Arturia Pigments 5 レビュー 視認性・操作性抜群のシンセサイザー
Arturia Pigments5は、視認性・操作性に優れたシンセサイザーです。
ウェーブテーブルはもちろん、サンプル&グラニュラー、最新のアディティブ(加算合成)エンジンなども搭載した幅広い音作りができます。
シンセサイザー初心者へのおすすめはもちろん、玄人までうならせるPigmentsを、サウンド・動画付きでレビューしていきます。
本記事は、Pigments3の時点で執筆したものです。
Pigments5へのアプデ内容についての追記はこちらです。
Pigmentsのサウンド
プリセットを使ってみた。
検証用に16小節の楽曲を作りました。Pigmentsを使っているのは、5トラック。
- Lead1
- Lead2
- Sequence
- Pad
- Bass
ドラムは、UVI DrumDesignerを使っています。
Pigmentsに入っているプリセットの音は、温かいものから、ギラついているものまで、様々。
定番っぽい音から、エグい(どうやって使えば?レベルの)ものまで、色々収録されていますが、エレクトロニカなどで使われるような柔らかめのサウンドは特に多い印象です。
音作りの幅はかなり広いですね。
後述しますが、エンジンの種類も多く、モジュレーター・アルペジエイター、どれも視認性が良いです。そして、エフェクトの質もかなり良いです。
プリセットをいじる派の方にとっても、簡単にカスタマイズできるのは、大きなメリットだと思います。
自分で音作りしてみた。
こちらは1から音作りをしてみた例です。Pigmentsを使ったのは3トラック。
- Sequence
- Chord
- Bass
Sequenceでは、シーケンス機能を活用しています。
実際の設定を見てみましょう。
LFOの設定でUnipolarを選択すると、1方向にだけ動くようになります。そのために、レートが下がる方向にだけ動いています。
Syncレートを動かすことで、拍頭がポリリズム的にどんどん変わっていくのが面白いですね。
アルペジエイター・シーケンス機能自体は物凄くシンプルな作りですが、工夫次第で自分が思ってもみないようなサウンドを簡単に作ることが出来ます。
ブリブリとしたベースもFM変調をさせたもので、簡単に作ることができました。
Pigmentsの良いところ紹介
全てを紹介しきれませんので、各セクションの「良いな!」と思った所をかいつまんでご紹介していきます。
プリセット – サクサク検索
画面上部にある本のようなマークを押すと、プリセット検索画面に移ります。
プリセット画面を開いたら、Type・Style・Banksで絞り込みができます。
- Types:Bass・Padなどの、音のタイプを選択。
- Styles:曲のジャンル・音の特徴などを選択。
- Banks:PigmentsのVer毎のプリセット・ストアで買ったプリセットなどを選択
この絞り込みがあるため、簡単に自分のイメージ通りの音を検索することが出来ます。
同じようなことはOmnisphere2でも出来るはずなのですが、Pigmentsは動きが軽快なこともあって、サクサク検索できます。(Omnisphere2はプリセットが多すぎるのもあるかも。)
Storeでプリセット追加
Pigments内で、プリセットの追加ができます。
64プリセットで$15。結構高価な気がしますが、各バンクで8つほどプリセットの試しができるのは、大変ありがたい機能です。ビビッと来る音があれば、買っても良いでしょう。
バンクごとに、音の方向性がまとまっているのも、使いやすいと思います。
initializeの仕方
Pigmentsをまっさらな状態にする方法です。お恥ずかしながら、私が探し回ってしまったので、記しておきます。
5種のエンジンで死角なし
Pigmentsの言うエンジンとは、音を鳴らす大本になる部分です。
Pigments3.5時点では、5つのエンジンが搭載されています。
- バーチャルアナログ:アナログエミューレション。シンセの基本的な波形。
- ウェーブテーブル:連続した波形データを使って、音色の変化を楽しめる。
- サンプル&グラニュラー:サンプルを扱える。楽器だけでなく、フィールドレコーディングの音、フォーリー(効果音)なども収録されています。
- ハーモニック:アディティブ(加算合成)シンセ。サイン波を足し合わせて音を作る。金属的な音が作りやすい。
- ユーティリティ:ノイズ2種とオシレーター。サブベースとして、オクターブ下の音追加したり。
組み合わせることで、ありとあらゆる音が作れます。
【動画】サンプル素材を使った変調
モジュレーション(変調)という波形に波形をかけ合わせて音を作る機能があります。
この機能自体は他のシンセにも入っているのですが、中でもPigmentsがすごいのは、サンプル素材(オーディオデータ)をかけ合わせることができる所です。今まで聴いたことのない音を簡単に作りだせます。
変調の様子をビデオに撮ってみたので、参考になりましたら幸いです。
この動画では、変調素材にオルゴールの音を選びました。
Pigmentsには、街のざわめきやノイズ、パーカッションなど、様々なサンプル素材が最初から入っているので、思いがけない音をすぐに作り出せます。
モジュレーション – 視認性・操作性が抜群
モジュレーションの視認性と操作性が凄まじく良いです。
例えば、下記画像。
確認が物凄く楽です。
各種ノブにモジュレーションをかける方法は3種類あり、どれも超直感的。
*モジュレーションのかけ方については、先程の動画内でもご確認いただけます。
エフェクト – 質が高く、簡単に良い音に。
エフェクトも質が高いものが入っています。
中でも、私はDistortionがお気に入りです。温かいサウンドから、ピコピコ・ギザギザにも。適当にかけても、非常に音楽的で、良い音になります。
また、Pigments内でセンドリターンすることも可能です。
日本語マニュアル・Pigments内のチュートリアル
Arturiaのホームページで、Pigmentsの日本語マニュアルがダウンロードできます。こういうフォローもありがたいですよね。
Pigments内にはチュートリアルがあり、初めてPigmentsを触る方には大変参考になります。
英語なので、何となく大体は分かるのですが、「ん?」という時は、外部の翻訳ソフトを使ってもいいでしょう。
私は、capture2textという、画面上の英字をテキスト化するソフトと、翻訳ソフトはDeepLを使っています。
Pigments私見 – とにかく操作しやすい!
