コードの応用:sus、dim、aug、add、テンションコード解説
本記事では、いろいろなコードの解説を行います。
- sus(サス)
- dim(ディミニッシュ)
- aug(オーギュメント)
- add(アド)
- テンション
などなど、サウンド付きで丁寧解説!
本記事を読めば、コードの記号から構成音を導き出せるようになります。
コードの使い方もバッチリです!
シリーズ構成
本記事はシリーズ記事で、コード理論中級編の一記事目です。
内容が難しいと思われた方は、前の記事をご覧ください。
この記事を読むためのおさらい
コードは、3音以上の違う高さの音の重なりのことで、ローマ字と数字で示されます。コードが表しているのは構成音だけで、音の重ね方は自由です。
コードの繋がりをコード進行と言い、コード進行を作るには、まずキーを決める必要があります。
キーに合うコードであるダイアトニックコードは、五度圏表で簡単に見つけられます。決めたキーを中心に扇形に囲うだけです。
ダイアトニックコードには、主役のトニック、主役が好きなドミナント、脇役のサブドミナントなど、コードの役割があります。
【重要】音程:コードの理解に必須!
まずコードの理解のため、音程を理解しましょう。
音程とは、二つの音の高さの間隔のことで、半音何個分かで数えます。そして、その半音の個数に応じた名前があり、「○度」と表記します。
次の表で、C(ド)とG(ソ)の音程を見てみましょう。
Cから見てGは、半音7個分上の高さで、音程は完全五度の関係にあります。オクターブ上のGだと、完全十二度と数えます。
音程を記号(数字)で表すと、「Cから見た時にGは、P5(完全五度)である。」と表現できます。
Pは、Perfectの頭文字で、完全○度を表します。Mは、Majorの頭文字で長○度。mは、minorの頭文字で短○度です。
例えば、P5=完全五度、M3=長三度、m3=短三度を表します。ただし本記事では分かりやすいように、P1(完全一度)をR(ルート)と表現します。
それでは、音程の数え方が分かったところで、コードの解説です!
三和音のコードの解説
3つの音から成り立つ三和音コードは、6種類あります。
- M:メジャー
- m:マイナー
- sus4:サスフォー
- sus2:サスツー
- aug:オーギュメント
- m(♭5):マイナーフラットファイブ
メジャーとマイナー
メジャーコードとマイナーコードの違いは、真ん中に挟まれた3度の音だけです。M3(長三度)、m3(短三度)かによって、音の明暗が変わって聞こえます。
メジャー、マイナーコードは、全てのコードの基本です。構成音を覚えましょう!
- メジャーコード:構成音が、R・M3・P5
- マイナーコード:構成音が、R・m3・P5
sus(サス)の解説
sus4(サスフォー)とsus2(サスツー)は、RとP5はそのままで、三度の音を変化させます。
音の明暗を左右する三度の音がなくなり、メジャーでもマイナーでもない、無機質・神秘的な音に変化します。
susというのは、Suspended(吊るされた)という意味の言葉から来ています。長三度・短三度を問わず、三度の音がP4やM2の音に変化することを表します。
- sus4(サスフォー):三度の音を、P4(完全四度)にする。
- sus2(サスツー) :三度の音を、M2(長二度)にする。
susの使い方① キーの主役Ⅰの音を変化させる。
イントロで使われることが多いのが、次の進行です。
sus2を、add9にして使うことも多いです。
add9は、本記事中盤で解説します。
susの使い方② ドミナントⅤの音を変化させる。
キーの主役トニックに向かいたくなるドミナントV。Key=Cで言えば、Gです。このGをGsus4にすることで、印象をおだやかにすることができます。
aug(オーギュメント)の解説
augは、メジャーコードのP5(完全五度)を、半音上げます。
ちょっと間の抜けたサウンドが特徴です。
augmentは「増加させる」という意味です。Caugを、C+と表現することもあります。
- aug(オーギュメント):P5を、#5(増五度)にする。
augの使い方① クリシェの中で使う。
クリシェとは、同じコードの構成音の中で一音だけ変化させ続けるコード進行です。
