短調とは? マイナーキーを攻略!コード進行を自由に作ろう。
長調(メジャーキー)に比べると、短調(マイナーキー)は非常に奥が深く難しく感じますよね。
本ページでは、マイナーキーをできるだけ噛み砕いて、実践で使えるように落とし込んでいきます。例えば、次のコード進行は、Key=Amのコード進行です。
もし理解できないようでしたら、この記事は参考になるはずです。記事後半にはフローチャートもあるので、自由にマイナーキーのコード進行を作れるようになりますよ。
シリーズ紹介
本記事はシリーズ記事で、コード理論中級編の五記事目です。
この記事を読むためのおさらい
コードは、3音以上の違う高さの音の重なりのことで、ローマ字と数字で示されます。
コードの繋がりをコード進行と言い、コード進行を作るには、まずキーを決める必要があります。
キーに合うコードであるダイアトニックコードは、五度圏表で簡単に見つけられます。決めたキーを中心に扇形に囲うだけです。
ダイアトニックコードには、主役のトニック、主役に向かいたくなるドミナント、脇役のサブドミナントなど、コードの役割があります。
ディグリーネーム(度数表記)を覚えることで、移調した時にもコードを把握しやすくなります。
本記事内に出てくる、augM7、テンションなどのコードが分からない方は、コードの応用をご覧ください。
メジャーキーとマイナーキーの違い
そもそもキーとは?
そもそもキーって、何なのでしょう?
コード理論初級編「キー・スケール・ダイアトニックコード」で、キーについて次のように説明しました。
- 主役の音を表す
- 主役の音から始まる、音の連なり(スケール)を示す
Key=Cなら?
例えば、Key=Cの場合、主役の音はC(ド)です。
Cメジャースケールは、Cから始まり、「全全半全全全半」の並び方になるため「CDEFGAB(ドレミファソラシド)」となります。
そして、このメジャースケールを並べて、一つ飛ばしで音を重ねると、Key=Cのダイアトニックコードを作ることができます。
Key=Amなら?
主役の音はAです。
マイナースケールは、主役の音から「全半全全半全全」という並び方なので、Aマイナースケールは「ABCDEFGA(ラシドレミファソラ)」となります。
Aマイナースケールは実は略称で、正式名称は、Aナチュラルマイナースケール(自然的短音階)と言います。大事なことなので、覚えてきましょう。
そして、こちらも一つ飛ばしで音を重ねると、ダイアトニックコードが出来上がります。
メジャーキーとマイナーキーの違いは役割
メジャーキーもマイナーキーも、ダイアトニックコードは同じものばかりなので、違いは無いように思えます。しかし、実は役割が変わっています。
下記の図は、五度圏表を元にダイアトニックコードを並べ、役割に応じて色で分けたものです。色の違いを見てみましょう。
メジャーキーにおけるダイアトニックコードの役割
マイナーキーにおけるダイアトニックコードの役割
大きな変化は3つ。
- Em7の役割が、トニックからドミナントマイナーになった。
- Bm(♭5)はメジャーキーではドミナントだが、マイナーキーではサブドミナントマイナーである。
- ドミナントと違い、ドミナントマイナーは、主役に向かう力がさほど強くない。
特に大事なのは、③ドミナントマイナーは、トニックマイナーに向かう力がさほど強くないことです。
ドミナントマイナーは脇役。
メジャーキーでは、ドミナントがⅠ(トニック)に向かいたくなることが大きな特徴です。
しかし、マイナーキーにおけるドミナントマイナーは、Ⅰm(トニックマイナー)に向かう力がさほど強くありません。
メジャーキーにおけるドミナント終始に比べて、はっきりとした終止感を感じませんよね?
