oeksound soothe2レビュー 耳障りな音を軽減!
oeksound soothe2は、不快な音を軽減できるプラグインです。
- ピーキーで耳障りな高音域を自然にする。
- 中低音のモコモコを軽減させる。
- 歯擦音を軽減させる。
など、問題のある素材をいとも簡単に解決させることができます。
サウンドを聴きながら効果を確認していきましょう!
音で効果を確認!
ピーキーで耳障りな高音域を自然に
次のサンプル楽曲は、UVI Toy Suite用に作ったサンプル楽曲です。
リコーダー・シロフォン・ベルに対して、soothe2を使いました。
全体的に耳に痛い部分がマイルドになり、聞きやすくなっています。
soothe2の使い方はシンプルです。
まず、耳に痛い部分を、EQ的なUI上で指定します。
例えばリコーダーであれば2,000~4,000Hz辺りが耳に刺さるため、その部分を持ち上げています。(持ち上げるほど、その帯域に対するリダクションが強くなります。)
全体でどれくらい軽減させるかは、左側にあるdepthで調整します。
ボーカルの中低音のモコモコを軽減させる
これも実際に聞いていただきます。
ボーカルの中低音域のもっさりとした部分に耳を傾けましょう。
④は、スッキリと聞きやすいサウンドになっていますね。
soothe2は、指定した帯域内で突出している周波数&その倍音を自動で判定して軽減してくれます。
帯域が固定されているダイナミックEQよりも便利な部分です。
歯擦音の軽減
ディエッサーとしての使い心地も見てみましょう。
ディエッサーに捧ぐ歌
酢飯好きな彼女 寿司屋勤め素敵さ
〆たサバとカサゴ 蕎麦をすすって
特に「寿司」「〆た」の「し」が耳に刺さり痛いですね。
かなり自然に軽減できているのが分かります。素晴らしいですね。そしてなぜか抜けも良くなっているように感じます。
プリセットも充実しています。
サイドチェインでも使える!
サイドチェインとは、別のトラックの音をトリガーにしてかける手法です。
次の音源は、トランペットとピアノのトラックです。
トランペットがピアノに埋もれて、聞こえづらいように思います。
そこでピアノにsoothe2を挿し、トランペットをトリガーにしてサイドチェインで動作させてみます。
トランペットが鳴っている時に、ピアノにリダクションがかかることで、トランペットが抜けて聞こますね!
トランペットの活きる部分が自動判別されてリダクションされるので、イキイキして聞こえます。
サイドチェイン用プラグイン比較
サイドチェインEQとして有名なWavesfactory Trackspacerだとこんな感じに。
トランペットは聞きやすくなっていますが、ピアノの帯域を大きく削りすぎているような印象があります。(ナレーションなどでは、これくらい削ったほうが良いかもしれません。)
また、Sonible Smart:Compも、サイドチェインコンプとして優秀です。
*現行製品は、Smart:Comp2にアップグレードされました。
今回比較して、soothe2はトランペットになにかかけたわけではないのに、何故かトランペットの音が良くなって聞こえるように感じました。
Smart:Compは、AIが自動的に判別して設定してくれる楽さがある反面、どの帯域をより減らすかの裁量はありません。
soothe2は、より強調して帯域を減らしたい部分を、自分で選択できる自由さがありますね。よりクリティカルに原音の美味しい部分を軽減してくれるように感じました。
操作Tips
パラメーターの詳しい内容については、国内正規代理店SONICWIREの購入者が見られる日本語マニュアルをご覧頂くのが良いと思います。
ここでは分かりづらい2つのパラメーターについて触れておきます。
Sharpness
上げると切り口が深く狭くなります。
シャープネスを上げると、よりクリティカルに減衰されるようになります。
Softモードでシャープネスを高くしても、満足に減衰できない場合は、シャープネスを下げてハードモードに切り替えましょう。
Selectivity
- 0:満遍なくリダクションを行う。
- 10:最も目立つ音のみを処理する。
広い範囲の音を整音する場合は、0に近い方が良いように思います。
とはいえ、値を決めるのが結構難しいので、ノブを回しながら耳で判断するのが一番ですね。
過敏に音が変化するため、かけすぎ注意
depthをいじるだけでも簡単に、音が変化し、減衰しすぎてしまいます。
LetiMix / GainMatchを使うなど、soothe2を使った後の音が原音の音量と同じようにして聴き比べたり、音が痩せ過ぎてはいないか、全体とのバランスを聞いたりするのは必須です。
リファレンスを使ったり、少し時間を置いて聴き直したりするのも有効ですね。
他社プラグインとの比較(2023年8月追記)
soothe2対抗プラグインは?
