Toontrack Stories SDXレビュー 出音が良いオールマイティなライブラリ
Stories SDXは、Toontrackのハイエンドドラム音源Superior Drummer3の拡張音源です。
- 様々なジャンルを網羅した3つのライブラリ+パーカッション
- シンプルに出音が良い!(特に、ISO B。)
- パーカッションも無加工で、とんでもない音質
私は立ち上げて早々、出音の良さに感動してため息が漏れてしまいました。
サウンドを聴きながら、Stories SDXに迫っていきましょう。
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サウンドを聞いてみよう。
Stories SDXの構成について
Stories SDXは、4つのライブラリに分けて収録されています。
この4つのライブラリの中に、ドラムキットがそれぞれに収録されています。
- Stories – Iso A(プリセット数 26)
- Musical Theatre Kit
- Stories – Iso B(プリセット数 26)
- Acoustic Songwriter Kit
- Vintage Pop Kit
- Stories – Main(プリセット数 63)
- Modern Rock Kit
- Classic Rock Kit
- Art Rock Kit
- Stories – Percussion(プリセット数 5)
以下、ライブラリごとに好きな音色を使ってサンプル曲を作ってみましたので、聴きながら特徴に迫っていきます。
まずは、メインルームから見ていきましょう。
Stories Main Room
ポップロックな8小節のサンプル曲です。
完全なデフォルト状態が↓こちら。
聴き比べると、②の方が若干ドライで、スネアが馴染んで聞こえるかと思います。
①のEDIT内容としては、2つ。
- Snare Bottomの音量を上げた。
- Amb Far・Centerのマイクを入れて、バランスを取った。
Snare Bottomは、スネアの下側(スナッピー側)から録っているマイクなので、フェーダーを上げることで高域のザラザラとした質感が追加されます。物凄く効きが良く、好みの質感を作りやすいポイントです。
Stories SDXのDefault&Cleanプリセットは、初期状態でAmb Midだけがオンになっています。空間的な広がりが欲しい場合は、他のAmbマイクを足しましょう。
今回のStories SDXの特徴的な点は、Kick Speaker・Snare Ampでしょう。キックからマイクで繋いだサブウーファーの音と、スネアから繋いだアンプの音を収録しているのです。Kick Roomというchもありますが、生音とスピーカーからの音がバッチリ合うように、距離が計算されて配置されているとのこと。
Mainライブラリのプリセット数は63と、かなり多く入っています。
Frank Filipettiの作ったプリセットは、どうやって使うんだろう?というような、実験的な音も含むのですが、新たなサウンドを追求している姿勢が伝わってきます。
驚くことに、中には、読み込むだけで11GB以上のメモリを食うキットもあります。が、そもそもSD3を導入している人は、メモリも結構積んでいるでしょうし、気にしないでしょうか。(私自身、CPU使用率は気になりますが、メモリ使用量はあまり気にしません。)
Main Roomのこだわりとしては、床の直置き・敷物・ライザー等を試した結果、ライザーが一番パワフルな音になったということで、パワフルさが売りのようです。ロック系の音が欲しいのなら、Stories SDX – Mainは選択に上がりそうですね。
Stories ISO A
ISO Aは、一つのキットのみ収録されています。
Musical Theatre Kit、オーケストラやミュージカル向けのキットです。ただし、スティック(ワイヤーON・OFFどちらも)、ロッド、マレットの録音がされており、音を様々に変化させられます。
とにかく音が良いのは、聞いてもらえば分かると思います。
キックのふくよかさ、ハイハットの粒立ち、タムの皮が振動する感じ……。
ポイントとしては、MIDIグルーブ集ですね。(③のMIDIもグルーブから引っ張ってきたもの。)ロッド・マレットを使う打ち込みは悩む方も多いと思いますが、打ち込み方を学べるのはかなり大きいです。Toontrackは、本当に隙がないですね。
私自身、作編曲家として舞台音楽を主に作っているので、このライブラリは今後使い倒していくことになると思います。
Stories ISO B
Stories SDXの中でも、特に好きなライブラリがISO Bです。床に敷物を敷き、かなりデッドに収録されています。
④のサンプル曲は、スネアにSD3内でリバーブをかけました。色気のあるタムの音、後半のライドの音も、聴きながら目を細めてしまうほど艶があります。
Acoustic Songwriter Kit・Vintage Pop Kitという、2つのキットが収録されています。特に、Acoustic Songwriter Kitは、ジェームス・タイラーのhourglassというアルバムをモチーフに作られているキットです。プリセット内にも「JT」という名前で収録されています。
私的には、アコースティックな楽曲に、すぐ使えるライブラリが欲しい。という、Superior Drummer3を手にした時からの思いがありました。SD3をお持ちの方はご存知でしょうが、Core Libraryは、特に繊細な美しい録り音です。良いライブラリではありますが、裏を返せば、線が細く感じる場合に、MIXの手間がかかることもありました。(あと、アコースティックな楽曲にすぐ使えそうなプリセットが、Massenburg氏のプリセットくらいなので、自分で作らないといけなかったんですね。)
試しに、Core Libraryに差替えたものがこちら。
⑤Core Libraryの音は、本当に繊細ですよね。音が点のようなイメージです。空間の中で音だけが弾けて聞こえてくるような感じ。
一方、④Stories SDXは、そこにドラムがあって、叩く人が見えるような感じがしませんか?
