音楽理論

セカンダリードミナントとは?見つけ方・使い方の基本応用

rainysongame
サムネイル画像:コード理論中級編 セカンダリードミナント

この記事では、ポップスやジャズほか、様々なジャンルで使われているセカンダリードミナントを解説します。

まずはどんな音なのか、次のKey=Cのコード進行を聴いてみましょう。赤字がセカンダリードミナントです。

このコード進行は、どういった仕組みで作られているのでしょうか?

本記事を読み進めることで、その答えはもちろん、セカンダリードミナントの仕組み・簡単な見つけ方・テンションなどの応用技まで理解できるはずです。

シリーズ紹介

本記事はシリーズ記事で、コード理論中級編の三記事目です。

この記事を読むためのおさらい

コードは、3音以上の違う高さの音の重なりのことで、ローマ字と数字で示されます。

コードの繋がりをコード進行と言い、コード進行を作るには、まずキーを決める必要があります。

キーに合うコードであるダイアトニックコードは、五度圏表で簡単に見つけられます。決めたキーを中心に扇形に囲うだけです。

五度圏表
五度圏表(タップで大きく)
五度圏表の使い方 Key=Cとした場合 Key=C#mとした場合
選んだキーを中心に扇形に囲もう。

【印刷用】2021/1/28 五度圏表(資料付き)ダウンロード

ダイアトニックコードには、主役のトニック、主役に向かいたくなるドミナント、脇役のサブドミナントなど、コードの役割があります。

ディグリーネーム(度数表記)を覚えることで、移調した時にもコードを把握しやすくなります。

ディグリーネーム対応表

本記事内には、sus4、aug、テンションなどのコードが出てきます。分からない方は、コードの応用の記事も参照下さい。

セカンダリードミナントの概要・見つけ方

ノンダイアトニックコードを自然に組み込める。

コードの基本であるダイアトニックコードだけで、曲を作ることは十分可能です。

でも、ダイアトニックコード以外のコード、すなわちノンダイアトニックコードも使えたら、もっと表現の幅が広がりそうですよね。

イラスト:ダイアトニックコード以外も使って、曲を作りたい……!

今回ご紹介するセカンダリードミナントも、ノンダイアトニックコードを組み込む有力な方法です。

調性感(キーの世界観)を崩さずに手軽に使え、豊かな表現ができるようになりますよ。

セカンダリードミナントの例

それでは、もう一度セカンダリードミナントの例を聴いてみましょう。

●セカンダリードドミナントの例:コード譜:C→E7→Am7→A7→Dm7→D7→G7
赤字の部分がセカンダリードミナントかつ、ノンダイアトニックコードです。

ポップスでもよく使われているので、耳馴染みがあるかもしれませんね。上の進行をダイアトニックコードだけで表現すると、次のようになります。

ダイアトニックコードだけでコード進行を作った例:C→Em7→Am7→Dm7→G7

なんとも素朴になりました。

このように、セカンダリードミナントを使うことで、ダイアトニックコードだけでは表現できない感情を表現できます。

セブンスコードの特徴を利用する。

Key=Cにおいてのドミナントコードは、G7です。そして、G7が向かいたくなる先は、コードCですよね。

セブンスコードは、五度圏表の左隣のコードに向かいたくなる特徴があるのです。

五度圏表で、強進行・ドミナントモーションを表した図

この動きをドミナントモーション強進行と言います。

セカンダリードミナントは、ドミナントモーションを利用した手法です。

セカンダリードミナントの簡単な見つけ方

五度圏表を使うと、簡単にセカンダリードミナントを見つけられます。

解決先のコードの右隣のコードをセブンスコードに変換すれば、セカンダリードミナントの出来上がりです。

例えば、コードFに対するセカンダリードミナントコードはどうなるでしょうか?

五度圏表で解説:Fの右隣にあるCをC7に変換:C7→F

導き出したC7を、実際に使ってみましょう。

コード譜:CM7→C7→FM7→G6(9)→CM7
C7の7に合わせるため、M7やテンションで響きを整えています。

C7は、Cメジャースケール外のB♭(シ♭)の音が入っているノンダイアトニックコードですが、何の違和感もありませんよね。

これがセカンダリードミナントの力です。

セカンダリードミナントは、5種類ある。

ダイアトニックコード、それぞれのセカンダリードミナントコードを導き出してみましょう。

5種類のセカンダリードミナントを解説した五度圏表の図
赤文字がセカンダリードミナント

G7は、元々ドミナントコードです。第一のドミナントコードという意味でプライマリードミナントコードと呼ぶこともあります。

Bm7(♭5)に対するF#7は、どうでしょうか?

