Minimal Audio Cluster Delay レビュー ひとかたまりのディレイで創造の扉を
Minimal Audio Cluster Delayは、ディレイ音を塊のように組み立てられる斬新なディレイプラグインです。
- クリエイティブなディレイが簡単に作れる。
- ディレイ音に対して、エフェクト・ダッキング・クリッパーをかけられる。
- INPUT SEND MODE・プリセットランダム機能など、好感触な機能満載
サウンドを聴きながら、Cluster Delayに迫っていきましょう。
Cluster Delayのサウンドを聞いてみよう。
12小節のサンプル曲を作りました。
Cluster Delayを使っているのは、以下の3トラック。
- ボーカル:ディレイ音が後から追いかけてくる。
- パッド:ピンポンディレイ的な使い方。
- プラック:ディレイ音が後から追いかけてきて拡散する。
最初はボーカルに注目しながら聞くとおもしろいと思います。
後から追いかけてくるディレイ、物凄くおもしろい効果ですねー。
メロディーを敷き詰めているような楽曲よりも、間を活かせるような楽曲の方が、色々とおもしろいことができそうな気がします。
ボーカルの設定を見る。
Feedbackの値は0なので、普通のディレイなら、1回しかディレイが返らない所ですよね。
●ディレイのFeedbackとは
多くのディレイプラグインにおいてFeedbackは、原音に対して、○%の音量で返す。という値です。
例えば50%に設定すれば、100%・50%・25%・12.5%……というように、音量が下がりながらディレイが返ります。
0%なら、原音と同じ音量で一度鳴るだけです。
Cluster Delayの特徴は、右上にある8TAPSという部分です。
8TAPSなら、ディレイ音が8回返るのを一つの塊として捉え、その塊に対してFeedbackが0である、と考えます。つまり、上記の画像では、8回だけディレイが返ったら、それで終わり。という挙動になっているわけですね。
プラックの設定を見る。
一方、プラックの設定では、Feedbackが58%に設定されており、とても長くディレイが返る設定になっています。
画面真ん中にあるRAMPというつまみを、右に回すと徐々にディレイ音を大きくする設定となります。
また、画面上のバーが滲んで見えますが、これはDIFFUSION(拡散)というエフェクトをかけているためです。私は、質感が好みだと感じました。
また、こうした長いディレイに対しては、原音が鳴るときにディレイ音を下げるダッキング機能を使いたいものですが、当然完備されています。
DUCKERでは、ダッキングの音量感が%で表されており、TIMEで戻る早さを調整できます。アタックやリリースで調整するコンプよりも楽だと思いました。
パッドの設定を見る。
パッドは非常にシンプルなディレイにしています。
ピンポンディレイのようにLRに順に返る設定にしています。
これには、画面中央のSCATTERというツマミを使います。右に回すとR、左に回すとLが先に鳴るようになります。
Cluster Delayの機能紹介
見れば分かる部分については飛ばして、私が「良い!」と思った所を触れていきます。
エフェクト
搭載されているエフェクトは、6種類。
また、出力部にはクリッパーがついています。
- 黒:リミッターなし
- 紫:ソフトクリッパー
- 橙:ハードクリッパー
後から比較もしますが、他社競合ディレイであるFabfilter Timeless3には、コーラス・フェイザー・フランジャーなどは付いていません。(ただし、フィルターを駆使すれば再現可能かも……?ですけど。)
一つのディレイプラグイン内で、モジュレーションエフェクトを使えるのは便利です。
INPUT SEND MODE
普通のプラグインでは、INPUTボリュームを下げると、原音も一緒に小さくなりますよね。
しかし、INPUT SEND MODEをONにすると、INPUTボリュームを上下してもDRY音に影響しなくなります。
よって、Cluster Delayをインサートしたトラックでも、ディレイ音量だけを簡単調整できるようになります。
簡単に言えば、センドじゃないと細かな音量調整できなかったのが、インサートトラックでもすぐにできる。ということ。全てのディレイに付けて欲しい機能です。
ランダムプリセット機能
これはMinimal Audioお得意の機能のようですが、プリセットをランダムで開く機能があります。
普通のディレイのようにも使えますが、Cluster Delayの売りは特殊な音響効果でしょう。
そのため、先入観なくランダムでプリセットを聞いて、音作り出来るのは良いですね。
Timeless3比較
Cluster Delayの競合製品としては、Fabfilter Timeless3が挙げられます。
Timeless3は、Tapディレイという機能があり、Cluster Delayのように一塊のディレイを作ることが出来ます。
実際に、Voに対してかけている設定を真似して設定してみます。
Cluster Delayでは、エフェクトでフランジャーをかけています。
とても上品なかかり具合。
Timeless3ではフランジャーをかけられないので、LFOでフィルターを動かしていますがニュアンスが全然違いますね。
Cluster Delayの設定を、他のプラグインで代用するとすれば、
- センドでTimeless3に信号を送り、タップディレイの設定をする。
- 別のエフェクトでフランジャーをかける。
- サイドチェインコンプでダッキングする。
ということで、実質的に3つのプラグインが必要になります。
しかも①Timeless3内でTapディレイの設定をするのに時間がかかるため、そういった手間を考えると、同じことをするならCluster Delayに分があると言えそうです。
ただし、フィルターに対してLFOをかけて特殊効果を出すというような使い方は、Cluster Delayには出来ませんので、やはりTimeless3も優秀です。
当たり前ですが、ディレイで何をしたいかで、選ぶプラグインを変えるのがベターですね。
CPU負荷
非常に軽いです。
●PCスペック
- OS:Windows10 64bit
- CPU:AMD Ryzen 9 3900X [3.8GHz/12Core]
- メモリ:64GB
- DAW:Studio One6
- サンプリングレート・解像度:48kHz・32bit float
- バッファーサイズ:1024samples
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Discrete4
まとめ
以上が、Minimal Audio Cluster Delayです。
レビュー内で触れなかったSPACINGという塊を左右に偏らせるノブもありますが、非常にユニークなサウンドになります。
今まで聞いたことのない音を作りやすい反面、作品に活かすには発想力も試されそうなディレイプラグインです。
飛び道具的なアプローチが好きな方におすすめできるプラグインと言えるでしょう。