どちらも良い音なのですが、少し存在感のある音が欲しい時、手が伸びるのはStories SDXだと思います。
Toontrack、本当に素晴らしい製品を出してくれました。
Stories Percussion
⑥は、収録のMIDIグルーブをそのままエクスポートしたものです。(公式HPでも聞くことができるものですが、私が吐き出し直しました。つまり、ミックスなどで手を加えずとも、最初からこれだけ良い音ということです。)
部屋の感じがちょうど良い広さで、物凄く使いやすそうですよね。低域の迫力といい、耳に痛くない金物といい、素晴らしい出音です。
【比較】Fields of Rock – Percussion
パーカッションが入っている他のSDX、Fields of Rock SDXと比べてみましょう。
楽器構成が違う&同じMIDIを使っているので、参考になるのは録り音の傾向だけかと思いますが、いかがでしょう。
⑦Fields of Rockは、アンビエントも足していますが、部屋がかなり狭いのが聞いて分かるかと思います。ドラムもそうですが、Fields of Rockはどちらかというと暑苦しい音ですね。
また、食器・椅子・ハシゴなど、おもしろいモチーフが多いFields of Rockに対して、Stories Percussionは、オーケストラなどでも使える普通の楽器が多いです。汎用性という意味でも、Stories Percussionは、かなり優秀だと思います。
【Studio One用ピッチリスト配布】
私が作ったStories PercussionのStudio One用ピッチリストをDLできます。
- Studio Oneで、上記キースイッチマップを使う方法
-
上記ファイルをダウンロード後、解凍(展開)します。
その後、Studio Oneをインストールしているフォルダに移動し、
StudioOne\Presets\User Presets\Key Switches
に放り込みます。
Studio Oneを起動して、右にあるブラウズから、「プリセットの索引を再作成」をします。
ピアノロール→ドラムロール→ピッチリストから、SD3-Stories-Percussionを選択します。
Stories SDXのエンジニア Frank Filipettiとは?
Frank Filipettiの概要
Stories SDXは、Frank Filipettiの人生をドラム・パーカッションで表現した音源です。
Frank Filipettiは、一体どんなエンジニアなのでしょうか?
簡単に説明すると、ハードロック・ポップス・メタル・ミュージカルなど、ジャンルを越えて様々な作品に携わり、7つのグラミー賞で結果を残してきたエンジニアです。
Toontrackのビデオの中では、ミュージシャンとしてドラムを演奏してきたことを自ら語っています。アーティストとしては芽が出なかったものの、デモテープの音質の良さからエンジニアに誘われたとのこと。「自分の耳が良いのは分かっていた。」という言葉が格好いいですね。
作品紹介とStories SDXの補足
1983【ハードロック】Kiss – Lick It Up
Frank Filipettiの最初のクレジットがこちら。ハードロックから始まったんですね。
80年代っぽいスネアの音ですね。リバーブを使った、太い感じ。
1997【ポップス】James Taylor – Hourglass
繊細なミックスが光る下記楽曲。
0:49から入ってくるドラムで言うと、ハイハットの粒の細かさが美しいですよね。タムは、結構ハードパンして、左右を満遍なく使っている印象です。
ISO Bライブラリの中の、Frank Filipetti – JT tooというプリセットが一番似ていますが、タムの配置は逆になっており、ここまでハードパンされてはミックスされていません。ISO Bのハイハット(キーで言う所のF#1)は、もう少しアタックがザリッとしているようにも感じます。
ちなみにISO Bほか、Main Room・ISO Aも、ライブラリ毎にハイハットは1種類ずつの収録となっているので、それぞれにもう2,3台ずつRECしてくれていたら嬉しかったなー!という所。
ISO Bで作ったサンプル曲のハイハットをここで聴き直してみます。
あれ。
ジェームスタイラーの楽曲ほどではありませんが、きめ細かく聞こえますね。
MIDIグルーブからのデータを使っていますが、実はこれ、ハイハットのニュアンスがかなり細かく打ち込まれています。
Hihat Closed Tip(C#3=F#1)・Hihat Tight Edge(D3)をベロシティ弱めに打ち込むことで、この細やかな音を出せるようです。F#1だと、もっとざりっとした音。研究しがいがありそうですね。
一つのハイハットを、ザリっとした音~細やかな音まで、ベロシティレイヤー&キー自体も分け、細かくニュアンスを分けて収録されているため、様々な音に対応できる。と言った具合でしょうか。
2003【ミュージカル】Wicked: A New Musical
ドラムやパーカッションの音は、特に2:40~、から聞けます。
ミュージカルということで、楽器数も多く、広いステージ・ホールで演奏されているようなサウンドに感じますね。
