Cinesamples CineHarps レビュー 美しく説得力のあるハープ音源
Cinesamples CineHarpsは、美しく説得力のあるサウンドが魅力のハープ音源です。
- とにかくサウンドに明瞭感がある。
- 好みに応じて、マイクMix・打ち込み仕様を変化可能。
- 特殊奏法も含んだプリセット
サウンドを聴きながら、CineHarpsに迫っていきましょう。
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他の音源とも比較しつつサウンドを聴いてみる。
Pianoteq用に書いたハープソロ曲を、CineHarpsでも鳴らしてみました。
①Eastwest Hollywood Orchestra Opus Edition
①Hollywood Orchestra Opus Editionの中のハープは、オーケストラ総合音源の中に含まれる一音色に過ぎませんが、アーティキュレーションが充実しています。今回は、Long Pluckだけで打ち込んでいますが、Thumb Pick・Nail Pickなども設定でき、もう少し細かなニュアンスまで追い込めます。
ただ、①OpusのHarpは、SN比が低く、音を重ねるとサーーーーッという音が混じってくるのが、非常に勿体ないです。(↑の音源からも聞き取れます。)
また、ベロシティ設定がシビアで、打ち込みにも時間がかかるのが難点。(今回は、Pianoteq8用に打ち込んだ設定のままなので、耳に痛い部分がありますね。)
質感は悪くないのですが、扱うのがちょっと難しい面がある……、という感じです。
②Modartt Pianoteq8
グリッサンドに関しては、自動で演奏できる②Pianoteq8の機能がずば抜けて使いやすいです。CC設定さえすれば、2つのノートをレガートで打ち込むだけでグリッサンドできます。
また、白鍵だけで演奏できる打ち込みモードもあります。ペダルを踏んで音程を変えるハープの特性を、打ち込みにそのまま活かせます。
が、やはり、物理モデリングということもあり、②Pianoteq8の独特の質感が苦手な方はいるかもしれません。反面、物理モデリングのため、SN比という概念はありません。雑音が一切入らずに音が出せます。
③CineSamples CineHarps
③CineHarpsの安定感と説得力に、驚かれた方も多いのではないかと思います。
②Pianoteq8・③Opusの弱点が解消されているのもでかいです。
芯があり説得力のあるサウンドですが、SN比は比較的高く、雑音が少ないです。(全くないわけではないですが。)
グリッサンドは、自力打ち込みの簡易化&サンプルの両面から対応しています。
グリスモードをオンにすると、アタックの音がソフトになり、設定した音高が白鍵に割り当てられます。(グリスモードは、Kontakt内で右クリックでCC設定できます。)
これにより、MIDI鍵盤で白鍵を弾くだけで、グリッサンドを再現できるわけです。グリスモードでは、トリルを打ち込むのも適しているとのこと。
また、グリッサンドのサンプルパッチも用意されています。
また、詳細は次項で語りますが、ベロシティやホールドの設定を変え、好みの打ち込みができるのも、かなりポイントが高いです。
CineHarpsの設定一覧
マイクMix
マイクMix自体は、珍しい機能ではありませんが、非常に幅広い音を作れるのがCineHarpsの特徴です。
遠い音、目前で聞こえる音、ふくよかさを含む音……。
自由自在なセッティングが可能です。CLOSEマイクの上にあるDマークが気になる方もいると思いますが、CLOSEマイクを15ms遅らせるボタンです。ROOM・SURROUNDの音と混ぜた時に、より芯がくっきりと聞こえるようになります。
プリセットの一番下にあるPERSPEVTIVEをONにすると、マイクバランスを適度に保ったまま、簡単に質感を変化させられるのも、マイクバランスに自信がない方にはおすすめです。
打ち込み仕様の変化
実は、CineHarpsで一番感動したのが、SETTING画面です。
- VELOCITY CURVE:ベロシティーカーブの設定。
- RELEASE MODE:ノートを放した後にミュートするか、ホールドするか。
