Caelum Audio Choricレビュー 視認性に優れた最大32ボイスのコーラスエフェクト
Caelum Audio Choricは、視認性に優れ、簡単な操作で扱えるコーラスエフェクトです。
- 最大ボイス数が32で、包まれるようなリッチなサウンドを簡単に作れる。
- 視認性が良いので、ノブに対してどういう変化をしているのかが想像しやすい。
- フィルター→ピッチシフト→モジュレーションという考えられた入力信号の流れ
サウンドを交えて、Choricに迫っていきましょう。
Choricの音を聞いてみよう。
サンプル曲1:ボーカル&リバーブ
サンプル曲1は、3トラックの楽曲です。
Choricを使ったのは、ボーカルとピアノに対するリバーブの2箇所です。
- ボーカル:センドで送って、Choricを使用。その後、コンプで音量感を揃えた。
- ピアノ:こちらもセンドでリバーブを作り、そこに対してChoricを使用
ちなみに、Choricを2つ外した素の状態がこちら。
①②を聴き比べると、当たり前ですが、全く違うサウンドになっているのが分かります。
ボーカルの設定
Voのセンドに使ったのが次の設定です。
Choricの信号の流れは、画面の左から次の通りに流れます。
- フィルター
- ピッチシフト
- モジュレーション
- アウトプット
入った信号に対して、①フィルターをかけられます。レゾナンスがあるため、思った以上にエグい音の変化が可能。
②ピッチシフトでは、-12~12半音でのピッチシフトができます。そしておもしろいのが、Pitch Amountで、ピッチシフト部のMix・Dryを調整できる所。上のボーカルの例で言えば、フィルターをかけた音に対して12半音上げた信号を63%混ぜたものを、③モジュレーションセクションに送っています。
③モジュレーションセクションの詳細は後述しますが、最大32ボイスのコーラスを加えられます。1~3音くらいのコーラスエフェクトが多いので、Choricの特徴とも言えますね。
最後に④アウトプットセクションです。
さぁ、ここで、もう一度ボーカルに注目しながら音源を聞いてみましょう。
ピッチシフトしたオクターブ上の声も混ざっているのが分かりますね。
フィルター後、ピッチシフトさせた音をコーラスさせる……。これを他のエフェクトを使って再現してみます。
Kirchhoff-EQ → Soundtoys Little Alter Boy → Native Instruments Choral
NI Choralでは、最大3ボイスのため、Choricのようなまとわりつくようなサウンドを作ることができませんでした。
これだけでもChoricの有用性は分かって頂ける所かと思います。
リバーブの設定
今回はリバーブにもChoricをかけています。
ピアノの音に着目しながら、聴き比べてみましょう。
②は、平坦でつまらない音であると感じる人が多いのではないでしょうか?
