sonible smart:compレビュー AI自動コンプでモダンサウンドを。
sonibleは、ヨーロッパのオーストリアを拠点としたディベロッパーです。
smart:EQ・smart:reverbなど、自動的に設定を行ってくれるプラグインが有名で、今回紹介するsmart:compでは、AIが自動的にコンプレッサーの設定を行ってくれます。
コンプ初心者におすすめできるのはもちろん、コンプ中級者以上にも時短で役に立つプラグインと言えるでしょう。
*2022年7月27日、Smart:Comp2が発売となりました。
詳しくは、Smart:Comp2の記事をご参考下さい。
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smart:compの概要
smart:compの主な使い方
smart:compの使い方は、とっても簡単。
使いたいトラックに挿して、楽器を選択して、再生しながら●ボタンを押すだけです。
たった数秒で、AIが自動的にコンプレッサーの設定をしてくれます。
smart:compを音で確かめよう。
今回は検証のために、8小節の楽曲を作ってみました。
- トランペット:AcousticSamples Vhorns
- アコースティックギター:生録
- ピアノ:Spectrasonics Keyscape
- ベース:Modo Bass
- ドラム:Superior Drummer3
この5トラック全てにsmart:compを入れて検証します。
GainMatchというプラグインで、smart:compの前後で音量が変わらないように設定しています。
①では、全てのトラックが暴れ馬状態です。特に分かりやすいのがトランペットで、大きくなったり小さくなったりして、聞きにくいことこの上ないです。
②では、コンプレッサーの効果で、出すぎている音量が抑えられつつも、ガッツのある音でまとまり、前に出てきているのが分かります。
AIによる自動設定のコンプとは思えない仕上がりですよね。
AIの設定は、アタック遅め・リリース長めになりがち。
smart:compのAI設定は、アタックが遅め・リリースが長めにかかる設定になることがほとんどです。
ドラムの設定を見てみましょう。
アタックが49msと、遅め。主に、ドラムとスネアに反応してかかっています。
リリースは、フィル以外は、次の音にギリギリかからないような設定になっていますね。
続いては、ピアノの設定。
こちらもアタックが80msと遅く、リリースが180msと長めですね。
「アタック遅め・リリース長め」って、つまりどういうこと?
アタックが遅いということは、音の立ち上がりが圧縮されないで通り過ぎることを意味します。
リリースが長いということは、その分音が圧縮される時間が長いということです。
これを組み合わせると、次のようになります。
そのため、音にガッツがある感じで聞こえる。というわけですね。
Spectral Ducking機能が凄まじい。
普通のコンプレッサーは、全帯域が圧縮されます。
しかし、smart:compはSpectral Ducking機能がついています。
選んだプロファイルに基づいて判断しているようで、楽器に応じて、より良く聞こえるように自動的に作用されます。
Spectral Duckingの電源マークをオフにすることで、普通のコンプレッサーのようにも作用します。
サイドチェインが素晴らしい!
サイドチェインとは、別のトラックの音をトリガーにしてかける手法です。
例えば、トランペットの音をトリガーにして、ピアノにサイドチェインコンプをかけるとします。
トランペットが鳴っている時にピアノの音量が下がることで、トランペットが抜けて聞こえてきます。
トランペットが無理なく聞こえてくるのが、お分かり頂けると思います。
サイドチェインでも、AIによる自動の設定をしてくれます。
Spectral Ducking機能により、かなり細かい帯域に分けて、コンプをかけてくれるのが分かりますね。
同じようなプラグインで、サイドチェイン専用の32バンドマルチバンドEQ「Wavesfactory Trackspacer」を以前ご紹介しましたが、聴き比べてみましょう。
どちらもトランペットが聞こえやすくなっていますが、Wavesfactory Trackspacerはピアノの帯域を大きく削りすぎているような印象があります。
画像を見ても、大きく削っているのが分かりますよね。
Trackspacerは、手軽なプラグインではあるのですが、音質重視の場合のサイドチェインコンプは、smart:compに軍配が上がります。
ただ、smart:compは、40msほどレイテンシーがあります。(一方Trackspacerは、ゼロレイテンシー・MS処理が可能。)
また、BGMにナレーションを乗せるなど、極端に目立たせたいトラックがある場合は、smart:compだと上品にかかりすぎる場合があるので、Trackspacerを使うのが適した場面もあります。
smart:compの苦手な処理とは
smart:compのAI処理にも、苦手な処理があります。
それは当然ですが、アタックが早く、リリースが短めの設定です。(だって、AIがそう設定しないから。)
コンプレッサーの主な役割は、設定している値(スレッショルド)より出ている音を抑えるというものですが、各値の設定によって、色んなことができるエフェクトです。
- 音量感を揃え、音を前に出す。
- 音量感を揃え、音を後ろに引っ込める。
- 整音する。(一瞬、飛び抜けて大きい音だけを小さくして自然にする、など)
- アナログ感・歪み感を付与する。
基本的にsmart:compのAI処理は、①の処理しかしてくれないと思って下さい。
もちろん自分で数値を設定することも出来るので、その場合は、②③の処理も可能です。
④アナログ感・歪み感の付与は、アナログコンプレッサーをエミュレートしたプラグインやサチュレーターを、別途使いましょう。
苦手な処理具体例:②後ろに引っ込める。
ミックス処理をしていると、「この楽器もう少し後ろに配置して、目立たせたくない。」という場合があります。
そんな時にもコンプは活用できます。
アコギの音に注目して、次の2つの音源を聴き比べてみましょう。
アコギがややくぐもって、後ろに下がった音になっているのが分かりますよね。(このミックスが正解というわけではなくて、ただ単純にコンプで後ろに引っ込ませる効果を感じてもらうための音源です。)
このような処理の場合は、私は使い慣れているFabfilter Pro-C2を使うことが多いです。
苦手な処理具体例:④アナログ感・歪み感の付与
アナログ感の付与されるコンプと差し替えてみたので、聞いてみましょう。
下の音源は、アナログコンプのエミュレートを多く使ってみました。そのため、重心が下がってかなり温かい音になっていると思います。(正直EQなどの処理して整えたいのですが、今回は比較のためコンプのみ変えて掲載しています。)
このようなアナログ感は、smart:compで出すのは難しいです。
ですが、モダンなサウンドでしたら、smart:compだけでも十分です。
smart:compまとめ
メリット
- たった数秒でAIが最適なコンプ設定をしてくれる。
- 音が前に出て、モダンなサウンドには最適。
- サイドチェインで使うと、かなり自然に音を前に出せる。
デメリット
- レイテンシーが40msほどあるため、作編曲の時には使いづらい。
- OpenGLを使用しているためか、プラグインを最初起動する時に一瞬画面が止まり、プチッとノイズが乗る。
- 音を前に出す以外の処理はしてくれない。アナログ感を求めるなら、別のコンプを。
総括
以上が、smart:compのレビューとなります。
DAW付属以外のコンプレッサーをお探しの場合、smart:compはかなり有望なプラグインです。
特にサイドチェインで自然なダッキングを行うのは、おすすめです。
設定の値もコンプの勉強になりますので、コンプが苦手な方には良い買い物になるはずですよ。
*2022年7月27日、Smart:Comp2が発売となりました。
詳しくは、Smart:Comp2の記事をご参考下さい。
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