セカンダリードミナントは、調性感を崩さないことが前提です。そのため、セカンダリードミナントコードのルートは、スケールの音を使うルールがあります。

イラスト:Key=Cの世界の住人たち:あいつはなかまじゃないような……F#は仲間はずれ
F#7のルートF#は、Cメジャースケールではない。

そのため、F#7は調性感を崩すと見なし、セカンダリードミナントとしては扱いません。(ただし「理論上は扱わない」という意味で、絶対に使えないわけではありません。)

以上から、各キーのセカンダリードミナントコードは、5種類ずつあることになります。

Key=Cにおけるセカンダリードミナントの図
五度圏表を横並びにして表示しています。

セカンダリードミナントの基本的な使い方

①対象のコードの前に差し込む

セカンダリードミナントの使い方は簡単です。対象のコードの前に差し込むだけでOK。

コード譜:CM7→Am7→G7:Am7が目標のコード

目標のコードAm7のセカンダリードミナントを探しましょう。

Amのセカンダリードミナントを解説した図:Amの右隣にあるEmをE7に変換!

セカンダリードミナントは、E7ですね。Am7の前に差し込みます。

コード譜:CM7→E7→Am7→G7:Am7の前にE7を差込!

これだけで、OK!

②ルートの同じダイアトニックコードからの変化

ルートの同じダイアトニックコードからセカンダリードミナントに変化させると、グラデーションがかかったような緩やかな印象になります。

コード譜:CM7→C7→FM7→G6(9)→CM7
CM7→C7がグラデーション
コード譜:Dm7→D7→G7
Dm7→D7がグラデーション

上記のコード進行では、セカンダリードミナント:D7と、ドミナント:G7が並んでいますよね。

ドミナントが並ぶ形となるため、Ⅱ7をダブルドミナント(ドッペルドミナント)と言います。

③展開切り替えのタイミングに使う

コード進行は4小節ごとに区切って考える場合が多いです。4小節目にセカンダリードミナントを使うことで、転換を切り替えやすくなる効果があります。

コード進行:C→Am→F→G→C→C7|F→G→Em→Am→A7| Dm→D7→G→G7
1段目がAメロ、2段目でBメロになった。と感じませんか?

AメロからBメロ、Bメロからサビという展開の変化を、リスナーに分かりやすく伝えられます。

セカンダリードミナントのトゥーファイブ

セカンダリードミナントにトゥーファイブを応用すると、さらに発展させることができます。

そもそもトゥーファイブとは

トゥーファイブは、Ⅱm7→V7→ⅠM7(Ⅱm→V→Ⅰ)というコードの動きのことです。

Key=Cにおいては、Dm7→G7→CM7です。これを五度圏表で確認するとこのような動きになります。

五度圏表でトゥーファイブを解説した図:Dm7→G7→CM7

セカンダリードミナントを理解する上では、次のように考えるともっと分かりやすくなります。

五度圏表でトゥーファイブを解説した図:Dm7→G7→CM7:分かりやすく並び替え。

トゥーファイブワンの流れは、五度圏表上ですぐ確認できるわけですね。

セカンダリードミナントのトゥーファイブの見つけ方

目的のコードをFとして、Fを一時的にⅠとみなして考えてみましょう。

五度圏表でFM7に対するトゥーファイブを解説した図:Gm7→C7→FM7

Gm7→C7→FM7というトゥーファイブ進行が作れました。

この時、Gm7のことを、ただのⅡm7(Dm7)と区別し、リレイテッドⅡm7と呼びます。

セカンダリードミナントのトゥーファイブ活用法

活用方法として、3種類ご紹介します。

  1. 前後にコードを追加する。
  2. 分割して差し込む。
  3. 分割した上で省略する。

①前後にコードを追加する。

Gm7→C7→FM7という動きを活かし、前後にコードを追加して使います。

コード譜:Am7→Gm7→C7→FM7
Am7を、CM7やDm7、FM7に差し替えるのもいい感じ!

②分割して差し込む。

セカンダリードミナントは、トゥーファイブに分割することができます。

コード譜:CM7→C7→FM7→G7:分割して差し込み:CM7→Gm7→C7→FM7→G7

③分割した上で省略する

分割した上で、セカンダリードミナントを省略すると、次のような進行になります。

コード進行:CM7→Gm7→FM7→G7

「Gm7の後にはC7。その後にはFM7」という予感が漂うため、C7を省略して、Gm7から直接FM7に進んでも自然な流れとなります。

これは定番のコード進行の一つで、Gm7(Ⅴm7)をドミナントマイナーと言います。

分割&省略は、Vm7だけでなく、他のセカンダリードミナントでも有効です。

Ⅱm7(♭5)でも構わない。

目標のコードがマイナーコードの場合、Ⅱm7ではなく、Ⅱm7(♭5)を使うことが多いです。

五度圏表でマイナーコードへのトゥーファイブを解説した図:Bm7(♭5)→E7→Am7

ダイアトニックコードのBm7(♭5)は、ここでようやく活躍します!

コード譜:CM7→Bm7(♭5)→E7→Am7

Bm7(♭5)の不安定さが、E7でオシャレに昇華されます。気持ちいい!

こうしたⅡm7(♭5)→V7→Ⅰm7の動きを、マイナートゥーファイブ(マイナートゥーファイブワン)と言います。

ちなみに、Bm7(♭5)ではなく、Bm7ならどうなるでしょうか?

