Toontrack Session Organ EKX レビュー オルガン音源の超新星
Toontrack Session Organ EKXは、ハモンドオルガンB-3をToontrackならではの視点で音源化した製品です。(*EZ keys2への拡張音源)
- とても音楽的なサウンド。(ロータリースピードの変化の仕方が超気持ち良い!)
- 動作がとにかく軽い!
- オルガンの打ち込みの補助やヒントがたくさん。
他社製品とも比較しながらSession Organ EKXに迫っていきます。
サウンドを聞いてみよう。
まずは、サウンド面から確認していきます。
手持ちのハモンドオルガン音源と合わせて、計4製品との比較です。
- Arturia B-3 V2
- IK Multimedia Hammond B-3X
- Native Instruments Vintage Organs
- Toontrack Session Organ EKX
サンプル1:レゲエ風
最初は、レゲエ風のサンプル曲から。
MIDIデータは、Session Organ EKXのMIDIグルーブからコードだけ変えて作ったものです。むちゃくちゃ手軽。
ハモンドオルガンは、音を出す部分が「上段・下段・ペダル」と3つあり、どの音源もMIDI入力信号を変えることで、複数の音色を出すことができます。
オルガンにはドローバーという倍音を調整するバーがありますが、各音源の音色は、Session Organ EKSのドローバー設定と同じ設定にしています。
①Arturia B-3 V2
物理モデリングによるオルガン音源です。
操作していて感じたのは、ドローバーの設定が小さくて、少し操作しにくいことです。
エフェクトは、DRY/MIXがあったり、ディストーションにも色々な種類があったり、便利ですね。
サウンドは、少し固さを感じますかね。
②IK Multimedia Hammond B-3X
IK B-3Xは、究極のハモンドオルガン音源としても名高く、サウンドが素晴らしいと絶賛されている製品です。動作については「物理モデリングとサンプルを組み合わせている」ようにHPからは見受けられます。
実際、②の音源にも説得力を感じる方は多いと思います。
私もメインのオルガン音源として長らく使用してきました。
しかし、実は不満がないわけではないです。
- CPU負荷&音源の表示がとにかく重い!!
- 重いので、「プリセットの切り替えをあまりしたくない」と感じる。
- エフェクトのディストーションにDRY/MIXがない。(内蔵のギターアンプを使う手がありますが。)
サウンドは良いのですが、CPU負荷によりフリーズ必須の場面も多々あります。
③Native Instruments Vintage Organs
Native Instruments Kompleteの中にも含まれるため、持っている方は多いのではないかと思われる本プラグイン。私もIK B-3Xを手に入れる前までは、よく使っていました。
音源として悪くはないですし、エフェクトも使いやすいです。③の音源は、わりと良い音だと感じる方も多いのでは。
欲を言えば、サウンドの線が細く、説得力が少し足りないと感じる時があるくらいです。
④Toontrack Session Organ EKX
④を聞くと、少しハイが耳に痛いと思われる方もいるかもしれません。実は、Session Organ EKXは、使えるエフェクトがプリセットによって変わり、プラグイン内で自由にEQしたり、ディストーションをかけられたりするわけではありません。(その分、初心者が、迷わないようにするためだと思われる。)
そのため、中級者・上級者は外部エフェクトを使うことも検討して良いと思います。外部の歪みエフェクト(Tone Projects Kelvin)やディエッサー(Techivation M-De-Esser)を使って作業したものが次の音源です。
「音質最強と言われるIK B-3Xとどちらが良いか?」と聞かれても、好みの違いくらいには、追い込めます。
また、同じMIDIデータを使っていますが、0:03~の部分に注目して聞いてみましょう。
0:03~の部分、②IK B-3Xのノートの切れ間が途切れて聞こえます。
IK B-3Xのリリースは、スパッと途切れるのに対して、Session Organ EKXは若干リリースが残ります。(もちろんSession Organ EKX用のMIDIですから良く聞こえるのは当然なのですが。)
で、オルガン初心者(私のことでもある)が弾いた時に、より初心者っぽく聞こえるのは、実はIK B-3Xだと感じました。演奏がぶつ切りになりやすいからです。これが、私がSession Organ EKXのサウンドが音楽的だと考える1つ目の理由です。
2つ目の理由は、ロータリースピードの切り替え時の滑らかな動きです。
ロータリースピードはモジュレーションホイール:CC1で制御しますが、早くする時遅くする時の切り替えが滑らかで、ウットリできる絶妙さなのです。
徐々に変化していく感じも、ロータリーのかかり具合の深さも、気持ち良いですよね。
IK B-3Xはどうでしょうか?
