音楽理論

サブドミナントマイナーとは? 仕組み・見つけ方・使い方

rainysongame
サムネイル画像:コード理論中級編 サブドミナントマイナー

サブドミナントマイナーは、コード進行にノンダイアトニックコードを取り入れる手法の一つで、胸をくすぐる魅惑のサウンドが特徴です。

まずは次のKey=Cのコード進行を聞いてみましょう。緑色のコードサブドミナントマイナー(SDm)です。

コード進行:FM7→FmM7(13)→Am7(9)→B♭7(9)→A7(9)→A♭M7(#11)→G7(♭13)→G7→CM7(13)

サブドミナントマイナーや、関連コードのB♭7は、どのように導き出しているのでしょうか? 本記事では、サブドミナントマイナーの仕組みを解説します。

また、簡単な見つけ方・コード進行フローチャートもご用意しました。日々の作曲活動に活かして下さい。

シリーズ紹介

本記事はシリーズ記事で、コード理論中級編の四記事目です。

この記事を読むためのおさらい

コードは、3音以上の違う高さの音の重なりのことで、ローマ字と数字で示されます。

コードの繋がりをコード進行と言い、コード進行を作るには、まずキーを決める必要があります。

キーに合うコードであるダイアトニックコードは、五度圏表で簡単に見つけられます。決めたキーを中心に扇形に囲うだけです。

五度圏表
五度圏表(タップで大きく)
五度圏表の使い方 Key=Cとした場合 Key=C#mとした場合
選んだキーを中心に扇形に囲もう。

【印刷用】2021/1/28 五度圏表(資料付き)ダウンロード

ダイアトニックコードには、主役のトニック、主役に向かいたくなるドミナント、脇役のサブドミナントなど、コードの役割があります。

ディグリーネーム(度数表記)を覚えることで、移調した時にもコードを把握しやすくなります。

ディグリーネーム対応表

本記事内に出てくる、sus4、aug、テンションなどのコードが分からない方は、コードの応用をご覧ください。

サブドミナントマイナーとは

サブドミナントマイナーの概要

サブドミナントマイナーは、コード進行にノンダイアトニックコードを取り入れる手法の一つです。そして、マイナーキーにおける役割の一つでもあります。

順を追って説明していきましょう。

メジャーキーにおいては、五度圏表で次のようにダイアトニックコードの3つの役割を導き出せますよね。

五度圏表:Key=Cのダイアトニックコードの役割

3つの役割はそれぞれ、

  1. T(トニック):主役。安定感がある。
  2. D(ドミナント):トニック(特にⅠ)に向かいたくなる。
  3. SD(サブドミナント):脇役。バリエーションに欠かせない。

です。

マイナーキーの場合は、役割の名前と位置が変化します。

五度圏表:Key=Cmのダイアトニックコードの役割
  1. Tm(トニックマイナー):主役。
  2. Dm(ドミナントマイナー):脇役。主役に向かう力は強くない。
  3. SDm(サブドミナントマイナー):脇役。バリエーションに欠かせない。

これが、本記事のテーマであるサブドミナントマイナーです。

本記事では、Key=Cのコード進行に、同主調であるKey=Cmのサブドミナントマイナーを組み込むテクニックを説明します。

五度圏表を使い視覚的に説明するため、他のキーでも応用が効きます。ぜひお試し下さい。

サブドミナントマイナーの音を聞いてみよう。

Key=Cmにおけるサブドミナントマイナーは、次の3つのコードです。

五度圏表:Key=Cmのサブドミナントマイナー
ここからは、七度の音を加えて説明していきます。
  1. Fm7
  2. Dm7(♭5)
  3. A♭M7

この3つのコードを組み込んだ次のコード進行で、サブドミナントマイナーを感じてみましょう。

コード進行:CM7→Em7(♭5)→A7→Dm7→Dm7(♭5)→C→A♭M7→B♭7→C→Csus4→C→C7→FM7→Fm7(9)→CM7
緑色のコードが、SDm(サブドミナントマイナー)。

サブドミナントマイナーには、胸がキュッとむず痒くなるような印象を感じませんか?

このように他のキーのダイアトニックコードを借りてきて使うことを、コードの借用と言います。

サブドミナントマイナーの使い方

基本の3コード:Fm7・Dm7(♭5)・A♭M7の使い方を見ていきます。

①サブドミナントと差し替える。

サブドミナントのコードを、サブドミナントマイナーに差し替えてみましょう。

コード進行:元の進行FM7→G7→CM7:差替例1Fm7→G7→CM7:差替例2A♭M7→G7→CM7

自然に聞こえますね!