ナチュラルマイナースケールで作ったダイアトニックコードだけでは、主役と脇役1・脇役2という役割しかない、日常アニメ的な「のほほんとした展開」しか作ることができないのです。
新たなマイナースケールの誕生
ドラマチックなマイナーキーの楽曲を作るためには、主役に強烈に向かいたくなるドミナントコードが必要です。
そのために、昔の音楽家たちは新たなマイナースケールを作ることにしました。それが、新たな2つのマイナースケールです。
- ハーモニックマイナースケール:和声的短音階
- メロディックマイナースケール:旋律的短音階
つまり、マイナーキーには、3つのスケールと、そのスケールそれぞれにダイアトニックコードが7個ずつ存在することになります。
まとめたものが下記のようになりますが、詳しくは次からの項で説明します。(今すぐ覚えなくても大丈夫。)
ハーモニックマイナースケール
ハーモニックマイナースケールとは
ハーモニックマイナースケールは、ナチュラルマイナースケールの7度の音が半音上がり、次のようになります。
「全半全全半 3半音 半」という並びになります。
ハーモニックマイナーのダイアトニックコード
変わったのは、#が付いた4つのコードです。役割も見てみましょう。
トニックマイナーの変化
トニックマイナーの変化は2つ。
- Am7(Ⅰm7) → AmM7(ⅠmM7)
- CM7(♭ⅢM7) → CaugM7(♭ⅢaugM7)
AmM7はコードの終わりや、クリシェ(コードの構成音を一音ずつ変化させるテクニック)などでよく使われます。
CaugM7の使用頻度はそこまで高くありません。(が、新しい響きが生まれる可能性もあるので、選択肢から完全に外すこともないと思います。)
このようにマイナーキーでは、ナチュラルマイナーを基本に、一時的にハーモニックマイナー・メロディックマイナーを行き来するような構造となります。
FM7で、ナチュラルマイナー・ハーモニックマイナーと2つ並んでいますが、これについては後述します。
ドミナントマイナーからドミナントへ。
ドミナントマイナーの変化は2つ。
- Em7(Ⅴm7)→ E7(Ⅴ7)
- G7(♭Ⅶ)→ G#dim7(Ⅶdim7)
機能もドミナントに変化しました。
これでドラマチックなコード進行を作れるようになりました。実際の例を確認してみましょう。赤い矢印がドミナントモーション(ドミナントからⅠへの動き)です。
赤矢印の部分で、ドミナントからⅠmに解決しているのが分かりますね。
サブドミナントマイナー
サブドミナントマイナー「FM7・Dm7・Bm7(♭5)」は、ナチュラルマイナー・ハーモニックマイナー、どちらのダイアトニックコードでもあります。
ですから、「FM7・Dm7・Bm7(♭5)」上のメロディーでは、ナチュラルマイナー・ハーモニックマイナーどちらのスケールも使えます。
マイナーキーのドミナントを攻略しよう
ドミナントについて、まとめてみます。
①マイナートゥーファイブワン
ディグリーネームで見ると、Ⅱm7(♭5)→V7→Ⅰm7です。この流れをマイナートゥーファイブワンと言います。
マイナーキーでは大変良く出てきます。
②Ⅶdim7→Ⅰm
dim7は使い方の分からない筆頭コードの一つですが、ここでは極めてシンプルです。Ⅶdim7からⅠmに向かわせることができます。
ダイアトニックコードに囚われないで
ハーモニックマイナースケールの構成音を組み合わせることでできるダイアトニックコード以外のコードがあります。
Dm7(♭5):Ⅳm7(♭5)
AハーモニックマイナーのⅣm7はDm7です。しかし、スケール音を組み合わせることで、Dm7(♭5):Ⅳm7(♭5)を作ることも出来ます。
Dm7(♭5)と言えば、Key=Cの時に、Key=Cmのサブドミナントマイナーとして借用するテクニックでも登場しました。(詳しくは、サブドミナントマイナーの記事をご覧ください。)
つまり、Key=Am上のDm7(♭5)に載せるメロディーには、Aハーモニックマイナースケール・Cナチュラルマイナースケール、どちらのスケールも当てはめられる可能性があります。
次の例で見てみましょう。
上段・下段ではコード進行は同じです。しかし、2・5小節目で、あてはめているスケールを変えました。
印象の違いを聞き取ることはできるでしょうか?