IK B-3Xの場合、回転を止めるにはCC93で打ち込みます。サウンドの方向性が全く違うことが分かりますよね。
Session Organ EKX以外のオルガン音源は、ロータリースピードの制御ができるつまみはあるのですが、Session Organ EKXほどの気持ちよさを得られる設定にすることが、私にはできませんでした。
逆に、Session Organ EKXは、ロータリースピードを制御できるプリセットが限られています。
Session Organ EKXのサウンドまとめ
ここで一旦、まとめます。
- 外部エフェクトも併用すれば、最高品質のオルガンサウンドとして使える。
- 音の切れ間(リリース)がかなり音楽的で、オルガン初心者でも格好良く聞こえる。
- ロータリースピードの初期設定が素晴らしすぎる!
興奮して、サンプル1から文章を書きすぎている気がしますが、サンプル2に行きましょう。
サンプル2:ロック風
こちらは、Toontrack Session Organ EKXのMIDIグルーブをそのまま使っています。
また、ドローバーの設定も全て同じにしています。
これらの比較も、サンプル1で書いた通りの印象で、⑪Session Organ EKXの音源はロータリースピードの変化や深さがむちゃくちゃ気持ち良いと思います。
ただ、他の音源のようにもっと歪ませたいとしても、音源内では限度があります。
*プリセットの部分で後述しますが、Overdriveという歪み前提のプリセットを選べば、より歪んだ音は出せます。
Session Organ EKXの機能
MIDIグルーブ
今まで、Session Organ EKXのサウンドを褒めてきたのですが、実は一番すごいのは、MIDIグルーブ機能だと思っています。
ポップス・ロック・R&B・ヒップホップなど、様々なオルガンフレーズを使え、コードまで変化させることができます。
これらのMIDIグルーブは、グリッドエディター内でEDITできます。(手数の増減は、ノブ一つで可能。)
また、DAWにドラッグ&ドロップで取り込むと、上鍵盤・下鍵盤・ペダルの3トラック分、自動的に分けられてエクスポートできます。
オルガンという楽器は使い勝手がよく、色々なジャンルで使える反面、打ち込み方を学ぶのが中々難しい楽器だと思います。
私自身、今まで耳や演奏ビデオを見たりして、見様見真似で打ち込んできました。それが、Session Organ EKXでは、オルガン演奏の生データが見られるわけです。
これは自学するDTMerにとっては、何より大きな財産になりますし、私が本製品に期待した大きな理由の一つです。今後、オルガンのMIDIパックが追加で発売となりますが、私は確実に買います。
Session Organ EKXのプリセット・エフェクト
Session Organ EKXのプリセットは、画像のとおりです。
各ジャンルに向けたプリセットが並んでいます。
特徴的なのは、プリセットによって、いじれるエフェクトノブが変わることです。
ジャンルを選べば、それに合わせた最適なノブが出てくるという仕様ですね。初心者には、特に良いと思います。
ただ、私としては、Toontrack Superior Drummer3のように、エフェクトチェーンがしっかり目に見えていじれる方が嬉しいと思うのも事実で。外部エフェクトを併用しながら追い込むことで、十分対応できる部分ですので、良しとします!
サウンド – ドローバー設定
ドローバーの設定は、右側にあるOrganボタンから開いて行います。
C0~B0までのショートカットキーがあり、ドローバーの設定を一瞬で変化させられます。
ドローバー一本一本にもMIDI Learn可能で、音を変えながら打ち込み可能。
CPU負荷
CPU負荷は、10%ほどです。
動作も軽快ですし、画面表示が一番早いと思います。Toontrackの技術の高さよ……。
●PCスペック
- OS:Windows10 64bit
- CPU:AMD Ryzen 9 3900X [3.8GHz/12Core]
- メモリ:96GB
- DAW:Studio One6.5
- サンプリングレート・解像度:48kHz・32bit float
- バッファーサイズ:1024samples
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Discrete4
まとめ
以上が、Session Organ EKXのレビューです。
- MIDIグルーブから、オルガンの打ち込み方を学べる。
- 最高品質のオルガンサウンドに追い込めるのに、動作が軽い。
- リリースの仕方・ロータリースピードの速さ&深さが音楽的!
と、これからオルガンの打ち込みを極めていきたいという方に、かなりおすすめできる音源だと感じました。
容量も物凄く軽い(64MB)ですし、一体全体どうなっているのでしょうか!?
EZ Keys2専用拡張音源なので、EZ Keys2と抱き合わせで買うのもおすすめです。(EZ Keys2などの母艦プラグインはセールがありませんので、買い時は欲しい時です。)