今回、プリセットでサンプル楽曲を作ったり、いくつか自分でサウンドデザインをしながら思ったのは、とにかく操作がしやすいということ。
モジュレーション操作が分かりやすいのはもちろん、エフェクト・フィルターの効きが素晴らしいので、自分の思い通りの音を作ることができます。
そして、クロスモジュレーションの項の動画でも説明しましたが、自分が思ってもいないような音が、少しのツマミ操作で簡単に生まれる。
つまり、
- 思うようなサウンドメイク
- 思ってもみないサウンドメイク
どちらも自分の裁量で、簡単に操作できる! 自分の想像を飛び越えるサウンドが生み出せるワクワク感がありますね。
MassiveXなどに比べても、動作が軽く気軽に試せるのがすごく嬉しいですね。
アップデート
Pigments 5へのアップデート(2024/1/14追記)
先に言っておくと、総じて地味なアプデだと感じました。
最初からPigmentsが完成度の高いシンセだということの裏返しであるとも思います。
プリセット画面が見やすくなった。
今まで見にくかったプリセットの簡易選択画面が、見やすくなりました。
本棚ボタンを押すと、タグ検索ができるのは今までどおりですが、簡易的にさっさと選びたい時には、こちらの方が便利です。
シーケンサー・アルペジエイターへのランダム機能追加
サイコロを使って、ランダムにシーケンスを作れるようになりました。
スケールとノートの使用確率を指定することも可能です。
オーディオのサイドチェイン入力ができるようになった。
別のトラックから、サイドチェイン入力できます。
が、どういう使い方ができるか、いまいち分かりません。
今のところ思いつくのは、
- Pigments内のエフェクトを使う。
- シーケンサーを使って、Slice的に使う。
シーケンサーでゲート的に使っているわけですが、これなら自分でスライスした方が面白いことが出来そうな気もします。
Wavetableの追加
Wavetableが70個追加されています。
自分で音作りする人には嬉しいでしょう。
私も作ってみました。
CPU負荷の軽減
設定からMulticore Onにすると、CPU負荷が下がるようです。
14%ほどあったプリセットが、11%まで下がったのを確認できました。
Play画面にビジュアライザーが追加に。
きれいですが、私的には使う場面はなさそうです。
アプデへの費用
アプデ自体は無料ですが、新プリセット追加には19ドルかかる形になりました。
アプデまとめ
というわけで、既存ユーザーからすると、地味なアプデです。
プリセット選択がしやすくなったのは良いですね。
魅力的なシンセであることは間違いないので、新規ユーザーには引き続きおすすめです。
Pigments4へのアップデート(2022/12/14追記)
- pigments4アプデ内容
-
2022年12月13日、Pigments4へとアップデートされました。変更点は以下の通り。
見た目の強化
- プレイモードの追加
- スキンの追加:ライトモード
プレイモードという、全体像を視認しやすいモードが追加されました。
私的には、普通の見た目(Synthタブ)で十分見やすいので、そこまで嬉しいアプデ内容ではありません。(かえって、少し煩雑になったような気さえする。)
エンジン強化
- ハーモニックエンジンにランダム化するオプション追加
- UnisonコントロールがWavetable・Sampleで統一されました。
- Mod Oscで、レシオオプションが拡張されました。
モジュレーション強化
- モジュレーションをドロップ&ドラッグで追加可能に!
- シンクモードが新しくなりました。
これは素晴らしい強化内容です。
元々、アサインの仕方が2種類あったのが、3種類になったことになります。一番直感的なアサインが追加されましたね。
また、シンクモードに、ストレートオンリー・3連符オンリーなどが増えました。
エフェクト・フィルター
- 画面上部のタブ上で、FX全てをON・OFFできるようになりました。
- Shimmer Reverb・Super Unison追加。
- Bitcrusherに、ジッター・スケール・ダウンサンプリングを追加。
- ディストーション・マルチフィルターのEQにノッチモード追加
FXタブに移動することなく、ON・OFF可能になりました。
Shimmer ReverbとSuper Unisonが追加になりました。
0から音を作ってみたので、ON・OFFで聴き比べてみましょう。
どちらも使い勝手が良く、品質も大変好ましいです。
プリセット・波形・サンプル関連
- ファクトリープリセットが増えました。
- 63種類のウェーブテーブルが追加。
- 67種類のサンプルを追加。
CPU負荷
選んだプリセットやオシレーターの数・種類で変動があります。
動作自体は、シンセの中では機敏な印象を受けます。
●PCスペック
- OS:Windows10 64bit
- CPU:AMD Ryzen 9 3900X [3.8GHz/12Core]
- メモリ:96GB
- DAW:Studio One6.5
- サンプリングレート・解像度:48kHz・32bit float
- バッファーサイズ:1024samples
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Discrete4
まとめ
以上が、Arturia Pigmentsのレビューです。
日本語マニュアルもありますから、シンセ初心者の方にもおすすめできるシンセサイザーです。
アップデートもよく行われていますし、今までは無料でアップデートできたので、今後の成長も期待できるシンセサイザーです。