②サブドミナント→サブドミナントマイナーと続ける

コード進行:例1F→Fm→C:例2Dm7→Dm7(♭5)→G7→C

特に、同じルートでの変化は効果絶大ですね。ただ、FM7→Dm7(♭5)なども当然あり得ますので、色々と試してみましょう。

参考

「①SD→SDm」が推奨され、反対の「②SDm→SD」はあまり推奨されません。それは、構成音の変化の順の都合からです。

楽譜で解説:1 FM7→Fm7→CM7 は、内声が半音下降が続く。 2 Fm7→FM7→CM7は、半音上行→全音下降と、少し不自然。

しかし、理論上は禁忌とされる「D(ドミナント)→SD」の進行がポップスでよく見られるように、「②SDm→SD」への変化も決してありえないことはないでしょう。

コード進行:CM7→Dm7(♭5)→FM7→FM7/G→CM7
不自然に感じますか?

また、コード進行の切れ目でSDmを使い、次の進行の始まりにSDを使うことはよくあります。

コード進行:C→Em7(♭5)→A7→Dm7→Dm7(♭5)→FM7→FM7/G→C

コード進行フローチャート(SDm入り)

上記で説明したことをフローチャートで表します。

コード進行フローチャート図

この図を使って、例としてコード進行を作ってみましょう。

矢印の順番に沿って、コード機能を選んでみます。その後、コードを選択して並べてみましょう。

フローチャートを利用してコード進行を作る例:Am7→Dm7→A♭M7→G7(♭13)→G7

ドミナントのGのバリエーションについては、ドミナント徹底攻略の記事を参考にして下さい。

サブドミナントマイナーの関連コード

ここからは、サブドミナントマイナーと同じように使えるコードを紹介していきます。

Fmの関連コード1:Fm6(Ⅳm6)

メジャーキーのダイアトニックコードでは使用しにくいm6ですが、マイナーキーでは活躍します。

Dm7(♭5)を転回するとFm6になります。

楽譜解説:Dm7(♭5)のレを転回するとFm6になる。

サブドミナントマイナーとしてコードに組み込んでみましょう。

コード進行:FM7→Fm6→Am7

Fm7とはまた違った響きですよね。

Fmの関連コード2:FmM7(ⅣmM7)

FmM7もサブドミナントマイナーとしてよく、使われるコードです。

Fm7とFmM7の違いは、七度の音です。

楽譜で解説:Fm7とFmM7は、構成音E♭とEという違いがある。

Fm7に含まれるE♭(ミ♭)は、Cメジャースケール(ドレミファソラシド)に含まれません。そのため、Key=Cにおいて、Fm7ではメロディーが作りにくかったり、歌いにくかったりすることがあります。

例えば、次のメロディーを一度聴いた後に、音を外せずに歌えますか?

楽譜:E♭を含んだ例

これはこれで味がありますが、E♭(ミ♭)をE(ミ)に矯正したFmM7を使うことで、メロディーが歌いやすくなります。

楽譜:Eに矯正し、歌いやすくした例

音楽的にどちらが優れているということはありません。技の一つとして、覚えておきましょう。

B♭7(♭Ⅶ7)

Key=CmでドミナントマイナーであるB♭7を使うことで、「サブドミナントマイナー → B♭7 → C(及びCの代理コード)」という進行を作れます。

コード進行:FM7→Fm7→B♭7→CM7

すごく自然に聞こえますよね。どういう仕組みなんでしょうか?

B♭7を、Key=Cmの五度圏表配置で見てみましょう。

Key=Cmのダイアトニックコードの役割:B♭7は、Dm(ドミナントマイナー)

同主調のKey=E♭では、次のようになります。

Key=E♭のダイアトニックコードの役割:B♭7は、D(ドミナント)

Key=E♭上では、B♭7はトニックに向かうドミナントの役割です。

さて。ここで、下記のコード進行を見て下さい。

コード進行:Dm7→G7→Am7を五度圏表で解説。

ドミナントG7から、トニックCM7の代理コードであるAm7に向かう、偽終始です。

この流れをKey=Cmで同じように当てはめ、最後のCm7をCM7に変換してみましょう。

コード進行:Fm7→B♭7→CM7は、B♭7からCmの偽終始の流れを、Cm7の代わりにCM7を使うことで、Key=Cに戻るテクニック

とても自然にCM7に着地し、Key=Cに戻ることができました。

B♭7がKey=E♭の偽終始を想起させ、C(及びCの代理コード)に戻りやすくなるという仕組みです。

【参考】様々な解釈ができるB♭7

B♭7については様々な解釈ができるため、下記、2つの解釈にも触れておきます。

  1. セカンダリードミナントE7の裏コードとして
  2. サブドミナントマイナーとして

気になる方以外は、次に説明するD♭M7まで飛ばしてOKです!