augの使い方② ドミナントを変化させる。
ドミナントの機能を持つコードをaugに変化させることができます。
m(♭5)マイナーフラットファイブの解説
m(♭5)は、マイナーコードのP5を半音下げたコードです。
不安定な音ですね。減五度の音程は、強烈に不安定です。
- ♭5(フラットファイブ):P5を半音下げ、♭5にする。
m(♭5)の使い方
m(♭5)単体で使われるより、m7を加え、もっと不安定なサウンドのm7(♭5)として使われることの方が多いです。
セカンダリードミナントやマイナーキーの記事で詳しく解説しています。
m(♭5)の別表記:dim
m(♭5)の別表記に、dim(ディミニッシュ)を使うことがあります。
Cm(♭5)=Cdim です。
しかし、Cm7(♭5)≠Cdim7なのには注意が必要です。
本記事下部dim7の項で、説明します。
コード記号のおさらい
以上が、6種類の三和音コードです。
- メジャーコード:構成音が、R・M3・P5。
- マイナーコード:構成音が、R・m3・P5。
- sus4(サスフォー):3度の音を、P4(完全四度)にする。
- sus2(サスツー) :3度の音を、M2(長二度)にする。
- aug(オーギュメント) :P5を半音上げ、#5(増五度)にする。
- ♭5(フラットファイブ):P5を半音下げ、♭5(減五度)にする。
四和音以上のコード表記
この記事で解説する四和音以上のコード表記は、下記のとおりです。
- 基本の四和音:M7、7、m7、m7(♭5)
- 6:シックス
- テンション
- add:アド
- dim7:ディミニッシュセブンス
- on・/ :オンコード・スラッシュコード
- omit:オミット
四和音以上のコードは、組み合わせが無数にあります。そのため、覚えるのが大変そうに思えるかもしれません。
しかし、コード表記の法則を覚えれば、どんなコードでも構成音を把握できるようになりますよ!
基本の四和音の表記:M7、7、m7、m7(♭5)
基本の四和音は、以上の4つ。ここで覚えるのは、2つの記号!
- M7(メジャーセブンス):M7(長七度)の音を加える。
- 7(セブンス):m7(短七度)の音を加える。
この2つの法則に則って、基本の4コードを見ていきましょう。
M7:メジャーセブンスコード
コードにM7が付いていたら、M7(長七度)の音を加えます。CM7であれば、次のようになります。
おしゃれ・大人・都会的な音にしたい場合は、積極的にM7を使いましょう。
ダイアトニックコードの中では、ⅠとⅣに使えます。(key=Cでは、CM7・FM7)
7:セブンスコード
コードに7が付いていたら、m7(短七度)を加えます。C7は次のようになります。
土臭い印象の音ですね。
C7の構成音に含まれるE(ミ)とB♭(シ♭)は、減五度の関係です。減五度の音程は不安定な音が特徴です。そのためセブンスコードは、安定したコードに向かいたくなる性質があります。
向かう先は、五度圏表の左隣のコードです。
この法則を使っているのが、セカンダリードミナントというテクニックになりますが、それはまた別の記事でご紹介します。
m7:マイナーセブンスコード
コードに7が付いていたら、m7(短七度)を加えるという原則の通り、Cm7は、Cmにm7(短七度)を加えます。
Cmに比べて、Cm7は悲しさが薄らいだような印象になり、より洗練されて聞こえます。
m7(♭5):マイナーセブンスフラットファイブ
m7(♭5)は、3つに分けて考えます。
- m :構成音が、R・m3・P5。
- 7 :m7の音を加える。
- ♭5:P5を半音下げ、♭5にする。
ものすごく不安定な音に聞こえますね。
ダイアトニックセブンスコード
どのコードにどの7を付けられるのでしょうか。ダイアトニックコードに7度の音を付けたコードを、ダイアトニックセブンスコードと言います。
五度圏表の位置関係で覚えてしまいましょう。
それでは応用編にまいります!
次のコードの構成音はどうなるでしょうか。
C7sus4の構成音は?
オシャレながらも土臭い。絶妙な音です。
使い方としては、「susの使い方②ドミナントⅤの音を変化させる。」と同じです。聴き比べてみましょう。
やはり7が付いている方が、Cに向かうパワーが高まっていますね。
CmM7の構成音は?
