい楽器がある場合は、即戦力として役に立ってくれるはずです。
>Hollywood Fantasy Orchestra Bundleの金額を確認