Blackadder Chord を手軽に使おう!
Blackadder Chordは、2017年に命名されたコードで、様々な文脈で読み取れるおもしろい性質を持っています。
試しに、下記進行2小節目のCblkの響きを聞いて確かめてみましょう。
不思議な響きがしますよね。
本記事では、手軽にBlackadder Chordを取り入れる3つの方法をお届けします。
前置き
シリーズ紹介
本記事はシリーズ記事で、コード理論上級編の2記事目です。
本記事には、音程やセカンダリードミナント、裏コードなどの知識が必要です。分からない方はコード理論中級編をご覧ください。
本記事を書くにあたって
Blackadder Chordを深く学ぶにあたって、SoundQuest様の記事を参考にさせて頂きました。
本記事は、「気軽にBlackadder Chordを楽しむ楽曲制作者が増えるように」という思いから書きました。
より深く学びたい方は、Blackadder Chordの細かな分類や使い方のヒントが満載なSoundQuest様の記事をぜひご参考下さい。
Blackadder Chordとは
Blackadder Chordの構成音
Blackadder Chord(ブラックアダーコード)は、2017年にJoshua Taipale氏により命名されたコードです。イキスギコード・田中aug・分数augなど、様々な呼称を持っています。
構成音は、下記の通りです。
- ○blk:R・9・#11(♭5)・m7
構成音には、三度が含まれておらず、メジャー・マイナー、どちらのコードか分かりません。だからこそ、色々な解釈ができるコードです。
試しにCblkを違う表記をしてみましょう。
このように、Cblkを3つの違うコードとして捉えることができました。
- F#aug/C
- C7(9,#11,omit3・5)
- Cm7(♭5,9,omit3)
Blackadder Chordの表記
○blkコードをどういう意図で使っているのかを伝えるためには、blkではなく、上記3つの表記をした方が良い場合もあります。
しかし、例えばギターフォームで、F#aug/Cというコード表記で考えるより、Cblkと捉えた方が楽に押さえられるなどのメリットもあります。
どちらにせよ、Blackadder Chordを使う際には、どういう意図で使っているのかを考えることで、より扱いやすくなるでしょう。
ギターにおけるBlackadder Chordの押さえ方
Blackadder Chordの使い方
ここからは、Blackadder Chordの使い方を見ていきます。この記事で紹介するのは3つの使い方です。
- 裏コードの代理
- セブンスコードの代理
- m7(♭5)の代理
順番に見ていきましょう。
裏コードの代理
裏コードは、ルートが半音下のコードに解決できるセブンスコードです。
3小節のFM7に解決しているので、FM7から見てルートが半音上のセブンスコードF#7を2小節目に置いています。
さて、Blackadder Chordは、裏コードと差し替えることができるので、やってみましょう。
このように、○blkはルートが半音下のコードへのドミナントモーションに使うことが出来ます。
この時、F#blkは、F#7(9,#11,omit3・5)とも、Caug/F#とも捉えることができます。
F#7(9,#11,omit3・5)の成り立ち
Key=Cにおける裏コードF#7のアヴェイラブルテンションは、9・#11・13です。
F#7にテンション9・#11を付けて、M3(長三度)・P5(完全五度)を省略すると、F#7(9,#11,omit3・5)=F#blkとなります。
Caug/F#の成り立ち
次の進行例を見てみましょう。
2小節目のC7がFM7に向かうためのセカンダリードミナントとして置かれています。
Key=Cの時、セカンダリードミナントC7のアヴェイラブルテンションは、♭9・9・#9・#11・♭13・13です。(【参考】アヴェイラブルテンション表)
では、このC7にテンション♭13を付け、五度・七度を省略して、Caugにしてみます。
さて、この状態で、Caugの最低音に裏コードの最低音を使ってみます。裏コードを探すには、五度圏表の中心を挟んで反対側のコードを見ればOK。
Cの反対側は、F#ですね。最低音にF#を使い、Caug/F#としてみます。
Caug/F#=F#blkです。
セブンスコードの代理
Blackadder Chordの2つ目の使い方は、セブンスコードの代理です。
次のコード進行のC7は、セカンダリードミナントです。
このC7をCblkに差し替えてみます。
Key=Cの時、セカンダリードミナントC7のアヴェイラブルテンションは、♭9・9・#9・#11・♭13・13です。テンション9・#11をつけM3・P5を省略し、C7(9,#11,omit3・5)という文脈で使っているわけですね
このように、セブンスコードを○blkに差し替えて使うことができます。
ただし、⑥の場合、テンションが付いているのがCblkだけなので、浮いて聞こえるように思います。この場合は、前後のコードにもテンションを付けて、テンション感を揃えて使った方が良さそうですね。
セブンスコードの候補
コード進行中でセブンスコードとしてよく使われるコードには、下記のコードがあります。
- Ⅴ7
- セカンダリードミナント
- 裏コード
- モーダルインターチェンジ中のセブンスコード:例えば♭Ⅶ7(*Key=C:B♭7)
様々なセブンスコードをBlackadder Chordにして、試してみましょう!
m7(♭5)の代理コード
前述の通り、○blkは○m7(♭5,9,omit3)と、m7(♭5)にテンション9を付け3度を省略したコードと捉えることも出来ます。
○blk・○m7(♭5)の違いは一音だけです。
そこで、m7(♭5)をBlackadder Chordに差し替えてみたいと思います。
元々のBm7(♭5)のアヴェイラブルテンションに、テンション9:C#(ド#)は含まれていません。
CメジャースケールにもC#が含まれていませんから、⑨Bblkは一瞬転調したかのような、不思議な雰囲気になりますよね。 もしかしたら、⑨に違和感を覚える方もいるかもしれません。
そこで、内声の動きに気を配りながら、テンションで味付けしてみます。
⑩では、1~3小節の内声に「D→C#→C→B」という半音下降の動きを加えています。⑨より自然な進行に聞こえますよね。
このように、m7(♭5)コードをBlackadder Chordに差し替えることが可能です。
繰り返しになりますが、Ⅶm7(♭5)・リレイテッドⅡm7(♭5)のアヴェイラブルテンションにテンション9は含まれませんので、ボイスリーディングによる配慮を加えると、より自然に使えます。
Blackadder Chord事例集
Ⅱmに対するBlackadder Chord
サブドミナントⅡm(Key=CではDm)をBlackadder Chordにした場合、おもしろい効果が生まれます。
この進行の場合、Dblkはどう捉えることができるでしょうか?
- 3小節目のG7に対するセカドミ:D7(9,#11,omit3・5)
- 3小節目のG7に対するリレイテッドⅡm7(♭5):Dm7(♭5,9,omit3)
- 同主調Key=Cmのサブドミナントマイナー借用:Dm7(♭5,9,omit3)
- 3小節目のG7に対する裏コードA♭7の代理:A♭aug/D
この進行だけを見ると答えが出ません。どの解釈も合っているし、重なっている。
あえて多様性を持たせることで、Blackadder Chordの魅力が際立っているように思います。
連続するBlackadder Chord
リレイテッドⅡm7(♭5)を伴うセカンダリードミナントや、セブンスコードが連続するエクステンデッドドミナントを、Blackadder Chordが連続する進行に変化させることも可能です。
裏コード化してもおもしろいですね。
片方だけを裏コード化するのも面白いので、試してみてください。
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まとめ
以上が、Blackadder Chordの解説です。
難しいことを考えずに、まずは気軽に試してみることで、手軽に新しい響きを取りいれられると思います。
ぜひお試しを!