Wavesfactory Trackspacer:マスキングを簡単解消!超有能プラグイン!
Wavesfactory Trackspacerは、ミックスの際、マスキング(周波数の重なりで音が抜けてこない問題)を、短時間・簡単操作で解消できるプラグインです。
サイドチェインに反応する32バンドイコライザーで、マスキングを自然に解消できるのは感動ものです!
実際に音源を確認しながら、効果のほどを紹介してまいります。
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Trackspacerの概要
どんな時に使う?
例えば、
- キックとベースの音の重なりを解消したい!
- エレキやピアノなどの上モノが、ボーカルを邪魔して聞こえづらい!
- リバーブが原音の邪魔をしている!
という時に、簡単に解決できます。
どうやって使う?
使う際の手順は次の通り。
- 優先度が低い側のトラックに、Trackspacerを挿す。
- 優先度が高いトラックから、サイドチェインで信号を送る。すると、Trackspacerがサイドチェイン信号を分析し、自動で32バンドEQがカット方向に働く。(つまり優先度が低い側の音量が下がる。)
- 再生しながら、TrackspacerのAMOUNT(量)を調整する。
例えばキックとベースの場合は次のようになります。
たったこれだけで、キックを邪魔しないベースができあがりです!
もしTrackspacerがなければ……
もしTrackspacerがない場合、マスキングを回避する方法としては、以下の2つの方法が考えられます。
- iZotope Neutron・Fabfilter Pro-Q3など、マスキング具合を見られるプラグインを目で見て、EQ補正を行う。
- サイドチェインコンプをかける。
①の場合は、目で見て判断してのEQ補正のため、どの帯域をどれくらい削るかは何となくの当て推量になりがち。また静的なEQ補正であれば、曲中ずっと補正されたままになります。
②の場合は、トラック全体の音が圧縮されるため、不自然になる場合があります。
Trackspacerの場合は、サイドチェインの信号から削る帯域を自動で判断してくれます。しかも、32バンドイコライザーで、調整を自動でしてくれます。また、ユーザーがするのはAMOUNTを耳で判断して調整するだけなので、何dB削るかに神経を使う必要もありません。
本当に楽!
Trackspacerの効果のほどは?
3トラックに使用した音源を確認!
楽曲の中で使うとどんな感じになるのかは、聞いたほうが早い!
というわけで、簡単な楽曲を作って歌ってみました。今回使ったのは3トラックです。
- ベース ← ドラムからのサイドチェイン
- シンセ ← ボーカルからのサイドチェイン
- ボコーダー ← ボーカルからのサイドチェイン
まず、全体のトラックをミックスしているものを確認しましょう。
Trackspacerを使っている下の音源のスッキリさに、びっくりされる方も多いのではないでしょうか。
低音域のモヤモヤがなくなり、ボーカルが際立っているのが分かりますよね。
それでは、実際にどのように使ったのか細かい所を見ていきましょう。
ベース ← キックからのサイドチェイン
下の音源の方が、若干ベースが締まって聞こえますよね。
ちなみに、サイドチェイントリガーはキック単独ではなく、ドラムバスをそのまま送っています。もちろんキック単独でサイドチェインを送ったほうが、より精密なマスキング対策ができます。今回は楽するためにパラで吐き出さないで作業しました。
こんな時に便利な機能があります。
Trackspacerには、帯域を指定してのマスキング対策ができるのです。それが、画面下部にあるLOW-CUT、HIGH-CUTです。
今回はHIGH-CUTを、スネアの芯の部分も引っかかる約700Hzほどに設定しています。こうすると、700Hz以下の部分だけにマスキング対策ができるようになるわけです。
シンセ ← ボーカルからのサイドチェイン
こちらはAMOUNTの量が6.5%と、本当にさりげない効きにしました。
しかし、よくよく聴き比べると、上の音源ではシンセがボーカルを邪魔しているのが分かると思います。
これ以上効きを強くすると、ボーカル終わりにシンセのボリュームが急に上がって聞こえる、ポンピングが起こり、不自然に聞こえました。不自然なポンピングが起こらないAMOUNTの設定が大事ですね。
ボコーダー ← ボーカルからのサイドチェイン
こちらはかなり強めにかけているので、効果が分かりやすいかと思います。
Vocoderの音は、Manipulator(Polyerse)というプラグインを使って、ステレオを広げた音に仕上げました。
Trackspacerは、MS処理ができます。グラフの右下隅にある白い丸をクリックすると、アドバンスパネルが開き、ここから細かな操作が可能です。
今回は、Midに100%ふりきりました。
MS処理におけるMidとは、ステレオ音源L・Rを、L+Rしてモノラル化したもの。
Midの信号に対してTrackspacerをかけることで、真ん中あたりのボコーダーボイスが削られ、素のボーカルが浮き出てくるような印象になりました。
改めてミックス音源を聞いてみましょう。
Trackspacerにより、マスキング対策がなされたのが実感できますよね!
物凄く簡単に、マスキング対策ができるTrackspacer。
値段はなんと、定価で59ユーロ! 日本円で7,000円前後! やっすー!
【追記】自然な処理重視なら他のプラグインも検討?
別の記事で検証したSonible Smart:Compのサイドチェインコンプと比較してみましょう。
下記は、トランペットをトリガーに、ピアノにサイドチェインコンプをかけている例です。
ピアノの音の変化に注目して聞いてみましょう。
Trackspacerは、ピアノの音が大きく削っているのが分かります。
Smart:Compは2000バンドのSpectral Ducking機能により、ピンポイントで作用します。
一方、Trackspacerは32バンドで広い帯域を削るような設定になっています。
そのためTrackspacerは、自然な処理という観点から見ると、Smart:Compに敵いません。
それでも、Trackspacerに利点があるとすれば、ゼロレイテンシー・LR処理・MS処理ができることです。(Smart:Compには、約40msのレイテンシーがあります。)あと、安い。
作編曲の過程では、レイテンシーがあると作業しづらいので、Trackspacerの方が軽く作業しやすいです。
また、BGMにナレーションを乗せるなど、極端に目出せたいトラックがある場合は、Smart:Compだと上品にかかりすぎる場合があるので、Trackspacerを使うのが適した場面もあります。
また、おおげさにダッキングして使いたいという場合は、Trackspacerの方が適しています。
●2024年3月14日追記
サイドチェインEQ・コンプとして、他におすすめするとすれば、
があります。
聴き比べについては、M-Blenderの記事で行っています。
まとめ
以上が、Wavesfactory / Trackspacer のレビューです。
Wavesfactoryは、Trackspacerの他にも、Spectreという素晴らしいマルチバンドエンハンサーもリリースしており、こちらもレビューしています。Quantumも、おもしろいエフェクトです。
ミックスに自信のない方は、Trackspacerで時短しちゃいましょう!
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