Scaler EQ Pro レビュー|リバーブやパーカッションまで調性的に変えるEQ

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Scaler Music Scaler EQ Pro は、楽曲のキーやスケールを認識し、その音楽的な情報をもとに周波数をコントロールできるEQプラグインです。
- キー/スケールに沿って、必要な音程成分を持ち上げたり、不要な成分を抑えたりできる。
- 通常のEQ、M/S、Dynamic EQに加え、Magic Shelfや低域・高域専用コンプも搭載。
- パーカッションやFX、リバーブなどを、調性的なサウンドへ変化させるレゾネーターとしても使える。
サウンドを聴きながら、Scaler EQ Proならではの使い道に迫っていきましょう。
Scaler EQ概要
Scaler EQ Pro概要
Scaler EQ Proは、一般的なEQ機能に加えて、楽曲のキーやスケール情報をもとに周波数を処理できる「Musical EQ」です。
通常のEQがHz単位で帯域を調整するのに対し、Scaler EQ Proでは「このキーに含まれる音程を持ち上げる」「スケール外の成分を抑える」といった、音楽的な基準でのEQが可能です。
通常のEQとしての機能はもちろん、無調性の素材から特定の音程を浮かび上がらせるレゾネーターとしても動作します。
Scaler EQ Proをレビューする理由
前作、Scaler EQについて、実は私は触ったことがありませんでした。
というのも、キーやスケールに沿って多数の細かなフィルターを同時に動かす構造上、位相変化や、瞬間的な音の後ろに尾を引くポストリンギングが気になっていたからです。
実際の所、ゲイン量を増すと、Scaler EQ Proにおいても、ポストリンギングは発生します。
ただし、通常のEQとして現実的なゲイン量で使う範囲では、今回の試用中にポストリンギングが問題になる場面はほとんどありませんでした。(メーカーによれば、前作からエンジン自体を新しくして、「癖」は改良されているとのことです。)
今回レビューを引き受ける気になったのは、前作のScaler EQの評判の中で、無調性のサウンドに調性を与えられるレゾネーターとして使う例が気になったからです。
例えば、
- 打楽器に音程感をもたせる。
- 過度に歪ませたサウンドやグリッチサウンドなどに、音程感を持たせる。
- ロングリバーブを演奏させる。
などの、面白いアプローチができるかもしれないわけですね。
Scaler EQ Proができること
Scaler EQ Proができることは、次の4つの段階で考えればOKです。
- 通常のEQ・M/S・Dynamic処理
- Key/Scaleに沿ったHarmonic EQ
- FXや無調素材を音楽化するレゾネーター
- MIDIで、レゾナンス自体を演奏するLive Mode
今回は、②~④の使い方について、見ていきます。
Scaler EQ Proの使用例
Key/Scaleに沿ったHarmonic EQ
ここでは、サンプル曲に
- EQ自体をバイパス
- Harmonic Peak使用
- 通常のPeak使用
という違いで聴き比べてみます。
以下の曲の、メインボーカル・左右のギターの3つのトラックで使用します。
ボーカルは、中低~低域の野暮ったさを取り除きつつ、耳につく高域をダイナミックEQで抑え、5000Hz以降は、少しブーストしてシャッキリさせる方向です。
ギターは、丸っこいサウンドにしたかったので、ローパスフィルターを使いつつ、歌やベースの帯域を空けるためにカットしています。
③通常のPeak使用の音源は、上の画像で縞模様になっている部分(Harmonic Peakフィルター)を、通常のPeakフィルターに変更して聴き比べます。
それでは、いきましょう!
