Eventide Tverbレビュー 音に存在感を与えるリバーブ
Eventide Tverbは、ドイツのハンザスタジオをシミュレートしたルームリバーブVSTプラグインです。
Tverbは、音に存在感を与えます。
私の一推しプラグインです!
この記事を読み終えた頃には、Tverbが欲しくてたまらなくなっているはず!
Tverbの特徴
Tverbの音を聞こう!
今回は検証用に、ドラム・ベース・トランペットのシンプルな4小節の楽曲を作りました。
今回Tverbを使うのは、トランペットです。音源は、AcousticSamples Vhorns。
Vhornsは、とてもリアルな音源です。しかし、音源内のリバーブを使うと、どうも他の音源との馴染みが悪いように思うのです。そこで今回は、まず3つの音源を聞いて頂きます。
- Vhornsの音源内リバーブ使用
- ドライ音(Vhorns音源内のリバーブを切る。)
- ドライ音にTverbを使用
という、3つの音源を聴き比べてみます。
いかがでしょうか?
①の音源のトランペットの馴染みの悪さ、伝わりますか? 機械的というか、打ち込み臭がするというか、ドラム・ベースと調和せずに聞こえる感じがします。
②は、まんまドライ音ですね。
③で、驚かれた方もいるのではないでしょうか? まるで部屋での演奏を収録しているかのような音に仕上がっています。これがTverbの力なのです!
今回使ったのは以下のプリセットで、トランペットのトラックにインサートして使っています。(*使い方自体は、後段で説明します。)
このように、馴染みの悪い音源をドライ音にしてTverbを使うと、本物の演奏をしているかのように説得力を持たせることができます。これが、音に存在感を与えるリバーブの意味です。
ある意味Tverbは、サウンドデザインとしてのリバーブとも言えますね。
リバーブの効きを良くするリバーブ
Tverbを普通のリバーブのように、もっと長いディケイタイムで使うこともできますが、割と地味な効きになります。
次の音源は、ディケイタイムを2.4sと伸ばしたもの。
普通のリバーブで2.4sだともっと濃密にかかりそうなものですが、物凄く地味な効きです。これはこれで問題なく使える音です。
しかし、もしももっと濃密で長いリバーブが必要な際には、Tverbを短いディケイタイムで使い音の存在感を高めた上で、他のリバーブを重ねて使う方法がおすすめです。
次は、Tverbを短いディケイタイムで使用している③の音源に、Fabfilter Pro-Rを重ねたものです。
この時、Tverbを切ると、存在感や音の深みがなくなるのが分かります。
若干、⑤の方が太く芯があるように聞こえるはずです。微細な差に感じるかもしれませんが、トラックを増やしていくと露骨に差が生まれてきます。
このように、サウンドデザインとしてTverbを使うと、打ち込み音楽でもより説得力・情感のあるサウンドが作れます。
Tverbは言わば、リバーブを活かすためのリバーブでもあるのです。
部屋鳴りを追加する。
また、トラックの中で音を引っ込めたい時に、Tverbにはあるおもしろい機能が付いています。
そもそもTverbは、普通のリバーブプラグインとは見た目も大きく違いますよね。マイク3本を組み合わせて使います。
マイク2・3は、部屋内をドラッグして自由に動かすことができますが、中央のマイク1は動かすことができません。
これはマイク1が、声や楽器を近くで収録する目的で立てられたマイクを再現しているからです。しかし、マイク1にはマイクの種類を変えられるという大きな特徴があります。
- Omni(無指向性):部屋鳴りが多く追加される。
- Cardioid(指向性):一番クリーンに。
- Figure 8(双方向性):部屋鳴りが、少し追加される。
Tverbは、ハンザスタジオという有名なスタジオをモチーフに作られたリバーブですが、ハンザスタジオの部屋鳴りを再現できるというわけですね。
試しに、指向性・無指向性マイクを切り替えて聞いてみましょう。
⑦の方が、滲んだサウンドになっています。
