音楽資料集

ドミナントモーションの基本・応用・一覧まとめ

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ドミナントモーションの基本・応用・一覧まとめ:サムネイル画像

ドミナントモーションは、ドミナント(不安定な)コードから、トニック(安定している)コードへの動きのことを言います。

ドミナントモーションを理解すると、コード進行を自由に操れる範囲が広がります。

  • コード進行のバリエーションが増える!
  • 自由にキーを転調できる!
  • コード進行の読解力アップ!

記事の最後には、ドミナントモーション一覧表が見られます。

ドミナントモーションとは

ドミナントモーションの基本

Key=Cにおいてのドミナントコードは、G7です。そして、G7が向かいたくなる先は、コードCですよね。

セブンスコードは、五度圏表の左隣のコードに向かいたくなる特徴があるのです。

五度圏表で、強進行・ドミナントモーションを表した図

この動きをドミナントモーション強進行と言い、「G7からCに解決した」と表現します。

しかし、ドミナントモーションは五度圏表左回りの動きに留まらず、色々なパターンがあり、本記事ではそれらをまとめています。

秘密はトライトーンにあり

ところで、なぜ「G7→C」で解決したように感じるのでしょうか?

その秘密は、セブンスコードの中にあるトライトーンの音程にあります。

トライトーン全音3つ分の音程(増四度・減五度)のことを言い、とても不安定な響きです。

コード表記で言うと、♭5・#11が、R(ルート)とトライトーンの関係になります。Bm7(♭5)FM7(#11)を聴いてみましょう。

Bm7(♭5)→FM7(#11):どちらもトライトーンを含んでいる。

とても緊張感のある響きですよね。

セブンスコードの場合は、コードの構成音の中にトライトーンが含まれています。

G7→C:シとファがトライトーン=とても不安定! ドとミは長三度の関係=安定した響きに解決!

セブンスコードの場合は、構成音R・M3・P5・m7の内、M3・m7がトライトーンの関係になります。

偽終止

ドミナントV7からⅠ以外のコードに向かうことを、偽終止と言います。特に、Ⅵmに向かうことを指す場合もあります。

Ⅴ7→Ⅵmの動きを、五度圏表で見てみましょう。

五度圏表:G7→Amの動き
G7→Am7:シとファがトライトーン=とても不安定! ドとミは長三度の関係=安定した響きに解決!

トライトーンが安定した長三度へと変化しているため、解決感を感じます。

ですが、G7→Cほどの解決感はありませんね。これは、ルートの動きが解決感に大きく作用することを意味します。

やはり、五度圏表における左回りの動きは、解決感が大きく感じるのです。

裏コード:トライトーンの利用

トライトーンを利用して、ドミナントモーションを作る手法に裏コード(サブスティテュートドミナント)があります。

裏コードは、五度圏表において、中心を挟んで反対側のコードを探せば、すぐに見つかります。

五度圏表:G7の裏コードのD♭7→Amの動き
G→D♭7→C:GとD♭7のトライトーンが共通

解決感を感じますよね。

裏コードは「D♭7→C」のように、ルートが半音下がる動きになるのが大きな特徴です。

マイナーコードに対するドミナントモーション

マイナーコードに対するⅤ7も、単純に五度圏表の右隣にあるコードをセブンスコード化すればOKです。

五度圏表:E7→Am7(Ⅴ7→Ⅰm7)Am7の右隣にあるEmをE7に変換!
E7→Am:ソ#とレがトライトーン=とても不安定。

しっかりドミナントモーションをかけて、解決している感じが出ていますよね。

この場合、E7は一時的にAハーモニックマイナースケール(A B C D E F G#)のコードとして使われていることになります。(詳しくは、マイナーキーの記事を参考。)

Key=Amのダイアトニックセブンスコード一覧
AハーモニックマイナーからE7を探してみましょう。

また、ハーモニックマイナーには、コード機能がドミナントのdim7コードもあります。

Key=Amで言えば、G#dim7です。こちらもⅠmへのドミナントモーションをかけることができます。

「G#dim7→Am」のように、dim7コードはルートが半音上のコードにドミナントモーションをかけられます。

また、dim7は短三度を重ねているコードなので、構成音の重ね方を変えるだけで、ルートの違う別のdim7になるという特徴があります。(詳しくはdim7解説記事にて)

転回することで「Ⅱdim7→Ⅰm」というように、ルートが全音上のdim7からドミナントモーションが可能です。

Bdim7→Am:シとファ、レとソ#がトライトーン

偽終止をマイナーキー目線から見ると

少し話が戻りますが、偽終止「G7→Am7」の動きを思い出しましょう。

Am7をⅠm7とした時、G7のディグリーネームはどうなるでしょうか?