CmM7といきなり表記されると、ギョッとなりますよね。
でも、実は単純! CmにM7を加えるので、次のようになります。
音はかなり奇抜です。こちらもクリシェで使うことが多いです。
また、サブドミナントマイナーというテクニックや、マイナーキーの曲の中で、mM7コードが使われることがあります。
6(シックス)の解説
6は、M6(長六度)の音を加えます。
少し気だるげな音ですよね。
ちなみに、C6を転回すると、Am7になります。
だから、少しマイナー感を感じるんですね。
- 6(シックス):M6(長六度)の音を加える。
M6(メジャーシックス)の使い方
ダイアトニックコードのメジャーコード、Ⅰ・Ⅳ・Ⅴに加えて、少しアンニュイな雰囲気を醸し出すことができます。
m6(マイナーシックス)の使い方
m7(♭5)を転回させ、m6に変化させられます。
Bm7(♭5)とDm6は、構成音がまるっきり同じなんですね。
変化させられるコードは、五度圏表の位置関係で覚えましょう。
テンションの解説
テンションコードは、基本の四和音コードに、さらに音を重ねたコードです。特殊な例外を除くと、テンションは七種類あります。
- ♭9 (フラットナインス) :短9度
- 9 (ナインス) :長9度
- #9 (シャープナインス) :増9度
- 11 (イレブンス) :完全11度
- #11 (シャープイレブンス) :増11度
- ♭13(フラットサーティーンス):短13度
- 13 (サーティーンス) :長13度
CM7(13)であれば、CM7に長十三度A(ラ)の音を付け加えます。
テンションを足すと、オシャレ・寂しい・無機質な感じなど、様々なイメージを込められます。
- テンション:括弧内の度数の音を加える。
テンションコードを短縮して書くこともできます。例えば、CM7(9)=CM9、CM7(13)=CM13、G9=G7(9)とも表せます。この記事では、CM7(9)の記載方法でいきます。
テンションの重ね方は、自由!
「コードは構成音だけを示し、重ね方は問わない」という原則があるので、テンションを使う時にも、構成音は自由に並び替えできます!
CM7(13)の構成音を並び替えてみます。
印象がガラリと変わりますよね。ボイシング(コードの重ね方)は、ミュージシャンのセンスと言える部分です。
【大事!】テンションの選び方
7種類もテンションがあると、どのコードにどのテンションを付けられるのか困ります。そんな時に便利なのが、アヴェイラブルテンションです。
アヴェイラブルテンションは、コードの機能(役割)を変えることなく追加できるテンションのことです。次の表でCM7に追加できるテンションを見てみましょう。
CM7には、9度D(レ)・13度A(ラ)が付けられます。どちらも付けると、CM7(9,13)というコードになりますね。
メインメロディーとぶつかったりしない限りは、この表にのっているテンションを自由につけることが出来ます。
次のコード進行を、アヴェイラブルテンションで味付けしてみます。
他のキーのアヴェイラブルテンション表を参考にする場合は、下記のページをご覧ください。
ドミナントVに付けられるテンション
ドミナントのV7(Key=Cでは、G7)には、たくさんのテンションを付けられます。G7の行を見てみましょう。
ドミナントの役割は、不安定から安定へ向かう原動力。ですから、どんなにテンションを付けて不安定な音になっても、トニックに向かう限りは問題ありません。
ただし、注意点も。
G7(9,#9)やG7(♭13,13)のように、半音違いの同音程テンションは原則禁止です。不協和音過ぎて、成り立たなくなってしまうためです。(半音違いではないG7(♭9,#9)はOK。)
テンションを入れる時に、7度の音は必須なの?
7度の音(M7・m7)が付いた上で、テンションを加える場合は多いです。
しかし、7度の音なしにテンションを加えることも可能です。そういう時には、次に説明するaddという表記を使います。
add(アド)の解説
addは、add9・add11・add13など、数字(度数)と組み合わせて使われます。
例えば、Cadd9は、次のようになります。
- add(アド):数字(度数)の音を加える。
例えば、CM7(9)だとオシャレすぎる時、Cadd9にすれば、オシャレ感はそこそこに、かっこよくなります。
テンションを付けすぎたコードがポツンと紛れ込むと、違和感を生みます。add9はそういった時の味方です。
また、マイナーコードにadd9を使うと、とても怪しげでかっこよくなるので、ぜひ活用しましょう。
add13は、6と構成音が同じ
コードは「構成音だけを示し、重ね方は問わない」という原則があるので、違いはありません。使われることが多いのは、断然6の表記でしょう。短いですからね。
dim7(ディミニッシュセブンス)の解説
dim7は、「diminish=減る」という意味から来ているコード名です。
dimがあるときには、R以外の音(M3・P5・m7)を半音ずつ下げます。例えば、Cdim7は、C7のR以外の音を半音ずつ下げる。と考えます。
コード表記上は7と書いているのに、dimにより半音下がって、M6が含まれることに注意しましょう。(*注 楽典上では長六度ではなく、減七度と表現するのが正しいです。)
不安定な減五度音程「C・G♭」「E♭・A」と2組含まれているため、物凄く不安定な音が特徴です。
- dim(ディミニッシュ):M3、P5、m7の音を、半音ずつ下げる。
dim7の詳しい解説は、中級編6記事目で行います。ここでは基本的な使い方を先にご紹介!