中々、違いを聞き取るのは難しいかもしれませんね。
傾向として、②より③の方が、「すっきりして聞こえすぎる。」「必要な成分までカットされたように聞こえる。」 ということはあると思います。なんとなく物足りないという感じ。
自作のMIXを聴き比べるソフトを使った所、LUFS自体に変化が生まれていました。(当たり前ですね!) Harmonic Peak版と通常Peak版ではIntegrated LUFSに約0.4dB相当の差が出たため、知覚音量を揃えて比較しました。
LUFSを揃えて聞いた差ですが、①の音源の野暮ったさは、②③どちらも解消されています。
で、②と③の違いとしては、やはりカットしても、カットしすぎた感じがしないのが②の音源だと思いました。Harmonic Peakでは、同程度に野暮ったさを整理しても、音色の芯というか、音楽的な温かみが残りやすい印象です。
もちろんそれは、②のHarmonic Peakフィルターを基準に私がEQingしたことは理由としてあると思います。通常のPeakフィルターを使っていたら、そもそもゲイン量が変わる可能性は十分にありますからね。
そして、Harmonic Peakフィルターを使っても、音自体の滲みやポストリンギングについては、特に気になる所はなかったのは好印象でした。(もちろん、ゲインを上げすぎないという条件はありつつも。)
FXや無調素材を音楽化するレゾネーター
今度は、パーカッションに音程をつけてみましょう。
音程を付ける時は、持続音が長い方が分かりやすいので、今回はパーカッションに深くリバーブをかけて、Scaler EQ Proを使ってみます。
下の画像のように、G7(ソ・シ・レ・ファ)の音程感を付与させてみました。
Pluckのような音に変化していますね。
つまりEQで音質を整えているというより、パーカッション+リバーブを共鳴源として利用して、新しい音色を作っています。
Scaler EQ Proでは、それぞれのノードにスケールを設定できます。
そのため、オートメーションなどを駆使して、コードを変えたりすることも可能ですし、後述するLive Modeでは、MIDI入力も可能です。
WEB上で紹介されていた使用例としては、「激しく歪ませて音程感が薄まったサウンドに音程感を付与する」などの使い方もあり、激しいFXを音楽的にしたい場合などにも有効そうです。
実は、私的にScaler EQ Proの話を聞いた時に、リバーブへの使用が合うんじゃないかと思ったので、今回は実験をしてみます。
⑦が、独特の透き通った感じ、少し異質な空気感を感じると思います。
指定したキーやスケール、音階以外を下げるという使い方もできるので、リバーブの質感にこだわる場合、今までとは別のアプローチができる可能性がありそうですね。
MIDIで、レゾナンス自体を演奏するLive Mode
新たに搭載されたLive Modeで、MIDI制御できるようにもなりました。
下の画像の、水色の線がLive ModeのMIDI入力を示しています。
Live Modeでは、MIDIノートに合わせて、レゾナンスをリアルタイムに動かせます。
ただし、Harmonic Peakのように指定したスケールの音をまとめて広い帯域に展開してくれるわけではなく、欲しい音程をMIDIで実際に入力する必要があります。
そのため、この設定や打ち込みの手間を考えると、通常の制作で積極的に使いたいとは、個人的にはあまり感じませんでした。
Live Modeを使うより、ノードごとにスケールを設定してゲインをオートメーションする方法や、画面上部のScale Slot(1~3)を切り替える方法の方が、実制作では扱いやすそうです。
CPU負荷
5%ほどと、通常のデジタルEQよりは、負荷がありそうです。

Harmonic Peakを使えば使うほど、負荷が高くなるようです。
Pro-Q4などでは、低い設定では0~1%くらいなので、Harmonic Peakを常用使いして積み重ねると、意外と負荷が高くなることもあるかもしれません。
- OS:Windows11 64bit
- CPU:AMD Ryzen 9 3900X [3.8GHz/12Core]
- メモリ:96GB
- DAW:Studio One7.2
- サンプリングレート・解像度:48kHz・32bit float
- バッファーサイズ:1024samples
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Discrete4
まとめ
以上が、Scaler Music Scaler EQ Pro のファーストインプレッションレビューです。
Harmonic Peakは、実際に予想したよりも、面白く音楽的な変化をするのが印象的でした。
ポストリンギングは、余韻が少ないサウンドでゲインを高めた場合は、露骨に聞こえることがあるのですが、「ゲインを極端に上げない」「もともと余韻の長いサウンドに使う」といった範囲では、今回の試用中に気になる場面はほとんどありませんでした。
一方で、ファーストインプレッションでは見えていない部分もあり、Harmonic Peakを楽曲内で使っていくと、どういう変化があるか。今回の実験では、まだまだ見えない所も多かったです。
すでに前作を使っている方にとっては、メーカーがフィルターエンジンを根本から再設計し、複数フィルター使用時の挙動を改善したとしていることに加え、HF Comp・Bass CompやLive Modeなどの追加機能も、アップデートを検討する材料になるでしょう。
Scaler EQ Proを、既存の高性能EQの代替として導入する必要性はそれほど感じませんが、Harmonic Peakによる音色整理や、パーカッション/FX/リバーブを調性的に扱う機能は、普通のEQにはない明確な個性を感じます。
「周波数を音楽的なルールで加工するサウンドデザインツール」として捉えたときに、ワクワクする方には、おすすめできるプラグインと言えるでしょう。





