この機能を使うことで、目立ちすぎて後ろに置きたいトラックを滲ませて、思い通りの位置にミックスする使い道などがあります。
Sunset Studio Reverbとの比較
競合するリバーブとして、Sunset Studio Reverbがあります。 Sunset Studio Reverbでも存在感を追加するリバーブタイプがありますので、聴き比べてみましょう。
⑧の方が中低域辺りに特徴がありますね。③の方がすっきり。
正直、好みになってくる部分もあるのですが、Sunset Studio Reverbは、挿していくつかプリセットを試して合わなかったら外すタイプのプラグインです。(その分、合う時はとても合う。)良くも悪くもサンセットスタジオの音の再現に特化しています。
音に存在感を増す用途としては、Tverbの方が癖が少なくて、どんな音源にも馴染む汎用性が高いイメージです。
Tverbの操作の仕方
大まかな使い方
MIC1は、ドライ音を担当しています。コンプをかけることも可能です。Tverbをインサートして使う場合は、MIC1をONにして使います。BUSにセンドで送る場合は、MIC1をMuteすればOK。
MIC2・3は、リバーブ感を担当し、部屋の中をドラッグで移動させることができます。またGATEをかけることができ、ゲートリバーブを再現できます。
マイク
Mic1:ドライ音を変化させる魔法のスイッチ
MIC1をソロモードにして、指向性・無指向性マイクを切り替えた時の周波数特性は、下記のようになります。
真ん中のピンク色が指向性マイクです。無指向性マイクは、波々とカーブを描いていますね。音が滲むだけでなく、ハンザスタジオの特性が音に反映されるイメージです。
ちなみに双方向性は、無指向性マイクと同じ波の形ですが、もう少し影響が小さく(波の上下の幅が狭く)なります。また、マイク1に対するローカット・ハイカット機能も付いています。
- ローカット:150Hz以下を12dB/オクターブで減衰させます。
- ハイカット:8,000Hz 以上を 12 dB/ オクターブ減衰します。
Mic2&3
部屋の中を自由に動かすことが出来ます。
例えばマイク2を左に移動させると、下のコンソール部分でパンを振らなくても、若干左から聞こえるようになります。
コンソール部分でより左右に広げることで、ステレオ感が増す仕組みです。
コンソール画面
ROOM:部屋の調整
ROOMセクションはリバーブ音に対するコントロールではなく、部屋自体を調整するパラメーターです。他のリバーブのように使うと「効きが悪くて変だな?」と思うかも知れません。
例えば、Decayを短くするのは、部屋の壁に吸音材を仕込んだりして、ディケイタイムが減るようなイメージです。
Diffusionで、リバーブの拡散具合を調整できますが、これも変化がとても地味。
COMP&GATE
マイク1には、コンプレッサーを使えます。ハードニーでガッツがでる感じのコンプです。
マイク2・3にはゲートが使え、ゲートリバーブを再現できます。
コンプ・ゲートでどういう音を作れるか聞いてみましょう。ドラムのスネアにかけてみます。
ザ・ゲートリバーブ!って感じの音ですね。コンプも良い感じでガッツを与えています。
CPU負荷
多少CPUは食いますが、動作自体は軽快です。
●PCスペック
- OS:Windows10 64bit
- CPU:AMD Ryzen 9 3900X [3.8GHz/12Core]
- メモリ:64GB
- DAW:Studio One5.4
- サンプリングレート・解像度:48kHz・32bit float
- バッファーサイズ:512samples
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Discrete4
まとめ
以上が、Eventide Tverbのレビューです。
音に存在感を与えるのは、打ち込み音源だけではなく、生演奏した録音データがドライ過ぎる場合などにも有効です。
一つ一つのトラックに存在感を与えることで、説得力のあるミックスとなります。
ぜひ導入をご検討下さい!