Fm6:♭Ⅵm6
m7(♭5)と対になるのが、m6コードです。
Fm6も、Cナチュラルマイナースケール・Aハーモニックマイナースケールの構成音で作ることが出来ます。メロディーは、どちらも当てはめられる可能性がありますね。
メロディックマイナースケール
ハーモニックマイナーは、スケールの途中で三半音上がる箇所があり、歌い手にとっては歌いにくいスケールです。
そのため、歌いやすくするために生まれたのが、メロディックマイナースケールです。
メロディックマイナースケールの音階
メロディックマイナーは6度の音を半音上げ、「全半全全全全半」という並びになります。
Aメジャースケールと三度の音が半音違うだけのため、Aメロディックマイナーは明るい印象も漂います。聴き比べてみましょう。
メロディックマイナーのダイアトニックコード
役割や位置が変わっています。
F#m7(♭5):Ⅵm7(♭5)
役割は、トニックマイナー(主役)です。
クリシェ(構成音の一音だけ変化させるテクニック)の終わりでよく出てきます。
F#m7(♭5)で、落ち着いた感じがしませんか? これがトニックマイナーの効果です。
Bm7:Ⅱm7
Aメロディックマイナー時のBm7:Ⅱm7は、サブドミナントとして捉えます。
Key=AmのドミナントE7:V7に対する、リレイテッドⅡmと捉えるのもありですね。
次に説明するD7と一緒に使用例を挙げます。
D7:Ⅳ7
D7:Ⅳ7の役割はドミナント……。ですが、色々な意味づけが出来るコードです。
- Amに向かう力は弱いので、ドミナント機能を持たないドミナント
- ナチュラルマイナー時のV7:G7に対するセカンダリードミナント(ドッペルドミナント)
- Aドリアンモードからの借用(上級編:モーダルインターチェンジで解説中)
……など。どの解釈も合っていますし、文脈によって自分自身で意味づけをする必要があります。
メロディックマイナーの部分は、陽気な雰囲気すら漂う、おもしろい変化です。
G#m7(♭5):Ⅶm7(♭5)
G#m7(♭5):Ⅶm7(♭5)は、ドミナントです。
Key=Cの時、ディグリーネームの同じⅦm7(♭5):Bm7(♭5)は、役割としてはドミナントでも、主役であるCに向かう力は弱かったですよね。
AメロディックマイナーにおけるⅦm7(♭5):G#m7(♭5)も同じで、役割としてはドミナントですが、主役であるAmに向かう力はそんなに強くありません。
自然と組み込めることもあるので、選択肢の一つとして捉えておきましょう。
ダイアトニックコードに囚われないで2
メロディックマイナースケールでも、構成音を組み合わせ、よく使われるコードがあります。
Am6(Ⅰm6)
Am6(Ⅰm6)は、特にコード進行の終わりなどでよく使われます。
M7(長七度)を加えた、AmM7(13)もいい感じです。
マイナーキーのまとめ
今まで説明してきたことをまとめます。
マイナーキーのフローチャート
おさらいですが、マイナーキーでは、ナチュラルマイナーを基本に、一時的にハーモニックマイナー・メロディックマイナーを行き来するような構造となります。
そのため、基本的にコード進行の始まりは、ナチュラルマイナーのダイアトニックコードの方が、コード進行を作りやすいです。
他のキーのフローチャートは、下記記事をご参考ください
【基本】マイナーキーのコード進行例
フローチャートのオレンジ色の矢印に従ってコードを並べるだけで、かっこいいマイナーキーコード進行を作ることが出来ます。
【応用】マイナーキーのコード進行例
テンションを交えて、構築した例です。
テンションを加えることで、微妙な感情まで表現することが可能です。
テンションの付け方については、今後別の記事で紹介します。
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まとめ
お疲れさまでした。
奥の深いマイナーキーの世界。同じコード進行でも、別のスケールをあてることができるなんて、おもしろいですよね。
たくさんのマイナーキーの曲を作ってみてくださいね。
次の記事は、dim7の使い方6選です!