soothe2の対抗プラグインは、私の知る限りだと、下記のとおりです。
- baby audio / Smooth Operator
- Mastering The Mix / Reso
- Techivation / M-Clarity(リンクはレビュー記事へ)
- Techivation / M-De-Esser(リンクはレビュー記事へ)
この内、私が触ったことのないのは、Mastering The Mix / Resoですので、発言は控えます。
Smooth Operatorは、soothe2を持っていない時に安価な代用として購入したものですが、挙動は全く違い、非常に難しいと感じるプラグインでした。簡単に削りすぎてしまい、音が破綻しやすい印象です。
と言っても、soothe2自体も、簡単なわけではないのですが……。
Techivation社のM-Clarity・M-De-Esser
イギリスのディベロッパーTechivation社から、製品を提供を頂き、soothe2と役割が似ている2つのプラグインと比較してみました。
中低域以下専用のクリーニングプラグインM-Clarity(2023年5月発売)。
高域専用のクリーニングプラグインM-De-Esser(2023年8月発売)の2つです。
思えば、soothe2は大きく分けて2つの処理なんですよね。「低域のもたつきを取る。高域の耳障りな成分を取る。」 Techivation社は、この2つの役割をプラグインを分けることで、それぞれに最適なパラメーターを配置することで、操作を簡単にしました。
soothe2は、2020年6月発売です。約3年の月日を経て、他社プラグインがどこまで技術を上げてきたか。というのは興味深いところだと思います。
M-Clarityとの比較
ここでは録音したアコースティックギターにかけてみます。
あえてマイクの近くで集音して、RECしました。近接効果(マイクに近くなると低音が増幅されて集音される効果)により、素材はもこもこして聞こえます。
⑫soothe2の処理はうまくいったのではないかと思います。高音域は原音に干渉せず、低音域の濁りだけを取り除けました。
一方、⑬M-Clarityは高音域がさりげなくキラキラとしているような印象を受けます。これは、M-Clarityの特徴と言っても良さそうです。
私の検証では、中低音の処理においては、soothe2の方が、原音そのままの印象ですっきりさせる印象です。
それでは高域の処理はどうでしょうか?
M-De-Esserとの比較
比較条件は、以下の通り。
- M-De-Esser・soothe2は、5箇所に使用。
- 挿したのは、笛・グロッケン・シロフォン・エッグシェイカー・マスター。
- soothe2はオーバーサンプリング4倍。CPU負荷約16%。
- M-De-Esserは、オーバーサンプリング機能がありませんが、Gearspace上での説明で「M-Clarityにオーバーサンプリング(OS)が搭載されていないのは、スペクトルシェイピングは、OSの有無で音に変化がないため」と、同様の理由と思われます。CPU負荷は2%ほど。
それでは聞いてみましょう。
聴き比べると、⑮soothe2の音源では不要なアーティファクト(エフェクト処理によるノイズ)が発生し、ザラザラと聞こえるように思います。ただし、soothe2は操作が難しいプラグインであるため、私の設定に全く問題がないと言い切ることは出来ません。
soothe2に比べると、M-De-Esserはサウンドがなめらかなのがお分かり頂けるかと思います。処理しているのに、あたかも処理していないように聞こえると言いますか……。
そして、操作がsoothe2に比べると、飛躍的に簡単です。
上記は私の感想となりますので、実際のサウンドの優劣については、読者の皆様に任せたいと思います。
Techivation社との比較まとめ
まとめると次のようになります。
私的には、M-De-Esserの音質の変化が衝撃だったので、高域の処理についてはsoothe2を使うことは少なくなりそうな気がしています。
soothe2の一番の押しポイントは、やはりサイドチェイン機能ですね。私は、ドラムのキックに合わせて、低域をダッキングする場合は、ファーストチョイスがsoothe2です。
サイドチェイン機能の競合は、Wavesfacoty TrackSpacer・Sonible Smart:comp2となりますが、soothe2が一番思い通りに操作できると感じています。ダッキングしていると気付かせないダッキングができるのがsoothe2の強みです。
……と思っていたら、Techivationからサイドチェイン専用エフェクトのM-Blenderが発売となりました。こちらSoothe2との聴き比べについては、M-Blenderのページから御覧ください。
CPU負荷
動作自体は軽快ですが、オーバーサンプリング2倍で8%と、そこそこCPUを食います。
レイテンシーもそこそこありますが、これだけ自然なサウンドを作れるプラグインなので、致し方ないかな……と。
●PCスペック
- OS:Windows10 64bit
- CPU:AMD Ryzen 9 3900X [3.8GHz/12Core]
- メモリ:64GB
- DAW:Studio One5.5
- サンプリングレート・解像度:48kHz・32bit float
- バッファーサイズ:512samples
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Discrete4
まとめ
以上が、oeksound soothe2のレビューです。
値段は張りますが、ここまで素晴らしい魔法のようなプラグインは滅多にお目にかかれないレベルです。
エンジニアなら必須。作編曲家でも、使いにくいライブラリを使えるサウンドに変えられる点で、買いのプラグインです。
競合プラグインか、soothe2か、どちらかは持っておいて損はありません。