偽終止をマイナーキー目線で見ると……:G7→Am7(♭Ⅶ7→Ⅰm7)

「♭Ⅶ7→Ⅰm7」という流れになっていますね。

実はこの♭Ⅶ7からⅠの流れは、メジャーキーでも解決感を感じる流れとなります。

今度は、ⅠM7:CM7に対して、♭Ⅶ7:B♭7からドミナントモーションをかけてみます。

B♭7→CM7:レとラ♭がトライトーン

かなり薄まってはいるものの、わずかながら解決した感じがしますよね。これも、五度圏表で見ると分かりやすいです。

五度圏表:B♭7→Cm7 Cm7の代わりに同じルートのCM7に、ドミナントモーションをかけている

B♭7が本来偽終止するのはCm7ですが、Cm7の代わりに同じルートのCM7に、ドミナントモーションをかけているというわけです。

Key=Cの時に、同主調であるKey=Cmのサブドミナントマイナー・ドミナントマイナーを借用するのはよくあることで、こちらの記事で詳しく解説しています。

ドミナントモーションのまとめ

今まで解説してきたように、ドミナントモーションはルートの流れが強く作用します。

そして、解決するのがメジャーコードかマイナーコードかは、あまり関係がありません。

  • Ⅴ7→Ⅰ(Ⅰm)
  • ♭Ⅱ7→Ⅰ(Ⅰm)
  • ♭Ⅶ7→Ⅰm(Ⅰ)
  • Ⅶdim7→Ⅰm(Ⅰ)
  • Ⅱdim7→Ⅰm(Ⅰ)

これらの動きを鍵盤・ギターの指板に図にすると、下記のようになります。

ドミナントモーションまとめ:鍵盤・ギター指板図 *ルートがCのコードに解決するコード

トゥーファイブと関連コード

トゥーファイブとは

ドミナントモーションと切っても切れないのが、トゥーファイブという手法です。

Ⅱm7→Ⅴ7→Ⅰという流れで使われ、トゥーファイブワンとも言われます。

Dm7→G7→CM7(Ⅱm7→Ⅴ7→ⅠM7)

この流れを五度圏表で見ると次のようになります。

トゥーファイブは、Ⅱm7→V7→ⅠM7(Ⅱm→V→Ⅰ)というコードの動きのことです。

Key=Cにおいては、Dm7→G7→CM7です。これを五度圏表で確認するとこのような動きになります。

五度圏表でトゥーファイブを解説した図:Dm7→G7→CM7

次のように考えても構いません。

五度圏表でトゥーファイブを解説した図:Dm7→G7→CM7:分かりやすく並び替え。

五度圏表において、左回りの動きをしているため、強い流れとなるわけですね。

マイナートゥーファイブ

マイナーキーのトゥーファイブをマイナートゥーファイブと言います。

五度圏表でマイナーコードへのトゥーファイブを解説した図:Bm7(♭5)→E7→Am7

こうしたⅡm7(♭5)→V7→Ⅰm7の動きを、マイナートゥーファイブ(マイナートゥーファイブワン)と言います。

とはいえ、解決するのがメジャーコードかマイナーコードかは、あまり関係がないので、

  • Ⅱm7→Ⅴ7→ⅠM7(Ⅰm7)
  • Ⅱm7(♭5)→V7→Ⅰm7(ⅠM7)

と、解決先がメジャー・マイナー、どちらでもうまくはまる可能性があります。

セカンダリードミナントとリレイテッドⅡm7

セカンダリードミナントは、ドミナントモーションを利用することで、ノンダイアトニックコードを進行に組み込むテクニックです。(こちらの記事で詳しく解説中。)