dim7の使い方① 経過コードとして使う。
dim7は、ルートが全音離れているコードの橋渡しをすることができます。
これをパッシングディミニッシュと言います。
dim7の使い方② ルートを移動させないコード変化
次に紹介するのは、dim7のオグジュアリーアプローチという手法です。すぐにCM7に行くかと思いきや、一旦Cdim7に寄り道するパターンです。
- Ⅰdim7→Ⅰ6(Cdim7→C6)
- Ⅴdim7→Ⅴ7(Gdim7→G7)
などのバリエーションも試してみましょう。
dim7の使い方③(①の応用)経過先を転回コードに。
①の応用で、経過先のコードを転回コードにするパターンです。(転回コードは次の項で説明します。)
on・/ (オンコード)の解説
オンコードは、次のように表記されます。
C/Gは、最低音がGのCコード、という意味です。
- on ・ /(オンコード):一番低い音を指定する。
オンコードは、スラッシュコードや分数コードとも呼ばれますが、全て同じものです。
オンコードの使い方① 転回コードを作る。
コードD/F#の構成音は、D・F#・Aです。構成音のF#を一番低い音に持ってくることで、ベースがなだらかに上行するスムーズな進行を作ることができます。
オンコードの使い方② ドミナントに活用する。
Ⅰのコードへ進む力を持つドミナントVを、他のコードに差し替える時にもオンコードが使えます。
Key=CのドミナントであるGを差し替えてみましょう。
オシャレ感を感じるのに、きちんとCM7に向かう力も感じます。F/G・Dm7/Gを、Gをルートに表記することもできます。
G7sus4(9)より、Dm7/Gの方が直感的ですよね。特に鍵盤だと左手でGを、右手でDm7を弾くことになり、演奏しやすい表記と言えます。
ドミナントとして使うオンコードは、五度圏表の位置で覚えましょう。
オンコードの使い方③ ペダルポイントとして使う。
ペダルポイントは、コードが変わっても、同じ音を使い続けるテクニックです。
この進行のように、低音部で同じ音を使い続けることを、ベースペダルポイントと言います。
omit(オミット)の解説
omit(オミット)は、「省略する」という意味です。CM7(9,omit5)のように、数字と組み合わせて使い、度数の音を省略することを表します。
少しスッキリとした音になりましたね。
- omit(オミット):度数の音を省略する。
omitに続く数字は、1・3・5のどれかです。
omit1 | R(ルート)を省略。表記上の出番は少ない。 「ルートをベースに任せ、ギターはomit1で弾く」などで使う。 |
---|---|
omit3 | M3・m3を問わず、3度を省略。使う頻度は多い。 音の明暗がなくなり、スタイリッシュな印象になる。 |
omit5 | P5を省略。重厚感を減らしてスッキリ! 音を削りたい時の第一候補。使う頻度はかなり多い。 |
Cadd9(omit3)とCsus2の構成音は同じ。
2度を足すのか、9度を足すのか、という違いがあるように思えますが、「コードは構成音だけを示し、重ね方は問わない」という原則がありますから、コードとしては全く同じものです。
コード表記のまとめ
本記事に出てきたコード表記をまとめました。
困ったことがあったら、この表をご活用下さい。
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まとめ
コードの応用の記事は以上です。
大変長い記事だったと思います。おつかれさまでした!
一度に覚えなくても大丈夫です。
新しい曲に新しいコードを一つ使うだけでも、少しずつ上達できます! 何度もこの記事をご覧になり、少しずつ日々の活動に活かして頂ければと思います。
次の記事は、ドミナント徹底攻略です! ドミナントといえば、Key=CにおけるコードG。Gを色々と変化させますよ~!