Minimal Audio Morph EQレビュー 簡単手軽なモーフィングをどうぞ
Minimal Audio Morph EQは、一つのノブで複数のノードを自由自在に動かせるEQプラグインです。
不規則・複雑なEQの動きを、簡単に演出できるのが売りです。
サウンドを確認しながら、Morph EQに迫っていきましょう。
Morqh EQのサウンドを確認しよう。
サンプル楽曲1
8小節・3トラックのサンプル曲を作りました。
- パッド
- アルペジオ
- ドラム
Morph EQを使用したのは、パッドとアルペジオの2トラックです。
使っていない音源と聴き比べてみましょう。
①のシンプルなサウンドに比べると、②は微妙な揺らぎ・ねじ曲がるようなサウンドの変化を感じると思います。
下の画像はアルペジオのトラックにかけた設定ですが、ウネウネと山が動いているのが分かります。
MORPHノブのオートメーションを書くことで、それぞれのEQノードに付けた動きが一気に全て動くことによって、このような挙動になっています。
使う時の注意点
下の画像は、パッドにMorph EQをかけた時のある一場面です。
実は、非常に耳が痛くなっている瞬間です。1.5~3kHzが耳に刺さるわけです。
これは、Morph EQのプリセットを使う場合は、仕方がない挙動とも言えると思います。
こういう場合の解決策としては、コンプやダイナミックEQを使う手があります。
今回は、Fabfilter Pro-C2を使い、サイドチェインEQ設定をしています。
これにより、耳が痛い帯域が一定の音量を超えた時にリダクションすることで、耳に優しい音にすることができます。
ダイナミックEQだと、選択した帯域だけ削ることになりますが、コンプの場合は全帯域がリダクションされますので、全体の音のテイストを保つことできます。
Morph EQのサウンドを確認しよう2
バウエルフィルター的な使い方
今度も3トラックですが、もっとシンプルな楽曲です。
- シンセ:ただのノコギリ波
- ベース
- ドラム
使ったのは、シンセとベースですが、今回はシンセに注目です。
③は、物凄く退屈ですよね。それはそのはず。ただのノコギリ波ですからね。
④は、人の声のように聞こえ、面白い聴き映えになりました。
注目は、MORPHノブ以外のノブも回っているところです。
ノブの説明
- SHIFT:ノードを全体的に左右に動かす。-方向が左、+方向が右。
- PINCH:全てのノードを画面中央を軸に動かす。-方向が外側。+方向が内側。
- SPREAD:左右の効きをずらして、ステレオ感を出せる。
- SCALE:EQの効きの具合を倍率で変化させる。
これらのノブを使うことで、全てのノードを一気に動かしてモーフィングさせられます。
右下にはクリッパーが付いており、紫だとソフトクリッパー、橙だとハードクリッパーとなります。
他社製品比較:UVI Shade
MorphEQには、LFOが搭載されていない。
ウネウネ動くEQと言えば、UVI Shadeがあります。(私は持っていませんが、Fabfilter Volcano3などもそうですね。)
UVI Shadeは、Shade内でのLFOやMSEGにより、自動的にフィルターを動かすのが得意なプラグインです。
一方、Morph EQは、LFO機能が搭載されておらず、DAW上でMORPHノブのオートメーションを書くことでモーフィングさせます。(Gear Spaceの書き込みを見ると、モーフィングの編集のしやすさを優先したためだということです。)
要するに、モーフィングに一手間必要ということになりますね。
それでは、UVI ShadeがMorph EQより優れているのかというと、そんなことはありません。
MorphEQの強みは、不規則な変化を手軽に扱えること
Morph EQは、複数のノブを使うことで、周期的ではない変化を与えるのが得意です。
例えば、
- MORPHノブ:全ノードの動きを不規則に変化できる。
- SHIFTノブ:全ノードを高域・低域に一気に動かせる。
分かりやすいのは、SHIFTノブでしょう。
●SHIFTノブ使用例
SHIFTノブ(全てのノードを高域・低域に動かせる)を使い、「Aメロでは通常の位置、サビでは右に回す」ことで、サビでノードが全体的に高域に移動し、より抜ける音にさせる変化も可能。
Morphノブでモーフィングさせながら、全体のトーンカラーを調整することが、簡単にできます。
ノードの数やモーフィングの動きにもよりますが、MorphEQのたった1つのノブのオートメーションで変化できることが、他のEQでやろうとすると、途方もない数のオートメーションを書く必要が出てくるでしょう。
UVI Shadeの中にはマクロノブがあるので、頑張ればノブ一つでShade内でMorphEQのようなフィルター変化ができるかもしれません。ですが、MorphEQで簡単にできることをShadeでプログラミングするだけでも、相当な時間を費やすように思います。
サイケデリックなテクノを作る必要があった際、MorphEQで不規則な動きをオートメーションで制御できることは、非常に心強く思いました。
これを他のプラグインでやろうとするのは、正直無謀だと思えるほどに。
まとめます。
- 周期的な変化が望まれる場面では、UVI Shadeがおすすめ。
- 不規則な動きが必要な場合は、MorphEQがおすすめ。
特にシンセに対して使うのが向いているプラグインだと思います。
CPU負荷
デジタルEQでは、0~2%が多いですが、Morph EQは1~4%ほど使用します。
ノードの数にもよりそうです。
●PCスペック
- OS:Windows10 64bit
- CPU:AMD Ryzen 9 3900X [3.8GHz/12Core]
- メモリ:64GB
- DAW:Studio One6
- サンプリングレート・解像度:48kHz・32bit float
- バッファーサイズ:1024samples
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Discrete4
まとめ
以上が、Minimal Audio Morph EQのレビューです。
初見で「このプラグインを一体何に使うんだ!?」と思った方もいると思いますが、私もその内の一人です。
しかし、サイケデリックな楽曲を作る際の武器として購入し、実際に非常に心強い味方になりました。
ウネウネしたシンセサウンド、シンプルなパッドに少し揺らぎを出したりと、意外と使える場面は多いです。電子音楽を作る方には、おすすめできるプラグインですね。