サブドミナントマイナーとは? 仕組み・見つけ方・使い方
サブドミナントマイナーは、コード進行にノンダイアトニックコードを取り入れる手法の一つで、胸をくすぐる魅惑のサウンドが特徴です。
まずは次のKey=Cのコード進行を聞いてみましょう。緑色のコードがサブドミナントマイナー(SDm)です。
サブドミナントマイナーや、関連コードのB♭7は、どのように導き出しているのでしょうか? 本記事では、サブドミナントマイナーの仕組みを解説します。
また、簡単な見つけ方・コード進行フローチャートもご用意しました。日々の作曲活動に活かして下さい。
シリーズ紹介
本記事はシリーズ記事で、コード理論中級編の四記事目です。
この記事を読むためのおさらい
コードは、3音以上の違う高さの音の重なりのことで、ローマ字と数字で示されます。
コードの繋がりをコード進行と言い、コード進行を作るには、まずキーを決める必要があります。
キーに合うコードであるダイアトニックコードは、五度圏表で簡単に見つけられます。決めたキーを中心に扇形に囲うだけです。
【印刷用】2021/1/28 五度圏表(資料付き)ダウンロード
ダイアトニックコードには、主役のトニック、主役に向かいたくなるドミナント、脇役のサブドミナントなど、コードの役割があります。
ディグリーネーム(度数表記)を覚えることで、移調した時にもコードを把握しやすくなります。
本記事内に出てくる、sus4、aug、テンションなどのコードが分からない方は、コードの応用をご覧ください。
サブドミナントマイナーとは
サブドミナントマイナーの概要
サブドミナントマイナーは、コード進行にノンダイアトニックコードを取り入れる手法の一つです。そして、マイナーキーにおける役割の一つでもあります。
順を追って説明していきましょう。
メジャーキーにおいては、五度圏表で次のようにダイアトニックコードの3つの役割を導き出せますよね。
3つの役割はそれぞれ、
- T(トニック):主役。安定感がある。
- D(ドミナント):トニック(特にⅠ)に向かいたくなる。
- SD(サブドミナント):脇役。バリエーションに欠かせない。
です。
マイナーキーの場合は、役割の名前と位置が変化します。
- Tm(トニックマイナー):主役。
- Dm(ドミナントマイナー):脇役。主役に向かう力は強くない。
- SDm(サブドミナントマイナー):脇役。バリエーションに欠かせない。
これが、本記事のテーマであるサブドミナントマイナーです。
本記事では、Key=Cのコード進行に、同主調であるKey=Cmのサブドミナントマイナーを組み込むテクニックを説明します。
五度圏表を使い視覚的に説明するため、他のキーでも応用が効きます。ぜひお試し下さい。
サブドミナントマイナーの音を聞いてみよう。
Key=Cmにおけるサブドミナントマイナーは、次の3つのコードです。
- Fm7
- Dm7(♭5)
- A♭M7
この3つのコードを組み込んだ次のコード進行で、サブドミナントマイナーを感じてみましょう。
サブドミナントマイナーには、胸がキュッとむず痒くなるような印象を感じませんか?
このように他のキーのダイアトニックコードを借りてきて使うことを、コードの借用と言います。
サブドミナントマイナーの使い方
基本の3コード:Fm7・Dm7(♭5)・A♭M7の使い方を見ていきます。
①サブドミナントと差し替える。
サブドミナントのコードを、サブドミナントマイナーに差し替えてみましょう。
自然に聞こえますね!
②サブドミナント→サブドミナントマイナーと続ける
特に、同じルートでの変化は効果絶大ですね。ただ、FM7→Dm7(♭5)なども当然あり得ますので、色々と試してみましょう。
コード進行フローチャート(SDm入り)
上記で説明したことをフローチャートで表します。
この図を使って、例としてコード進行を作ってみましょう。
矢印の順番に沿って、コード機能を選んでみます。その後、コードを選択して並べてみましょう。
ドミナントのGのバリエーションについては、ドミナント徹底攻略の記事を参考にして下さい。
サブドミナントマイナーの関連コード
ここからは、サブドミナントマイナーと同じように使えるコードを紹介していきます。
Fmの関連コード1:Fm6(Ⅳm6)
メジャーキーのダイアトニックコードでは使用しにくいm6ですが、マイナーキーでは活躍します。
Dm7(♭5)を転回するとFm6になります。
サブドミナントマイナーとしてコードに組み込んでみましょう。
Fm7とはまた違った響きですよね。
Fmの関連コード2:FmM7(ⅣmM7)
FmM7もサブドミナントマイナーとしてよく、使われるコードです。
Fm7とFmM7の違いは、七度の音です。
Fm7に含まれるE♭(ミ♭)は、Cメジャースケール(ドレミファソラシド)に含まれません。そのため、Key=Cにおいて、Fm7ではメロディーが作りにくかったり、歌いにくかったりすることがあります。
例えば、次のメロディーを一度聴いた後に、音を外せずに歌えますか?