Stories Percussionも、ドライ・ウェット、どちらにも設定できます。ウェットにする場合は、OHマイクを下げてAmb Far CHの音量を上げればOK。
オーケストレーション的な楽曲の場合は、ドライすぎるサウンドはMIXに一手間必要になりますので、距離感の柔軟さが大変ありがたいですね。
2005【メタル】KoRn – Twisted Transistor
James Taylor・ミュージカルからのKoRn……。振り幅がすごい。
カッチリと精巧に形作られたサウンドが耳を引きます。スネアのリリースが、曲のテンポと合っていて、気持ち良いですよね。
プリセットの中では、MainライブラリのFrank Filipetti – Trash 1が似ているかな??という感じですが、ハイハットの音は、ここまでバキバキじゃありません。
他のSDXとの比較
他のSDXの私見
私が他に所持しているSDXは、以下5つ。
- Decades SDX
- The Rooms of Hansa SDX
- Fields of Rock SDX
- Hitmaker SDX
- Stockholm SDX
Decades SDXは、Al Schmitt氏が監修。出音がすごくまろやか。ブロードウェイミュージカルで使われるようなキットが収録されているので、ジャズ、ビッグバンドなどの楽曲を書きたい人にとっては、喉から手が出るほど欲しいはず。
The Rooms of Hansa SDXは、ハンザスタジオで収録された拡張音源。EZ Drummer3も同じ場所で収録されていて、傾向は似てますが、The Rooms of Hansaの方がキメ細かく気持ちが良いです。デフォルトのドラムからして、圧倒的に低音域が出ています。タイトなキットは、私的に創作意欲が刺激されます。
Fields of Rock SDXは、荒く野太いサウンドが特徴です。ジャンルは結構幅広いです。メタル系ではなくインディーロック的なサウンドであったり、音数の多い日本のポップスでも抜けそうなサウンド。ディスコに向くキット(私のお気に入り!)、あとModern Studio Kitでは、比較的オールマイティなサウンドも。パーカッションがあるのもポイントです。
Hitmaker SDXは、芯があり硬めの音が特徴で、特にミディアムテンポのポップスに向いた拡張音源です。クリアで押し出しの強いサウンドが魅力的で、初めてSDXを買う人にもおすすめできます。
Stockholm SDXは、重心が低くザラッとしたサウンドが特徴。インディーロック系は特に合います。派手さはありませんが、汎用性が高く堅実な黒子的な仕事をしてくれます。BPM120~145ほどのドラムパターンも、これまた汎用性が高く、触るほどに好きになる拡張です。特に、ドラムが主張し過ぎない方が良い楽曲には、本SDXはかなり向いています。
それでは、Stories SDXは?
様々なサンプル音源を聞いて頂きましたが、やはりオールマイティなライブラリです。
ロック・ポップス・アコースティックよりの楽曲、ミュージカル・オーケストラなど、本当に様々なジャンルに使えるキットです。Core Library2と言っても過言ではない内容。
欲を言えば、各ライブラリごとに、ハイハットをもう2種類くらいずつ増やしてくれていたら……と思わずにはいられませんが、収録されているハイハット自体が、物凄く汎用性の高い音であることは申し伝えておきます。
私的にこだわりも強いアコースティックなサウンドについては、Hitmaker SDXやStockholm SDXが出たときにも期待した所でした。しかし、Hitmaker SDXは少し音が固く、よりポップス向けで、Stockholm SDXはザラつきがあり、主張を控えた黒子的なサウンドでしたから、ちょっとイメージと違っていたのです。
Stories SDX、特にISO Bライブラリは、私の期待していた夢のライブラリでした。繊細かつ芯のあるサウンドで、本当に素晴らしいサウンドだと思います。
CPU負荷
ISO Bのサンプル楽曲を再生中のCPU負荷です。
SD3内部でリバーブ等のエフェクトを追加していますが、5~7%を推移しており、動作は軽快です。
●PCスペック
- OS:Windows10 64bit
- CPU:AMD Ryzen 9 3900X [3.8GHz/12Core]
- メモリ:96GB
- DAW:Studio One6.5
- サンプリングレート・解像度:48kHz・32bit float
- バッファーサイズ:1024samples
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Discrete4
まとめ
以上が、Toontrack Stories SDXのレビューです。
私にとっては理想のドラム拡張音源です。本当に素晴らしい製品ですね。
本文中では、メモリ容量を食うプリセットがある。ハイハットの種類が少ない。という欠点は挙げましたが、それらの欠点を補って余りある程にオールマイティに使える音源だと思います。
SDXの中で……というか、ドラム音源の中でもずば抜けておすすめの音源です。
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