①セカンダリードミナントE7の裏コードとしてのB♭7は、次のように説明できます。

まず、Am7のセカンダリードミナントであるE7を組み込んだ次の進行をご覧ください。(セカンダリードミナントの解説はこちら。

Dm7→Bm7→E7→Am7

Bm7とE7を裏コードに変換します。(裏コードの解説はこちら。

Bm7の裏コードはFm7、E7の裏コードはB♭7。コード進行:Dm7→Fm7→B♭7→Am7

B♭7が、Am7に着地できる理由としては十分ですね。

B♭7をサブドミナントマイナーとして紹介するWEBページもあります。「Fmに含まれるA♭(ラ♭)が、B♭7のm7(短七度)に含まれる」という理由からです。

楽譜で解説:FmとB♭7は、構成音のA♭が確かに共通しているが……

しかし私的には、ドミナントマイナーであるB♭7をサブドミナントマイナーとするのは、違和感を覚えます。「コードG7は、F(ファ)が含まれるため、サブドミナントだ」と解釈するようなものですから。

上級編で解説するモーダルインターチェンジ(借用和音)として解釈すると、より自由に扱えます。

ベン図:モーダルインターチェンジの中に、サブドミナントマイナーやB♭7が含まれている。
サブドミナントマイナーもB♭7も、モーダルインターチェンジの一部。

先程、B♭7がトニックC(及びCの代理コード)に戻りやすくなると説明しましたが、例えばドミナントのG7へと移行しても自然に感じます。

コード進行:FM7→B♭7→G7(13)→CM7

ダイアトニックコードの進行の中で、B♭7を色々な場所に差し込んで試してみましょう。

D♭M7(♭ⅡM7)

D♭M7の構成音は、サブドミナントマイナーのDm7(♭5)に似ています。

楽譜で解説:Dm7(♭5)→D♭M7 三音は共通で、ルートのみ半音違う。

そのため、Dm7(♭5)と同じような使い方ができます。

コード進行FM7→Dm7(♭5)→B♭7→Am7:FM7→D♭M7→B♭7→Am7

ルートがD♭になり、Key=Cmから逸脱するため、不思議な雰囲気へと変化していますね。

A♭7(♭Ⅵ7)

A♭7の構成音は、サブドミナントマイナーFm7・A♭M7に似ています。

楽譜で解説:Fm7→A♭M7→A♭7:三音は共通。

また、セカンダリードミナントD7の裏コードでもあるため、G7に進むのは自然な流れです。

五度圏表で解説:D7の裏コードがA♭7:コード進行Am7→A♭7→G7→CM7

セブンスコードなので、不安定な減五度音程(トライトーン)が含まれます。「はまる!」と感じる時とそうでない時があると思います。

色々と試してみましょう!

サブドミナントマイナーの簡単な把握方法

SDmと関連コードは、五度圏表で把握する。

五度圏表でサブドミナントマイナーと関連コードを覚えよう。Key=Cの場合。

この位置関係を、視覚的に覚えてしまいましょう。

キーが変わっても、同じように把握できる。

例えば、Key=Aにおけるサブドミナントマイナー・関連コードは、次のようになります。

例として、Key=Aのコード進行を2つほど作ってみます。

コード進行:DM7→DmM7→C#m7→F#7(♭13)→F#7→Bm7(♭5,11)→E7(9,13)→Asus4→A→Aadd9→A

【参考】SDmと関連コードのテンション

SDmのアヴェイラブルテンション表(Key=C)

サブドミナントマイナーと関連コードのアヴェイラブルテンション表:Key=C

他のキーについては、下記の記事を参考にして下さい。

あわせて読みたい
アヴェイラブルテンション表:コードに自由にテンションを付ける!
アヴェイラブルテンション表:コードに自由にテンションを付ける!

テンションをつけたSDmのコード進行例

アヴェイラブルテンションを付けることで、より彩り豊かなコード進行になります。

本記事冒頭のコード進行も、この表を元にテンションをつけています。

コード進行:FM7→FmM7(13)→Am7(9)→B♭7(9)→A7(9)→A♭M7(#11)→G7(♭13)→G7→CM7(13)

中でも、二小節目のFmM7(13)は、Fm6とFmM7の合わせ技のような、とても味わい深い音になっていますよね。

アヴェイラブルテンションを色々と組み合わせて、新しい音を導き出しましょう。

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まとめ

以上が、サブドミナントマイナーの説明となります。
お疲れさまでした!

説明したコードを使って、数曲書いてみて下さい。
たくさんの新たな発見があるはずですよ!

さて、今まではメジャーキーのコード進行を中心に解説してきました。
次の記事では、マイナーキー(短調)について、詳しく説明します。

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