Key=Cの時、仮に目的のコードをFとすれば、Fを一時的にⅠとみなして考えます。

五度圏表でFM7に対するトゥーファイブを解説した図:Gm7→C7→FM7

Gm7→C7→FM7というトゥーファイブ進行が作れました。この進行をKey=C上で差し込めばOK。

この時、Gm7のことを、ただのⅡm7(Dm7)と区別し、リレイテッドⅡm7と呼びます。

Gm7(♭5)とした時は、リレイテッドⅡm7(♭5)と言います。

リレイテッドⅡm7の裏コード化

リレイテッドⅡm7も裏コード化することができます。

五度圏表:Gm7→C7→FM7を裏コード化して、D♭m7→G♭7→FM7
D♭m7→G♭7→FM7

裏コード・リレイテッドⅡm7ともに裏コード化する場合もあれば、どちらか片方を裏コード化することもあります。

そして、解決するのがメジャーコードかマイナーコードかは、あまり関係がないため、

  • ♭Ⅵm7→♭Ⅱ7→ⅠM7(Ⅰm7)
  • ♭Ⅵm7→Ⅴ7→ⅠM7(Ⅰm7)
  • Ⅱm7→♭Ⅱ7→ⅠM7(Ⅰm7)

が、導き出せました。

ⅣM7→Ⅴ7→ⅠM7

ポップスを作る上では、トゥーファイブと同じくらい頻度が高い進行が、「ⅣM7→Ⅴ7→ⅠM7」です。

五度圏表:FM7→G7→CM7(ⅣM7→Ⅴ7→ⅠM7)

マイナーキーにおいても、トゥーファイブ以外によく使われる動きがあります。

五度圏表:FM7→G7→Am7・Dm7→G7→Am7(♭ⅥM7→♭Ⅶ7→Ⅰm7・Ⅳm7→♭Ⅶ7→Ⅰm7)

解決するのがメジャーコードかマイナーコードかは、あまり関係がないため、

  • ⅣM7→Ⅴ7→ⅠM7(Ⅰm7)
  • ♭ⅥM7→♭Ⅶ7→Ⅰm7(ⅠM7)
  • Ⅳm7→♭Ⅶ→Ⅰm7(ⅠM7)

という流れを導き出せます。

トゥーファイブ・ドミナントモーションのまとめ

話が少し複雑になってきましたね。

これらをまとめたのが次の表となります。

ルートがC(Ⅰ)のコードに解決するコード一覧

これらの表に書いてある流れで、ルートがCのコードへのドミナントモーションを自由に作ることが出来ます。

例えば、

  • Dm7→D♭7→CM7
  • Fm7→G7→Cm7
  • A♭M7→D♭7→CM7
  • Dm7→Ddim7→CM7

などなど、左から順に使っていけば、Cがルートのコードに解決できます。

また、ドミナントモーションを使って転調する場合も、この表を使うことで色々なパターンを考えることができます。(転調についてはこちらの記事を参考。)

○m7(♭5)・セブンスコードは、Blackadder Chordに変換も可能なので、かなりのパターンが生まれます。(Blackadder Chordの解説記事

下記、ルートごとのドミナントモーションをまとめています。ご活用下さい。

各ルートに対してのドミナントモーション一覧

C

ルートがC(Ⅰ)のコードに解決するコード一覧

C#・D♭

ルートがC#(Ⅰ)のコードに解決するコード一覧
ルートがD♭(Ⅰ)のコードに解決するコード一覧

D

ルートがD(Ⅰ)のコードに解決するコード一覧

D#・E♭

ルートがD#(Ⅰ)のコードに解決するコード一覧
ルートがE♭(Ⅰ)のコードに解決するコード一覧

E

ルートがE(Ⅰ)のコードに解決するコード一覧

F

ルートがF(Ⅰ)のコードに解決するコード一覧

F#・G♭

ルートがF#(Ⅰ)のコードに解決するコード一覧
ルートがG♭(Ⅰ)のコードに解決するコード一覧

G

ルートがG(Ⅰ)のコードに解決するコード一覧

G#・A♭

ルートがG#(Ⅰ)のコードに解決するコード一覧
ルートがA♭(Ⅰ)のコードに解決するコード一覧

A

ルートがA(Ⅰ)のコードに解決するコード一覧

B♭

ルートがB♭(Ⅰ)のコードに解決するコード一覧

B

ルートがB(Ⅰ)のコードに解決するコード一覧

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まとめ

以上が、ドミナントモーションの基本・応用・一覧表です。

ドミナントモーションを制するものが、コード進行を制する!……とまでは流石に言いませんが、かなり便利に使える考え方です。

あなたの音楽活動がより楽しいものとなりますように!

こんな作品、作ってます。

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プロフィール
渡部絢也
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子ども向け音楽の作曲家・歌うたい
こどもの日常に、うたを。
秋田の山あいで暮らす二児の父。

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