これはこれで味がありますが、E♭(ミ♭)をE(ミ)に矯正したFmM7を使うことで、メロディーが歌いやすくなります。
音楽的にどちらが優れているということはありません。技の一つとして、覚えておきましょう。
B♭7(♭Ⅶ7)
Key=CmでドミナントマイナーであるB♭7を使うことで、「サブドミナントマイナー → B♭7 → C(及びCの代理コード)」という進行を作れます。
すごく自然に聞こえますよね。どういう仕組みなんでしょうか?
B♭7を、Key=Cmの五度圏表配置で見てみましょう。
同主調のKey=E♭では、次のようになります。
Key=E♭上では、B♭7はトニックに向かうドミナントの役割です。
さて。ここで、下記のコード進行を見て下さい。
ドミナントG7から、トニックCM7の代理コードであるAm7に向かう、偽終始です。
この流れをKey=Cmで同じように当てはめ、最後のCm7をCM7に変換してみましょう。
とても自然にCM7に着地し、Key=Cに戻ることができました。
B♭7がKey=E♭の偽終始を想起させ、C(及びCの代理コード)に戻りやすくなるという仕組みです。
【参考】様々な解釈ができるB♭7
B♭7については様々な解釈ができるため、下記、2つの解釈にも触れておきます。
- セカンダリードミナントE7の裏コードとして
- サブドミナントマイナーとして
気になる方以外は、次に説明するD♭M7まで飛ばしてOKです!
①セカンダリードミナントE7の裏コードとしてのB♭7は、次のように説明できます。
まず、Am7のセカンダリードミナントであるE7を組み込んだ次の進行をご覧ください。(セカンダリードミナントの解説はこちら。)
Bm7とE7を裏コードに変換します。(裏コードの解説はこちら。)
B♭7が、Am7に着地できる理由としては十分ですね。
②B♭7をサブドミナントマイナーとして紹介するWEBページもあります。「Fmに含まれるA♭(ラ♭)が、B♭7のm7(短七度)に含まれる」という理由からです。
しかし私的には、ドミナントマイナーであるB♭7をサブドミナントマイナーとするのは、違和感を覚えます。「コードG7は、F(ファ)が含まれるため、サブドミナントだ」と解釈するようなものですから。
上級編で解説するモーダルインターチェンジ(借用和音)として解釈すると、より自由に扱えます。
先程、B♭7がトニックC(及びCの代理コード)に戻りやすくなると説明しましたが、例えばドミナントのG7へと移行しても自然に感じます。
ダイアトニックコードの進行の中で、B♭7を色々な場所に差し込んで試してみましょう。
D♭M7(♭ⅡM7)
D♭M7の構成音は、サブドミナントマイナーのDm7(♭5)に似ています。
そのため、Dm7(♭5)と同じような使い方ができます。
ルートがD♭になり、Key=Cmから逸脱するため、不思議な雰囲気へと変化していますね。
A♭7(♭Ⅵ7)
A♭7の構成音は、サブドミナントマイナーFm7・A♭M7に似ています。
また、セカンダリードミナントD7の裏コードでもあるため、G7に進むのは自然な流れです。
セブンスコードなので、不安定な減五度音程(トライトーン)が含まれます。「はまる!」と感じる時とそうでない時があると思います。
色々と試してみましょう!
サブドミナントマイナーの簡単な把握方法
SDmと関連コードは、五度圏表で把握する。
この位置関係を、視覚的に覚えてしまいましょう。
キーが変わっても、同じように把握できる。
例えば、Key=Aにおけるサブドミナントマイナー・関連コードは、次のようになります。
例として、Key=Aのコード進行を2つほど作ってみます。
【参考】SDmと関連コードのテンション
SDmのアヴェイラブルテンション表(Key=C)
他のキーについては、下記の記事を参考にして下さい。
テンションをつけたSDmのコード進行例
アヴェイラブルテンションを付けることで、より彩り豊かなコード進行になります。
本記事冒頭のコード進行も、この表を元にテンションをつけています。
中でも、二小節目のFmM7(13)は、Fm6とFmM7の合わせ技のような、とても味わい深い音になっていますよね。
アヴェイラブルテンションを色々と組み合わせて、新しい音を導き出しましょう。
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まとめ
以上が、サブドミナントマイナーの説明となります。
お疲れさまでした!
説明したコードを使って、数曲書いてみて下さい。
たくさんの新たな発見があるはずですよ!
さて、今まではメジャーキーのコード進行を中心に解説してきました。
次の記事では、マイナーキー(短調)について、詳しく説明します。