Bm7はKey=Gのダイアトニックコードなので、Key=Gに感じやすくなります。使う場合は、注意が必要です。

コード進行:CM7→Bm7→E7→Am7→Am7/D→D7→G
これは完全にKey=Gですね。

ちなみに、目標のコードがメジャーコードの時にも、Ⅱm7(♭5)を使ってもOKです。

コード譜:Am7→Dm7→Gm7(♭5)→C7(9)→FM7
解決先がメジャーコードでも問題なし!

分割&省略はここでも使えます。

コード譜:Am7→Dm7→Gm7(♭5)→FM7:C7を省略!

色々な組み合わせを試してみましょう。

セカンダリードミナントのトゥーファイブまとめ

Key=Cにおけるセカンダリードミナント&トゥーファイブのまとめ図

セカンダリードミナントのテンション

セカンダリードミナントやリレイテッドⅡm7、Ⅱm7(♭5)にも、テンションを付けることができます。

アヴェイラブルテンション表

ダイアトニックコードを含めたKey=Cのアヴェイラブルテンション表がこちらです。(他のキーについては、アヴェイラブルテンション表の記事を御覧ください。)

Key=Cのアヴェイラブルテンション表

水色で表記しているのが、Cメジャースケールで使われている音なので、比較的簡単に追加することが可能な音です。

参考

Em7は、Ⅲmの時と、リレイテッドⅡm7の時で付けられるテンションに変化があります。9のF#(ファ#)の音の有無ですね。

これは、リレイテッドⅡm7の時は、Key=Gに一時的な転調していると見なしているためです。調性感が曖昧になる可能性があるので、注意して使いましょう。

テンションを追加した例

アヴェイラブルテンション表に則って、テンションを付加することで、下記のような豊かなコード進行を作ることができます。

コード譜:CM7(13)→Bm7(♭5,11)→E7(♭9,♭13)→Am7(9)→Am7(9)/G→FM7→Em7(♭5,11)→A7(♭9)→Dm7→D7(9)→G7→Gaug7

「テンションの付け方」や「Gaug7が何故使えるのか?」と疑問に思った方は、コードの応用ドミナント徹底攻略の記事を参考にして下さい。

sus4系も使える。

セカンダリードミナントの変化として、sus4系を使うことも可能です。

コード譜:CM7→Bm7(♭5)→E7→Am7
コード譜:CM7→Bm7(♭5)→E7sus4→Am7

少し薄味になって物足りないと感じる方もいるかもしれません。

これは、E7のM3(長三度):G#(ソ#)の音こそが、ノンダイアトニックコードとしての特徴だからです。

楽譜:E7→E7sus4:長三度が完全四度に変化することで、Cメジャースケール外の音であるG#(ソ#)が、なくなってしまう。

それでも、この薄い味付けが合う場合もあるでしょう。活用の可能性は十分あります。

sus4系オンコードの、Ⅱm7(♭5)/Vはどうでしょうか?

コード譜:CM7→Bm7(♭5)→Bm7(♭5)/E→Am7

こちらも活用できそうですね。

セカンダリードミナントを使う際の注意点

Ⅶ7は調性感が曖昧になりがち。

Em(Ⅲm)に対するB7(Ⅶ7)は、調性感が曖昧になりやすいです。

コード譜:C→B7→Em→G→F→G→C→G7

このような進行の場合、前半部分はKey=Gのように感じます。(あるいは、平行調のKey=Emに感じます。)コードFが出てきた瞬間、突然転調したかのような居心地の悪さを感じる人もいるでしょう。

対策を2点、紹介します。

①七度・テンションで、違和感を和らげる。

上記のコード進行の場合は、七度の音がついているコードとそうでないコードが入り混じってるのも、違和感の原因の一つです。特に、G。

G7であればKey=C、GM7であればKey=Gと決定づけられるため、七度の音はとても重要です。

M7・m7、テンションでコードの響きを揃えてみましょう。

コード譜:CM7→Baug7→Em7→G7(9,13)→FM7(#11)→G7(9,13)→CM7→G7(9,13)

違和感が和らいだと感じませんか?

②トニック感の感じるVをあえて使わない。

上記の進行がKey=Gと感じるのは、2小節目後半のGでトニック感を感じるためです。

そのため、B7の後にGをすぐ使うことを避けるのも一つの手です。

コード譜:CM7→B7→Em7→A7→Dm7→G7→CM7→G7(9,13)

メロディーとぶつかる場合は、無理に使わない。

この記事で紹介した分割・省略・テンションなどの全ては、メロディーとコードがぶつからないという前提の元で行うことができます。

例えば、次のようなメロディーの場合、

セカンダリードミナントを分割しようとしたが、うまく行かなかった例
Bm7(♭5)がメロディーとぶつかっている。

このような場合は、分割しない方がいいです。

メロディーとコードの関係を見ながら、セカンダリードミナントを使いましょう。

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まとめ

おつかれさまでした!
以上が、セカンダリードミナントの解説です。

セカンダリードミナントは、ポップスやジャズはもちろん、ジャンルを問わず色々な音楽で使われています。

次の記事では、ノンダイアトニックコードを更にコード進行に組み込むべく、サブドミナントマイナーを解説します。

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