音数が少ないアレンジでも、リバーブに僅かにモジュレーションを加えることで、飽きが来なくなる、という寸法です。
ちなみに、Choricのモジュレーションのレートは2Bars(2小節)になっています。BPM72の楽曲ですのでこれを計算すると、0.15Hzとなります。
先程も使ったNative Instruments Choralでは最小レートが0.25Hzですから、再現できない値です。
レートがゆっくりになればなるほど、コーラス感は減っていきます。
だから、上記画像の設定はコーラスとしては控えめな設定なのですが、音数が少なくテンポがゆっくりな楽曲だからこそ、ゆったりとしたモジュレーションが心地よく響いて聞こえるというわけです。
サンプル曲2:シンセに使う
今度は、シンセに使ってみます。
何を表現するかにもよりますが、よりサイケデリックなものを表現したい場合には、⑤が良いと思います。
今回、Bassに対しては、センドで送ったチャンネルにChoricを立ち上げました。
フィルターセクションで、ハイパスを使っています。これは、ベースの原音の低音域にあまり干渉させないで、広がりのあるサウンドを作るためです。
重厚・メタリック・広がりのあるサウンドを作るのは、Choricを使えば簡単です。やはりその決め手はボイス数ですね。
最大3音の他のコーラスエフェクトで再現しようとしても、私にはうまくできませんでした。
機能紹介
ここではモジュレーションセクション・アウトプットセクションについて触れます。
モジュレーションセクション
視認化されており、非常に使いやすいGUIですね。
特に分かりづらい部分に触れておきます。
Loosenessは、各ボイスの発音のタイミングをずらす機能で、数値を上げるほどバラツキが生まれます。増やすとリバーブのように後に音が続いて行くのですが、タイトな楽曲だと余韻がありすぎて気になる場合も出るでしょう。(グラフに変化が現れないので、耳で変化を確かめる必要があります。)
波形のRandomは、より自然なコーラス効果が生まれるものです。厚みは生まれますが、他の波形のようなコーラスエフェクトらしさは若干薄まります。
ボタン類について。
- Dark:14,000Hz付近からのローパス
- Warm:モジュレーションされたボイスに、3.5dBのアナログスタイルの歪みを追加
- Flip CH:右チャンネルのモジュレーションを反転させ、よりステレオ感が生まれます。
- Sync:モジュレーション・レートをプロジェクトのBPMに同期させます。
Voicesは、ボイス数制御で、2~32までを選択できます。2や3だと、他のコーラスエフェクトと同等のコーラス音も作れます。
アウトプットセクション
Widthは、-100~100%のツマミで、MSの比率を変えられます。マイナス方向はMid(L+R)が強調され、プラス方向はSide(L-R)が強調されます。
Sideを強調しすぎると、モノラルで聞いた時に音が消えてしまいますので、ご利用はほどほどが良いと思います。
Gainは、モジュレーションされた信号のボリューム操作です。
Mixは、50%で原音とモジュレーションされた音が半分ずつになります。
他社コーラス製品比較
Caelum Audio Choricは、他社製のコーラスエフェクトと何が違うのでしょうか?
- フィルター・ピッチシフトを別途挟むことなく、音作りができる。
- 最大ボイス数32を掛け合わせることで、今までにない音が作れる。
これが、Choricの分かりやすいメリットとなります。
しかし、ボイス数が少ない普通のコーラスとして使っても非常に使い勝手が良いというのが私の感想です。ノブの変化に対して、グラフが変わるため、音の変化とノブの関係が直感的に分かるのです。
以上をまとめると、Choricのメリットは
- フィルター→ピッチシフト→モジュレーションという流れ
- 最大ボイス数が32
- 視認性の良さ。ノブに対してどういう変化をしているのかが想像しやすい。
ということになります。
Native Instruments Choralと比べると、足りないボタンがFeedbackというツマミです。
Feedbackは、モジュレーションされた信号を、またインプットへと戻す量を調整するもので、値を上げると独特なサウンドを作ることが出来ます。
このようなサウンドはChoricは作ることが出来ません。
また、Choricの弱点としては、全体的に画面が暗くて、少し見づらい点も挙げられます。
CPU負荷
他のコーラスエフェクトに比べると、CPU使用率は高いですが、動作自体は機敏な印象です。
Choricはボイス数を増やすほど、CPU使用率が高まるようです。
●PCスペック
- OS:Windows10 64bit
- CPU:AMD Ryzen 9 3900X [3.8GHz/12Core]
- メモリ:64GB
- DAW:Studio One6
- サンプリングレート・解像度:48kHz・32bit float
- バッファーサイズ:1024samples
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Discrete4
まとめ
以上が、Caelum Audio Choricのレビューです。
巷のすべてのコーラスを試しているわけではありませんが、今後コーラスを使う上でファーストチョイスとなる逸品となりました。
何よりGUIの分かりやすさが素晴らしいです。
ボーカルに使用するも良し。音作りとして積極利用するのも良し。
他に気に入っているコーラスエフェクトが無いのであれば、おすすめできるプラグインです。