コードの音の重ね方:ボイシング・ボイスリーディング
音楽理論

コードの音の重ね方:ボイシング・ボイスリーディング

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サムネイル画像:コード理論初級編 ボイシング・ボイスリーディング

本記事は、コードの音の重ね方(ボイシング)について解説します。

例えば、コードC一つとっても、構成音ドミソをどのように配置するかで、音の印象が変わります。ボイシングを工夫して、あなたの作る曲をグレードアップさせましょう!

実践で使える技もご紹介します!

シリーズ紹介

本記事はシリーズ記事です。

初級編では、音楽知識0からコードにメロディーをつけることを目指します。

ボイシング・ボイスリーディングとは

ボイシングとは、コードの構成音の重ね方のことを言います。

次のコード進行を見てみましょう。よくあるコード進行ですが、聴いてみると違和感を覚えるのではないかと思います。

構成音がコードごとに大きく動き、どうにも落ち着かない印象があります。

このようにコードが変わる時の構成音の動きボイスリーディングと言います。ボイスリーディングがスムーズになるように、配置し直してみましょう。

すごく自然に聞こえますよね。コードが変化しても、最小限しか構成音が動いていないためです。

このように、ボイシングを工夫して自然にすることは、作編曲でとても大切です。

ボイシング

ボイシングは、大きく二つに分けることができます。分け方は、コードの構成音が、1オクターブ以内に収まるかどうかです。

  1. 1オクターブ以内:クローズドボイシング
  2. 1オクターブ以上:オープンボイシング

1.クローズドボイシング

1オクターブ以内に収まるボイシングを、クローズドボイシングと言います。

同じコードCでも、ドミソ・ミソド・ソミドと、並べ方を変えることができます。このように、構成音を並べ変えることを転回と言います。

コードCの転回 基本形:最低音がR(ルート)のド 第一転回形:低いドをオクターブ上げ、最低音がミになった形 第二転回形:低いミをオクターブ上げ、最低音がソになった形
基本形 → 第一転回形 → 第二転回形

三和音であれば、基本形・第一転回形・第二転回形の三種類です。(四和音であれば、第三転回形もあります。)

先程のコード進行の、コード上部を見てみましょう。

スムーズな進行になるように、転回系を駆使していることが分かります。

この譜面は、コード下部も含めて見てみると、構成音が1オクターブ以上あります。ですからこの譜面は、全体で見るとオープンボイシングです。

2.オープンボイシング

構成音が1オクターブ以上離れているボイシングを、オープンボイシングと言います。

また、オープンボイシングの中でも、先程紹介した譜面のようにコードが部分的にクローズドボイシングになっているものと、そうでないものがあります。

オープンボイシングの解説 一部クローズド型:どこかに三度堆積がある 全部オープン型:三度堆積がどこにもない

全部オープン型の方が軽く、余裕のある響きに聞こえます。

「一部クローズド型」「全部オープン型」というのは、私が個人的に分類したものなので一般には通じません。ですが、楽器ごとにどのようなボイシングをするのか把握することで、作編曲の際に役に立ちます。

一部クローズド型

ピアノやギターでコードを弾く時は、一部クローズド型がほとんどです。

ギターのコードの構成音を見てみましょう。同じコードCでも、様々なフォームがあり、ボイシングが変わります。

ギターのフォームによるボイシングの違い ローコードのC:ドミソドミ:隙間なく構成音を敷き詰めており、どっしりとした印象に。 A型のC:重心が高音に移動して、少し軽やかな印象に。

どのフォームを選ぶのかも、その人のセンス・個性です。

全部オープン型

バイオリンやチェロなどの、ストリングス楽器のアレンジでよく行うボイシングです。開放的な響きがします。

ストリングスのボイシングの例:CM7 Am7 Dm7 G 音程の間隔を広く取ると、開放感を演出できる。

トップノート・最低音・内声音

コードの構成音は3つに分けることが出来ます。

  1. トップノート:一番高い音
  2. 最低音(ベース音):一番低い音
  3. 内声音:それ以外の音

①と②を合わせて、外声音と呼びます。人間の耳は、内声音より外声音を聞きとる方が得意だと言われています。

ボイシングを考える時には、特にトップノートにこだわると、一段上の演奏・編曲ができるようになります。

使える!ボイスリーディングの技

1.トップノートの動きにこだわる

あえてトップノートを維持する

トップノートを変えず、ルートと内声だけを変えることで、印象の変化がゆるやかになり、切ない感じを演出することが出来ます。

この例では、FM7の時に、切なさが増しているように感じられませんか?