- RR BORROWING:ラウンドロビンを、近くのノートから借りて行うか否か。±何の音程まで借りるかを設定します。増やすと、かなりバラバラな質感に聞こえるように。
- DYNAMIC RANGE:ダイナミックレンジの増減。Highにすると、大きい音はより大きく。小さい音はより小さく聞こえるようになります。
あっさりとした画面に見えますが、操作感・打ち込みを劇的に変えることができます。
例えば、ポップス向けならDYNAMIC RANGEをLow側に設定して、音量感が一定に聞こえたほうが聞こえやすいかもしれません。劇伴なら、小さいところは小さく表現したいこともありますから、High側に設定すればよいのです。
また、RELEASE MODEも絶妙です。
Pianoteq8のハープは、普通に打ち込むと、かなり余韻が長いです。0:18くらいから聴いてみて下さい。
最後、音量でフェードしているのがバレてしまうほど、持続しています。(*ただ、もしかしたら短く設定できるパラメーターがあるかも。)あと楽曲の途中でも、減衰が長すぎて濁っているところも多々ありますね。
CineHarpsは、デフォルトだと、割と早く減衰しますが、CC64のサスティンで伸ばすこともできます。RELEASE MODEを右側に回すと、CC64なしで長く演奏されるようになります。要するに、簡単に打ち込み方針を変えられるわけです。減衰の長さを調整できるので、長すぎず、でも余韻も楽しみたいという好みを追求できます。
今回のサンプル音源の打ち込みは、元々Pianoteq8用に打ち込んだデータでしたが、VELOCITY CURVEとDYNAMIC RANGEを調整するだけで、CineHarpsに適した音になりました。(グリッサンド部分以外は、ピアノロールをいじっていない!)
ベロシティの調整なしにここまで追い込めるのは、凄まじくありませんか?
プリセット
正直、Concert Harpだけでも、十分満足できるくらいのクオリティがありますが、それ以外にも様々なプリセットがあります。
純粋なハープ音源が、3つ。グリッサンドが2つ。
ハーモニクス・アタックの強いサウンド、FX系、癖強パッチなど様々です。
Musio1との比較
CineSamplesが現在ものすごい勢いで推しているのが、Musioです。
70種類以上のタイトルが手頃な値段で一気に手に入るのですが、Kontakt版との違いはどうでしょうか?
④Musio1版のCineHarpsで十分という人もいるでしょうが、ちょっと物足りないという方もいるでしょう。実際、音を第一に考えるなら、私は③Kontakt版のCineHarps一択です。
というのも、Musio1版のCineHarpsは、CineHarpsと同じサンプルを使っているものの、マイクバランスは変えらないからです。VELOCITY CURVE・RELEASE MODE・DYNAMIC RANGEの変更もできません。
これはMusioというサービスが、初心者・中級者に向けて、たくさんの音源を深いことを考えずとも直感的に操作できることを目標に作られたものだからです。
オーケストラ音源を持っていない方々が、初手で買うには大変良いサービスだと思います。反面、音質を求めて色々なライブラリを買い揃えて行く段階の方には、Musio1では痒いところに手が届かない……と感じる方もいるのではないか?というのが、私の所見です。
CPU負荷
CPU負荷は非常に低いです。
●PCスペック
- OS:Windows10 64bit
- CPU:AMD Ryzen 9 3900X [3.8GHz/12Core]
- メモリ:96GB
- DAW:Studio One6.5
- サンプリングレート・解像度:48kHz・32bit float
- バッファーサイズ:1024samples
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Discrete4
まとめ
以上が、CineSamples CineHarpsのレビューです。
この音質に一度触れると、ハープの曲を書きたくて書きたくて仕方がなくなることと思います。
設定項目がとても分かりやすくまとまっており、非常に使いやすいのも良くおすすめです。