Toontrack State of the Art SDX レビュー あるべくして、あって欲しい音。
State of the Art SDXは、Toontrackのハイエンドドラム音源Superior Drummer3の拡張音源です。ライブやシネマ・サウンドで数々の受賞歴のあるエンジニアであるエリオット・シャイナー氏が監修しました。
- 特にフュージョン・カントリー・ポップスに合うサウンド
- 名盤のサウンドがそのまま収録
- 収録MIDIグルーブは、BPM60~116。
サウンドを聴きながら、State of the Art SDXに迫っていきましょう。
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サウンドを聞いてみよう。
State of the Art SDXの構成について
State of the Art SDXは、ニューヨーク州北部にあるクラブハウスというレコーディングスタジオで録音されました。
3つの部屋があり、合計8つのドラムキットが収録されています。
- Live Room:一番広い部屋で収録
- Studio Iso:繊細でドライでタイト
- The Library:壁が本棚。暖かく親密な響き
監修のエリオット・シャイナー氏の理想の再現が、State of the Art SDXのコンセプトとなっています。
Live Room
- Craftsman Kit:ビンテージとモダンの両方を実現
- Firebird Kit:現代のドラム製作の傑作
- Teardrop Kit:50~70年代のドラム黄金時代を現代風にアレンジ
一番広い部屋で収録されたというLive Roomのプリセットを最初に触った時は、正直な所、「意外と地味……?」という印象を受けました。
しかし、ドラムパターンに合わせてアコギを弾いて、その印象が一気に吹き飛びました。上モノ・ドラムの馴染みと抜けのバランスが、とんでもなく良いのです。ボーカルを入れてみましたが、邪魔でも、物足りなくもありません。
まさに、あるべくしてあって欲しい音。
太く芯があり、でも暑苦しくはない。絶妙なバランスだと思います。
さすが、名前のとおり。State of the Art=最高水準(最先端)。
今回のサンプル楽曲では、エリオット・シャイナー氏の「Craftsman – Room」というプリセットを、EDITをせず、そのまま使っています。
ドラムパターンも、収録されているMIDIを使いました。収録MIDIのテンポは、60~106と、スローからミディアムテンポを想定しているようですね。
Studio Iso
- Artisan:小型のCraftsmanKit(ジャズ・ソウル・ヒップホップなど)
- Burgundy:ロック・ポップス向け。パワフルで温かみがある。
- Moonlight:ヴァン・モリソンのアルバムにインスピレーション
- Combo:アコースティックフォークロック・アメリカーナ向け
続いては、中くらいの部屋のStudio Isoです。
一聴して、めちゃくちゃ良い音だな。と思いました。
耳に良い具合で食い込んでくるアタック感が、たまらなく気持ちがよいですね。こちらもエリオット・シャイナー氏のプリセットをそのまま使っています。
エリオット氏のプリセットは、Dryと名のついたもの以外はほとんど、スネアにPlate Reverbが(私の感覚からするとわりと)深くかかっています。その一方で、ハイハットは、部屋鳴りも少なくかなりドライなプリセットが多い。
「スネアだけ、やけにウェットな気がするような……?」と思いましたが、やはりオケと合わせた時に、スネアの余韻がちょうど良くなるようにセッティングされています。
これが名エンジニアのミックスなんですね。
The Library
こちらは壁に本棚が設置された部屋で、程よい吸音がなされ、温かく親密な響きが特徴です。
- Midnight:スティーリー・ダン「Aja」にインスピレーション
スティーリー・ダンの「Aja(エイジャ)」は、歴史的名盤と名高い一枚で、Libraryは「Aja」にインスピレーションを受けて作られています。
今度は、エリオット・シャイナー氏のTight More Reverbというプリセットです。
こちらも、スネアの他、Tom・OHにもPlate Reverbがインサートされています。
他のSDXでは、センドされているプリセットの方が多いと思います。エリオット・シャイナー氏のミックスの癖が垣間見えますね。SDXの楽しい部分の一つです。
Elliot Scheinerとは?
Elliot Scheinerの概要
State of the Art SDXを監修しているエリオット・シャイナーは、どんな人物なのでしょうか?
スティーリー・ダンの「Aja」など、数多くの不滅のアルバムのサウンドを形作り、合計91枚のプラチナ認定レコードと14枚のゴールド認定レコードを手掛け、グラミー賞に25回ノミネート(うち8回受賞)、エミー賞に4回ノミネート(うち2回受賞)、TEC賞に3回ノミネートされ、TECの殿堂入りとサラウンド・パイオニア賞の受賞者でもあるエリオット・シャイナーは、音楽レコーディング業界の伝説にほかなりません。
受賞歴で見ても凄まじいものがあります。
CD作品だけでなく、映画・舞台作品・ライブ・コンサートなどでもアイコニックな存在とのこと。
エリオット・シャイナー氏が携わった作品紹介
Van Morrison「Moondance」 1970年
Studio Isoに含まれるMoonlight Kitは、ヴァン・モリソンにインスピレーションされているキットです。
steely dan「Gaucho」1980年
傑作「Aja」は既に紹介していますが、その次作である「Gaucho」も、エリオット・シャイナー氏がエンジニアとして携わっています。
物凄く良い曲だ……。それはともかく。
ドラムの音は「まさに」という感じです。State of the Art SDXに収録されている音は、かなり近いと思いますね。
Boz Scaggs「Come On Home」1997年
ドラムの音が良く聞こえる一曲をご紹介。
State of the Art SDXに触れた後だと、「エリオット・シャイナー氏の音だ!」と感じます。
Aerosmith 「Nine Lives」1997年
ロックも携わっています。
ただ、State of the Art SDXが、ごりごりにロックのライブラリかというと、できないこともないのでしょうが、他のSDXの選択肢もあるようにも思います。
Madeleine Peyroux「Let’s Walk」2024年
ToontrackのHPで見られる最新のエンジニア作。
優しく温かな音作りを聞くことができます。
State of the Art SDXは、Stick・Brashe・Wire Offのスネアも対応しています。ジャズ系の楽曲にも使えそうですね。
他のSDXとの比較
他のSDXについては、Superior Drummer3のレビュー記事にまとめています。
CPU負荷
普通です。他のSDXと変わりありません。
メモリ使用量も、確認した限りは、1.5~4.5GBほどで、10GBを超えるStories SDXに比べると、比較的軽いです。
- OS:Windows11 64bit
- CPU:AMD Ryzen 9 3900X [3.8GHz/12Core]
- メモリ:96GB
- DAW:Studio One6.6
- サンプリングレート・解像度:48kHz・32bit float
- バッファーサイズ:1024samples
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Discrete4
まとめ
以上が、Toontrack State of the Art SDXのレビューです。
特に、フュージョン・カントリー・ポップスあたりに向くSDXかと思います。ドラム単品の出音より、オケに合わせた時の化け方に、非常に驚きました。また、カラッとしたサウンドは、私的には”物凄く”大きな刺激になりましたね。
エリオット・シャイナー氏が、Toontrackの公式ビデオの最後で、こう述べています。「彼ら(ユーザー)が、これを使って本当に素晴らしいサウンドの音楽を作ってくれることを願っています。」
今までなかった所を補完する素晴らしいSDXだと感じます。
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