構成音の一部を残したまま進行することをペダルポイントと呼びます。中でも、トップノートを変えない場合は、ソプラノペダルポイントと言います。

簡単にかっこいいコード進行が作れるので、ぜひ活用しましょう。

【ギター】トップノートに応じてコードフォームを選ぶ

今度は、逆にトップノートを動かすパターンを見てみましょう。

TAB譜(トップノートでギターのフォームを選ぶ例) FM7 G7 Em7 Am7 トップノートがミからファ、ファからソ、ソからミと動いている。 Em7のフォームは、6元から020030、020000が多いが、このフォームでは、トップノートをソにできる。

このように、同じコードでも色々な押さえ方を知っていると役に立ちます。トップノートに応じたコードフォームを選んで、動きのある演奏をしてみましょう。

2.あえて音を抜く

あえて音を抜くことで、すっきりとした印象にすることができます。

楽譜(あえて音を抜く例) FM7 Em7 FM7 Em7 灰色の構成音(三度の音)を抜くことで、スタイリッシュな印象に。
音を抜かないままの音源
音を抜いている音源

FM7からは、3度の音であるラの音を抜いています。コードの基本でも解説しましたが、3度の音は明暗を決定する音です。あえて、3度の音を抜くことで、スタイリッシュな印象になります。

音を抜かない方が好きだという人もいると思います。正解・不正解はないので、表現したいものに即したボイシングを考えましょう。

参考

3度の音を抜いた構成音ファドミのコードを、FM7と表現していいの? と思われる方もいるかもしれません。

例えば、作った曲を他の人に演奏してもらう時に、FM7と記した場合は、ラを入れて演奏してしまうでしょう。

それが嫌な場合は、FM7(omit3)と記す方法があります。omitは「省略する」という意味なので、FM7から3度の音を抜いていることを表します。

3.コードを分散させる

コードの構成音を一度に弾くのではなく、分けて弾くことでも印象は変わります。

楽譜(コード分散の例) CM7 Am7 FM7 G 構成音を分散して演奏するだけで、全く印象が変わる。

1小節目、CM7の構成音はドミソシです。

上段の動きは、「シーミソーーーミ」。下段が「ドソーーーーーー」です。鳴っている音を全部合わせると、ドミソシになっていますよね。つまり、1小節全体でCM7の構成音を鳴らしているわけです。

このような手法を、分散和音アルペジオと呼びます。(逆に、一度に全ての構成音が同時に鳴ることを同時和音と言います。)

わたなべ
わたなべ

上記の楽譜では、とある工夫をしています。それは、七度の音から始めていること!

これにより、M7(長七度)のオシャレさや、m7(短七度)のはかなさが強調されています。

構成音を弾く順番を変えると、印象も大きく変わるので、色々と試してみましょう。

ボイスリーディングの注意点

本記事では、メロディーがない状態で、ボイシングを動かしていますが、歌モノ楽曲を作る場合、伴奏が歌のメロディーの邪魔をしないことが大前提です。

トップノートを動かしすぎて、歌が目立たなくなる……というのは、本末転倒です。

歌と伴奏が絡み合い、引き立て合うのが一番ですが、最初の内は、歌を邪魔しないボイスリーディングを考えることを目標にしましょう。

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まとめ

以上が、ボイシング&ボイスリーディングの解説です。

「どの教本・WEBページよりも分かりやすく」を目標にして書いています。

次の記事では、作ったコード進行にメロディーを付けてみましょう。

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プロフィール
渡部絢也
渡部絢也
作編曲家・シンガーソングライター
「地方にいながら、音楽でご飯を食べる」で早15年。東北秋田で田舎生活をしながら、音楽にいそしむ。メイン楽器はアコギ。歌も歌うDTMer。

・音楽制作依頼(舞台音楽・CM楽曲等)
・ブログ運営(音楽理論&プラグイン解説)
・教材販売
・ファミリー向けの作品づくり
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